ポタラ宮

チベット行きの朝、迎えの車は朝の4時半にやってきた。山へのフライトは朝早いためどうしてもこういう出発時間になってしまう。
 成都の一流ホテル錦江賓館の前までやってくると、一台のミニバスの周りにぽつぽつと人が立っていた。
 どうやら、彼らが今回の旅の仲間の様である。日本人なんているわけないのでそのままテキトウにやり過ごしていたら、添乗員のお兄ちゃんと中国語で会話してた男性の1人が、「日本人なんですか?」なんて言う。
 なんとまあ、こんな中国人むけのツアーで日本人に、しかも中国語ぺらぺらの人に会えるとは。

 この中国語ぺらぺらな人はTさんと言い、現在、中国は海南島の海口に留学中。 その連れのKさんは夏休みを利用して中国に来ており、一緒に中国内を旅行中だという。
 久しぶりの日本語の会話だっただけに、朝からしゃべりすぎだった。

パレード ラサの空港に降り立つと、ひんやりとした空気に包まれた。 そのままタラップをおり、徒歩でターミナルまで向かった。

この日はなんか偉い人がラサに来る日だったらしく、場内には派手な民族衣装で着飾ったチベタンが待機しており、民族音楽と踊りで歓迎の意を見せていた。その様子から、我々の乗っていた飛行機の上位クラスに乗っていた様である。

チベットに飛行機でやってくる人なんて、中国政府や外国の要人か、観光客がどっちかであろう。一体誰が来たんだろう?一般の観光客向けで毎日こんなダンスを披露するわけもないし。
空港職員がターミナルに行くよう促すのを無視して、みんなそのパレードに見入っていた。 欧米人などずずずいっとパレードの目の前まで歩み出て、遠慮なしにパシャパシャシャッターをきっていたし。 かく言う私も写真を撮った訳だが。

空港で現地ガイドと合流し、バスでラサまで向かった。

ところで、このチベット自治区の省都であるラサは標高3650メートルの高地にある。
飛行機で一気に高地に来ると急激な気圧の変化に身体が順応しないため、ガイド氏曰く「今日は、このままホテルに向かい夕方まで寝ててください」ということだ。高地に体が順応するまで休息をとらないと高山病になる可能性が高いと。
しかも、今日は朝が早く、全員寝不足だから余計にである。 自分は体力があるからと、勝手な判断をするととても危険なのでやめてくれと言うことだった。

高山病になるような高地に来るのが初めてだったのでよくわからないが、でも、ツアーでなかったら、Tさんがいなかったらゆってることわからないわけで、そしたら体調崩していたかもなぁ。いつもの調子で歩き回って。

宿泊するホテルは恐らく3☆くらいの規模のホテルだったが、なかなかみすぼらしく古い感じでその上妙にじめじめしていた。
しかもあてがわれた部屋はトイレの水が流れっぱなし。
この時期は世界中からラサに観光客がやってくるため、良いホテルは大手パックツアーが押さえてしまっているのだろう。
ツアー料金が安かったからこんなもんかなと納得してたのですが、Tさん達は三ツ星級の良いホテルだと言われていたらしく、がんがんに文句をいってた。ガイドに言われて困ったろうが、これも中国のツアーが揉める原因の一つなのかもね。

夕方まで休憩した後、みんなでご飯を食べに行ったのだが、ご飯の前にちらっとポタラ宮に寄り道した。
この粋な計らいには結構感動。おおおおおお。でも、想像していたのよりもちっちゃいなぁ。

中国パック旅行3つめにして、今回のガイドさんってとってもいい人に当たった。気遣いがとても出来るまじめな人で、その後もいちいちこちらの喜ぶだろうと言うことを前もってお膳立てしてくれるのである。
食堂の選択はガイドさんに一任されているようなのだが、まずは「ラサに来たんだからまずポタラ宮見たいだろうな」と、わざわざポタラ宮の目の前のレストランを選んでくれた。
この後の食事もツアー客の要望を聞きながらあちこちに連れて行ってくれたりして、いちいちみんなを気遣ってくれるのが手に取るようにわかり、「パッケージツアーも悪くないな」と思った(運による。)

ガイドさんは漢人だったが、運転手さんはチベタン。
私が日本人だとわかると、「この子は中国語が喋れないからよろしく頼む」と今度はTさんが私のお守りを頼まれてしまった・・・。すいません、迷惑かけて(日本語通じるからまし)。

ところで、チベット人が中国人を嫌いなのは本当の様で、一般のチベット人と接するときは「あたしは日本人なのよ~」ってうオーラを出している方が皆さんが親切にしてくれた。
ただし、やっぱりどこの国でもそうだがお土産屋の店員だけは手強くて、定価が書いてあるのに定価で売らない。 2倍払わないと金を受け取らない。なんなんだ一体!

お土産だけは日本人価格が設定されているので、仕方がないから同じツアーの広州人の女の子とか、Tさん使って購入して貰いました。どうも強気の中国人には高値で売りつけられないようなのである。
Tさんは中国語がしゃべれるという他に、見た目まで中国人そのもので、誰も日本人と疑わない。
そして、広州の女の子はものすごいしゃべりと迫力で押しまくるので、買い物に付き合わせるととてもお得であった。

おみやげ屋のチベット人は一瞬嫌いになったが、普通のチベット人は日本人には友好的だというのを特に実感した時があった。
夕食後、ガイドに誘われてホテルの近くのチベット茶屋に行った時のこと。
同行の中国人が呼んでもなかなか席に来ないし、来たら来たであからさまにイヤだ~っていうオーラを出しながら茶(この場合バター茶)をコップに注ぐ。
ガイド氏とTさんの会話も中国語だし、完璧に我々を中国人と思いこんでいる。
Tさんが店の子供にちょっかいを出そうとすると「ほら、こっち来なさい」ってママが連れていってしまう(笑)

ところが、同行の中国人達が部屋に帰った後、Tさんが

「僕ら日本人だよ。こんにちは。」

といった途端、お姉さんの態度が急変した。

余りの驚きに目を丸くしたが(だって、中国人と中国語でしゃべっていたし)、

「こんにちは、お元気ですか?」

満面の笑みを浮かべながら、片言の日本語で話しかけてくるし、「部屋に戻りなさい!」って奥に隠した自分の息子の手を取って「ばいばい」なんてさせている。
びっくりだ。この変わり様にとまどいましたね。店を出るときは笑顔で「さよならー」と手を振ってもらったし。

「中国ってチベットを侵略したじゃない?でも、日本人は昔、中国人を虐めたから、だからチベタンは日本人を好きなんじゃないかなぁ?」

私の勝手な想像なんですが、「あ、それあるかも!」とみんなも意外と納得していた。
どうして日本人にはあんなに友好的なのか、確たる理由はわかりません。仏教国という親しみもあるのかもしれませんし、これまでにチベットを訪れた日本人がよい振る舞いをしてきたということもあるでしょう。