初鹿部落の大猟祭
【一晩中行われる初鹿部落の大猟祭】

前に触れたが、2012年は日時の並びがよいため、宿泊施設の確保に非常に苦労した。
ツテをたどって台東から8キロほど北にある初鹿部落にある民宿に滑り込むことができたのだが、
その"ツテ"となってくれた方はプユマの人だったので、つながる先もやっぱりプユマである。
初鹿集落もプユマ族が暮らす地域であり、また同じプユマでも部落によって風習は違うようだ。
期せずして、初鹿部落の大猟祭にも潜り込むことができた。

ちなみにプユマ族は、台湾の先住民族の中でも台東周辺にしかいない民族なのだそう。
2013年の春節から運行予定の新しい特急列車がプユマ(普悠瑪)になったのは、そのあたりも関係しそうです。
(運行初期段階では台北-花蓮までしか走らない。花蓮以南は複線化してないから。)
しかし、新車両の愛称が一部の民族の名称になったのは、誰かの政治力のたまもののような気がする。
相変わらず南王部落の大猟祭には台東市長が出張ってきたし、去年はアミ族出身の美人政治家にもお会いした。

「戦時中にね、軍事工場にするために国(この時代は日本)にプユマの土地を提供したわけ。
 今は台湾軍の施設になっているけど、それを返してもらうために国会に政治家を送り込んでるの。
 プユマ族だけじゃなくて、アミ族とか周辺の民族と協力してるんだよね。」


政府から土地返却の言質まではとったらしいが、まだ完全に返却してもらうには至らないらしい。
「自分たちの声を政府に届けるために政治家を送り込む。」あまりに真っ当な台詞で、目から鱗が落ちる思いだ。

2013年の春節から走るプユマ号がプリントされたベスト。反応かわいすぎ。
プユマ号がプリントされたベスト。

初鹿部落の今年成人する若者
今年成人する若者。
2012年は3人だけ。

と、話がそれた。初鹿部落の大猟祭である。
南王部落の大猟祭は規模が大きく、政治家まで出張ってくるほどの大イベント。
開催場所もだだっぴろい卑南文化公園。駅から近くて部外者も行きやすい。
大猟祭が開催される集会所の狭さといったら南王にはお呼びではないレベルで、 小さな集落の小さなお祭りと思いこんでいた。

30日の朝、初鹿部落では山から下りた男たちを迎える儀式があると聞き、
集会所に向かったが、広場の真ん中に出したテーブルを囲んで、
10数人の若手の男女が談笑しているだけだった。
どうした物かと遠巻きに眺めていたら、おいでおいでと手招きされた。
薦められるがままにアバイや酒などごちそうになり、その流れで
「うちおいで~」ととある長老宅を訪問することになった。

「今年は雨がひどいでしょう。明日の晩をどうするか話してたの。」

達者な日本語でいろいろと説明をしてくれるのは集落の長老婦人だ。

初鹿集落の大猟祭は同じプユマ族でも中身が異なるらしい。
初鹿の場合、30日の朝、山から下りてきた男たちを迎えて歌い踊り、
31日は夕方から翌日の朝まで夜通し歌って踊り倒すのだという。
その30日の儀式がいきなり、「雨だし~」ってことでぐだぐだに中止になったことに、長老婦人は少々不満げだ。

そして、初鹿部落の成年式はさらに翌日の1月1日の午後に厳かに行われるらしい。
大猟祭と成年式がごっちゃな感じで、1日で終わってしまう他の部落とは違うそうで、

「うちの成年式はとても綺麗なの。だから絶対に見に来た方がいいからいらっしゃい!」

熱心に薦められたのはいいが、30日のぐだぐだを見ているだけに、今ひとつ心が盛り上がらない。

そして、31日。午前中から夕方まで南王部落の大猟祭に参加し、一息ついた長老と一緒に飲み会に突入した。
成人した若者をお披露目するために、男たちが青年たちを連れて各家庭を回ってくるはずである。
が、今年は別の事情が重なってそれを見ることはかなわず、飲み会は突如中止になり、初鹿へと移動した。
初鹿での別のイベントを終え、解散になったのは22時。

「雨も降ってないし、とりあえず初鹿の祭り見に行くか~。」と、訪れた初鹿部落の集会所。
遠くから聞こえる民族音楽の合間に高らかに歌う長老の声。沿道にちらほらと並ぶテキ屋。
広場の中心に集れた炎が立ち上り、それを中心に鮮やかな民族衣装をまとった人々が輪になって踊る。
外部からやってきた観光客はその様を少しでもよく見ようと、塀によじ登ってまでカメラを構えていた。

「うわ~、すごいなこれ。」

イベントの進行自体は南王のそれとさほどかわりはないのだが、夜間だけあっていっそう幻想的に感じる。
会場が広くないだけに余計に熱気がストレートに伝わってくる。
よく聞いてると音楽も南王とは違うし、踊りのステップもなんだかとても複雑だ。

「もしかしたらいらっしゃるかと思って来てみたのよ。あらあら、うれしいわねぇ。」と、
あれよという間に我々を長老用のひな壇席まで引っ張り混んだのは、昨日お会いした長老婦人である。
彼女はこの部落の民族文化保存活動の中心的存在であり、初鹿集落の婦人会のトップも務めていた経歴もある。
集落では一目置かれた存在のようで、その婦人に「私のお客様なの」と言われて拒否する者など誰もおらず、
次々と偉い人が"この馬の骨"(我々)に挨拶に現れるのだから恐縮しきりだ。

「南王は規模は大きいけど、ステップは簡単でしょう?うちは難しいからよその人が入ると乱れるの。」

聞けばこの祭りでかかっていた音楽はすべて彼女が作詞したという。
「若い人は仕事のためには中国語があればいいというけど、私たちはプユマ族なのよ。」
音だけで文字を持たないプユマ語を保存するため、ローマ字を使って少しずつ書物を残す活動もしているそうだ。

端々に南王をライバル視した発言がでるのは、昼間我々が南王の大猟祭に行ったからであろう。
プユマの風習を保存する活動に熱心なのはどちらも同じだが、やり方が違うのも気になるのかもしれない。

「初鹿は朝までずっと続きますから。ゆっくりしてらしてね。」

踊りの輪には幼稚園児クラスの子供たちもたくさんいるのだが、彼らもマジで朝まで踊るらしい。
朝からずっとイベント続き。カウントダウンに合わせて花火がうわーーっとうちあがった盛り上がったところで、
名残惜しむご婦人に見送られ、長い長い大晦日の1日を終えた。

新年快来! (* ̄∇ ̄)/゚・:*【祝】*:・゚\( ̄∇ ̄*)

2012年 台湾 プユマ族 初鹿部落大猟祭 写真館

初鹿部落の大猟祭は大晦日から元旦の朝まで一晩中続く

初鹿部落の大猟祭


初鹿集落の大猟祭は31日の夕方から元旦の朝まで一晩中歌い踊り明かす。プユマ族の中でも初鹿だけがこのような伝統を持っているそうだ。
時々、左手を高く空に掲げ、右手に人の顔を模した木製の盾を持って中心で踊る男たちが現れる。盾の裏には金属の物体が取り付けられていて、右手の手首を返すと盾に金属が当たって、カツンと音が鳴る。音楽に合わせてリズムよく盾をカツン、カツンと鳴らしながら炎の周りを回る。
この盾は相当な重いらしく、初めて持たされたのか今年の青年3人組はつらくてたまらなそうだった。相当鍛えてないとできない芸当です。

聞くところによると元々あのお面は人間の生首そのものを使っていたと言われているそうな。
かつて台湾の原住民族の中にはかつて首狩りの習慣があった部族があったが、プユマも例外ではないらしい。
「プユマはね。自分たちから他部族の首を狩ることはしなかったの。やられた時に仕返しはしたけど。」
山を越えた向こうにはブヌン族の部落がある。ブヌン族にやられたら、やり返して。そんな関係だったのだが、
今回の大猟祭の招待客にはブヌン族がいて、民族衣装を着て一緒に輪の中で踊っていた。
「仲良くなったのはブヌン族から嫁が来てからだったかしら?」あれれ?と記憶をたどる長老婦人。
婦人たちの時代にはすでに首狩りの習慣などなかったはずだが、自分たちの民族のアイデンティティに変わりない。形を変えて、こうやって子孫に伝えているのだなぁとしみじみと感じるのであった。

初鹿部落の大猟祭2初鹿部落の大猟祭3初鹿部落の大猟祭4

初鹿の男たちが狩猟で獲った獲物キョンのスープ

山羌湯  [キョンのスープ] アップ
主催者や長老たちのための特別席に案内して頂き、しかもそこで小米酒だの山羌湯[キョンのスープ]だのをごちそうになった。 キョンはもちろん山ごもりで男たちが獲ってきた獲物である。 雨で祭りの一部をあっさり中止する割に狩猟のほうはばっちりやっていた。
商業的に原住民族料理を提供するレストランはあるので、そういう店では食べられることもあるようですが、それでも現代の台湾ではこういう機会がないとなかなか口にできない料理です。貴重な経験を頂いてありがとうございました。 (キョンの写真提供元
山羌湯  [キョンのスープ]  の鍋山羌湯  [キョンのスープ]  キョンの骨のアップ山羌 キョンの写真

初鹿といえば・・・初鹿牧場

牛乳饅頭や
牛乳饅頭
初鹿には牧場があり、日本のマザー牧場みたいに観光地になっているようです。 国道から初鹿牧場へ入っていく交差点に牧場の牛乳や牛乳を使った加工品を売る雑貨屋さんがあります。 台東駅の土産物屋にもお菓子などの加工品もちらほら。

左下は牛乳饅頭。いわゆる「マントウ(具が入っていない中華まん)」の生地に牛乳が練り込んであります。 ほんのりと甘めでミルクの味わいがする素朴なおやつ。「朝食に買ったら?」と薦められて、朝お店に行ったら閉まってたというオチつきですが。地元の人は朝食にたべないようで。
牛乳プリンは写真のプレーンの他にも苺とかいろいろ種類がありました。 甘さ控えめのふつーにおいしいミルクプリンです。

写真下右は牛乳せんべい。でも牛乳せんべいっていうよりバタービスケットって感じでしょうか。 ジッパー袋に入っているので、自分土産にして毎日ポリポリ食べてました。

牛乳プリン牛乳プリン1牛乳ビスケット牛乳ビスケット

初鹿で食べられる食事

初鹿集落の食堂
初鹿の民宿は一応は食堂がついていますが、事前に頼んでおかないと食事ができないため、今回のように朝から晩まで予定が立たない状態で頼むわけにも行かず、町ですませたり、テイクアウトしたりしていました。
自助餐(セルフサービスのおかず店)のお店や朝食店、麺などの軽食を食べられるお店、コンビニなど、一通りのお店があるので困らなかった。
日本ではこの規模の町だとたぶん食事どころに困ると思う。台湾の人に食事を買う習慣があるからこそ商売が成り立つのでしょう。弁当にしてもらってテイクアウトしたり、コンビニでおでん食べたり、楽しみました。
テイクアウトした弁当朝食肉[火庚]麺/肉羹麺 肉入りとろみスープ麺台湾のセブンイレブンのおでん 関東煮

初鹿 白木屋渡假休閒民宿 定価3000元

台東縣卑南?初鹿村新班鳩30號 tel: 089-570723、0982-955538 
白木屋渡假休閒民宿の部屋
2012年はカレンダーの並びがよく、台湾人も年末に4連休となるため、ホテル、民宿が一斉に満室になり、空いてても値段が倍増したりと宿泊に困った。
結局、知人に泣きついて取ってもらったのがこの宿。台東市内から国道9号を北上した初鹿部落にあるコテージで、山の中腹にあるため眺めが大変よい。
バス通りにでるのに30分くらい歩くのだが、周囲は釈迦頭畑で、仲間とわいわいおしゃべりしながら歩くのが楽しかったです。(知人にはタクシーを呼べと言われたが一度も呼ばなかった。タクシーは100元。)
この宿に宿泊したおかげで初鹿部落の大猟祭を見学できたり、そこで新しい知り合いができたり、初鹿牧場の乳製品を飲み食いしたりと、市内に泊まるよりずっと滞在を楽しめて、はっきりいってあたり!だった。集落周辺に食事できるところももちろんあります。
白木屋渡假休閒民宿のコテージ外観白木屋渡假休閒民宿を遠くから眺めたショット白木屋渡假休閒民宿の外の景色白木屋渡假休閒民宿からバス通りまで歩く

▼ 台湾に行きたくなったら・・・物価の目安にどうぞ。

旅行時期:2012年12月~2012年1月
1NTW$=約3円


■交通:タクシー 初鹿-卑南文化公園 300NTW$、南王-初鹿牧場 350NTW$
■食事:鮮乳パン 12NTW$、牛乳プリン 35NTW$、肉羹麺 40NTW$、弁当 65NTW$
■その他:折りたたみ傘 299NTW$、カッパ39NTW$
■宿泊:初鹿 白木屋渡假休閒民宿 1000NTW$/泊(紹介価格)

■羽田-台北航空券 直行便で20,000円前後~。(参考:海外格安航空券の検索・予約 YAZIKITA)

台北便は通常チャイナエアラインが最も安く、続いてエヴァエア、日系という順で高くなります。
特に閑散期のチャイナエアの安さは目を見張る物があり、航空会社にこだわらない人は使いでがある。
ジェットスターなどの格安航空会社も出てきました。年末などの繁忙期は検討の価値もあるかも。
また、日本発が午後便だと台北での活動時間が減るので午前便より安い。
高雄便もあるけど台北に比べたら本数も少なく、おまけに台北-高雄間は新幹線で2時間。
お金と日程、旅の目的を計算して上手に選びたい。(その他:花蓮-沖縄間のチャーター便も。)
JALやチャイナエアなら比較的特典航空券をとりやすいので、貯めてる人はマイルで飛ぶのもアリ。

私はエイビーロードで金額をざっくり把握、アタリをを付け、個別の代理店に問い合わせます。


旅程を立てるために参考にした本やウェブサイト
交通部鉄路管理局花東縦谷国家風景区旅々台北台北ナビEasyTravel台東民宿網