ラバウル温泉遊撃隊 山崎まゆみ


温泉ライターが温泉求めて向かったパプアニューギニア。
元兵士たちの思いを受け、かつて宇奈月温泉と名付けられた温泉を目指す。
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この本のレビュー

日本や世界の温泉を巡り文章を書き続ける温泉ライターの著者が、
パプアニューギニアのラバウルの花咲温泉に入浴したことをきっかけに、
昔のラバウルの温泉にまつわる歴史をひもといていく。

第二次世界大戦中に温泉を見つけて利用していた日本人兵士の話はたまに漏れ聞くが、
「戦時中に日本兵が発掘した温泉」と紹介するガイドブック等の紹介を見るくらいで、
特にそれに興味も持たず、読み流していた。
また、戦争に関する記事が載るような雑誌や本を手に取ることもなかったし、
そうなるとそれほどつっこんだ記事を目にする機会もあまりない。
戦争中のことを語りたくない当事者の方々の気持ちなどもあって、
あまり語られて来なかった部分だったのかもしれない。

私は"戦争を知らない子供の子供"に近く、正直、第二次世界大戦は
社会の授業で習った歴史上の事実の一つでしかなかった。
また、祖父が戦争末期に徴兵され帰らぬ人になりましたが、会ったこともない上に
祖母も祖父の話を全くしないので、家族という認識も全くなかった。
子供の時は「千鳥ヶ淵や高尾山に連れて行かれてめんどくさい。」って思ってたし。

この本は花咲温泉、宇奈月温泉と名付けられたラバウルの温泉を糸口に、
ラバウルに駐屯していた元兵士の方々と交流を深めていくことで知り得た事実を、
元兵士の方々の言葉に著者の補足が加わる形で書かれている。
旅行記であり、ドキュメンタリーでもあるような本です。

戦争を知らず、温泉というミーハーな響きで取材を始めた著者だっただけに、
同世代で、旅のスタイルも似ている私には文章一つ一つがしみ込むように理解できた。

軽はずみな発言で叱られたりもしたようですが、だからこそ作者のキャラクターを
自分に投影して読めたのだと思います。私が著者だったとしても叱られただろうなぁ。
この本を読んで戦争関連のニュースを見ても右から左に流れていくのは
人ごと感覚だったのだと改めて気がつきました。

恐らく著者に体験を語った元兵士の方々も重苦しすぎる表現はしなかったのでしょう。
抵抗感も恐怖感も堅苦しさもなく、元兵士の方の心境や状況がすっとしみ込んでいきました。

現在でも世界では戦争は無くなっていません。
お隣の韓国と北朝鮮がいつどんぱち始めるかもわかりません。
でも、もう戦争を知らない世代が大半の今の日本ではそういう感覚が麻痺している気がします。
まあ、私が気楽すぎたといえばそれまでですが・・・。

戦争について考えるきっかけにもなる良書でした。

パプアニューギニア(PNG)旅行の計画をしていてたまたま手に取った本でしたが、
もしPNGに行く機会ができたら絶対にラバウルは旅程に組み込もうと思いました。
宇奈月温泉は簡単にはいけなそうだけど、花咲温泉は旅行者でも行けます。

ラバウルがあるニューブリテン島では「観光=戦跡巡り」というのが定番パターンですが、
ただ、つれてかれて昔の大砲見せられても「ふーん」で終わってしまうと思うのです。
この本を読んでから行くと、旅先で考えることとがいろいろ変わってくると思います。

PNGって出版されている本が少ないですけど、これは旅行前に読んでおきたい一冊です。