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靴づくりの文化史 稲川實/山本芳美


日本人はいかに靴と格闘し馴染んできたか。靴からみる日本の近現代と靴づくりをひもとく。
靴だけでなく、日本中の職人技術を引き継ぐ助けになることを願います。

この本のレビュー

浅草の靴職人である稲川實さんと文化人類学者の山本芳美先生の共著。
靴職人であり、靴の歴史を研究してきた稲川さんによる日本の靴作りの背景を
文化人類学的な比較文化の目を通して振り返る。

明治の開国と同時にわらじや草履から少しずつ靴が日本にも親しまれてきたが、
一方でまだ日本人は靴を充分履きこなしていないと言う。
そして履きこなしていないのにもかかわらず、現代は使い捨ての時代になってしまったという
なんとなく、身につまされる物がある。

メディアなどから流れる日本の物作りや職人は素晴らしいという言葉をなんとなく受け取っていたが、
実際に職人の仕事を丁寧におったこの本があることで、しっかりと受け止められた。
日本人はよくイタリアの靴などに惹かれてしまうけども、イタリアよりも日本の職人さんの
仕事の方が立派なのではないかと、思うような記述もあった。

以前、雑誌の特集で浅草の靴問屋のことが載っていて、なんとなく買いに行ったことがあったが、
実は浅草というのは靴のエキスパート揃いなのだということを初めて知りました。
今はもう良い靴を大事に履くことができるある程度の年齢になってきたため、
今度改めて浅草に出向いてみようと思います。

靴職人さんは廃業したり転職したりが相次ぎ、全国でも数が少なくなっているようですが、
長い空白を経て、今、若い世代に職人を目指す人が増えてきたと言います。
一方で、その職人として生活していくかがイカに大変なことかということを身に染みているようで、
そういった若い職人が前に進もうとしている姿が最後に描かれているのが良かったです。
なんていうか希望がわいてきます。

私の元上司は靴は10万円の物を買えば、靴底を張り替えながら長くはくことができると
言っていました。もう定年間近の世代ととっくに定年した世代なのでバブル景気も経験してます。
その世代の人は入ってくる物も多かったため、大きな買い物をしやすかったこともあると思いますが、
今の若い世代にも受け継がれていくといいなぁと思います。

そういう意味では、大阪のリゲッタとかは今の時代にあった靴屋だなぁと思う。
足によくておしゃれなものをなるべく安くというこだわり故にサイズ展開が荒い。
靴に足を合わせないといけないところがありますが、消費者の欲望も充分満たしています。
靴職人のオーダー靴とはまた違いますが、一つの方向性ではあると思う。

ところでこの本を読んで私は初めて知ったのですが靴職人の仕事というのは、
昔は部落仕事とされていたのだそうです。だからこそ後継者が育たなかったのもあると。
実は関西に行った時に「部落差別をやめよう!」みたいな集会に出くわしたことがあって
びっくりしたことがあります。
駅にも「職業差別をしてはいけません」みたいなポスターが貼ってありました。
でもそんなの関東で見たことがないんですよ。
関東の特に東京は全国から人が集まって入り乱れているし、隣の人のことに関心がないからかなぁと
なんとなく想像していたのですが、その何でだろうがはっきりわかりました。

関東は関東大震災と東京大空襲で町全体が壊滅したことが原因のようです。
もう人も職業もその時にクラッシュアンドビルドされてしまったので境界がなくなったようで。
そういえば知人も東京の老舗の料理やの息子だったのですが関東大震災で焼け出されて鎌倉に移住したとゆっていました。ほんでサラリーマン生活を経て年金生活しております。

うちも両親は地方出身者で、しかも住んでいるトコはベッドタウンですから、もう最初からよそ者。
昔は田んぼだったところに家が建ったんだから、職業の境界もなにもない。
だからそういう状況で育ったので、大人になって関西に行ってびっくりしたんです。
日本にそんな問題があったということを知らなかったから。

日本の靴の歴史、靴づくりの職人のことが明治から現代までいろいろわかりました。
西洋の靴の歴史もおっていますが、その辺りはささーっと読み流してしまった。
最近じゃ私も足のサイズを正確に計って貰って靴選びをしているつもりですが、
今度はその一歩先を行ってみたいなぁと思いました。

ちょうど来月(12月)は浅草のはきだおれ市があるので行ってみようかな~と思います。

一時期、浅草も職人の空洞化を埋めるために韓国の靴職人が浅草で働いていたそうですが、
韓国も職人の仕事がなくなっていたのだなぁ。
そういえば知人が韓国に行くたびに「安くて早く靴が作れる」と自慢してましたけど、
それってどういうことだったのだろう?とも思った。べたっと貼り合わせるだけの靴かな?

日本は靴だけでなく、何もかもが物を作る人よりも間に入って流すだけの人が
お金を稼いでいるという状況がそもそも私はおかしいと思います。
今はデフレでどんどんコスト削減で間を抜いているので、そのうちにそういう人たちの
あり方が変わってくるかも知れませんね。
その前に物作り企業や職人がなくならないことを願ってやみません。
その為には消費者側も宣伝文句に押されて安かろう悪かろうに流されている場合じゃないですね。
ただ、靴は流行があるんで、その辺りが難しいと言えば難しいのかもしれません。

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