ハバナからバスに乗ること5時間。シエンフエゴスを経由したバスは無事トリニダーにたどり着いた。
(つまり、シエンフエゴスが目的地の方も旅行代理店のツアーバスに乗れた)

バスの前に群がった客引きの中に私の名前を掲げたおばちゃんがちゃんといて、 まずはほっと一息。
この時はまだ何となくキューバ=いい加減というイメージがあったからだ。

「英語がいい?それともスペイン語?」
「ああっと・・・、英語。」
「OK。じゃあ来て」


トリニダーでお世話になったカサ
バス乗り場からワンブロックほど歩いた先にあったその家は、パステルピンクに彩られてキュートな外観。
安楽いすと大きなテレビが置かれた居間を通り、キッチンとダイニングが繋がった小さな中庭に通された。

「あなたの部屋はここよ。一泊25cucね。食事は夕食は8cuc。
  朝食は3cucよ。どうする?うちで食べる?」

「夕食は何が食べたい?鶏?豚?それとも魚?」

次々と浴びせかけられる問いかけにマシーンの様に答えていた私。
そのやりとりを聞いているのかいないのか、この家の主らしきおじいさんが静かにやってきて、
すーーーっと目の前に冷えたブドウジュースを差し出してくれた。
この家の中庭に育つ小粒のブドウを使った自家製ジュースだ。

するとこれまでひたすら質問を浴びせかけていたおばちゃんはおじいさんに向き直り、
「夕食は、今日は鶏。明日は魚よ。」などとスペイン語で伝える。
実は、この家の人たちは英語がしゃべれず、親戚が対応を手伝っていた様だ。

「あとこれが家の鍵ね。部屋の鍵と外の鍵。自由に出入りしてちょうだい。」
「あ、あと警察に届けないといけないのよ。パスポートとツーリストカードちょうだい。」
「じゃね。海に行きたいならアンコンビーチがいいわよ。バラデロみたいな美しい海よ。バスで1ドルよ」
「それとヒストリカルプレイスは家を出て向こうに数ブロック行ったところよ」

おばちゃんはマシンガンの様にひたすらしゃべって出て行ってしまった。


私の借りた部屋
後でおいおい理解して行くことなのだが、キューバのカサパティクールは完全なる民泊である。
東南アジアや日本でお世話になる宿泊を生業とした民宿業とは違って、 キューバ人のお宅の部屋を間借りする。

この家は居間の両脇に3部屋。中庭に面してキッチンとダイニング、そして私に宛われた部屋が一つ。構成としては4LDKである。
外から見るとコロニアル都市であることも手伝って、隣の家との境目が全くなく一見狭そうなのだが、思った以上に奥行きがあって結構広い。

私の部屋の入り口は外だったので「納屋を改装したのでは?」と思わないでもなかったが、 トイレとシャワーも付いていたし、ホテルに泊まると100ドル以上とられることを考えると文句はない。

ちょっと難を言えば完全なる民家なだけに、昼真っから部屋でだらだらしたりしづらいこと。
初めてお邪魔した家で自分の家の様にリラックスするなんてどだい無理な話だ。


アンティークな雰囲気の居間
キューバは昼間の日差しはきついのに、冷房の効いた施設や気楽に入れるカフェがない。
トリニダーは世界遺産に登録されただけあり、オモチャみたいにかわいい町なのだが、
規模はあまり大きくなく、町の散策だけなら半日あれば事足りてしまう。

部屋に戻ってもすることもない。かといってあまりに暑くて歩き回る気力もない。
そんな私のトリニダー一日目の午後は、じいさんたちに混じって公園の日陰でぼーっとしていた。


夜になり、心おきなく部屋でごろごろしていると、天井をカサカサカサっと駆け抜ける足音が聞こえた。

「うぉっ。ネズミでるの~?」

天井裏を駆け抜けるネズミの足音を聞くのは初めてではない。
初めてではないのだが~・・・と天井に目を向けると、張りの隙間から顔を出したコネズミとばちっと目があった。

速攻で部屋に並べていたお菓子を隠し、ちらちらと様子を伺う。
あっちもあっちで、ばちっと目が合うとさささっと隠れるくせに、すぐにまた張りの上からこんにちは。なのである。

そして、出て引っ込んで・・・と繰り返しているうちに、やりすぎた彼はつるっを足を滑らせた。

きえ~っ

声にならない心の叫び。

東南アジアでよく見るヤモリもキューバのネズミも、いること自体は気にならないが、
こうやって寝ている頭に落ちてくるのだけはコワイ。
ドキドキと早鐘を撃つ心臓を落ち着かせつつ、足で追い込んで扉の隙間から追い出した。
親ネズミとか兄弟ネズミとかでてくんなよ~!

ま、まさかホントに納屋だったんですかね?
いや、でも部屋は綺麗なんだけども・・・天井の作りの問題かな~。

これまでいろんな国を旅しましたが、天井からネズミが降ってきたのは初めてだった。
顔に落ちてこなくて良かった・・・。