ニューデリーのうさぎのゴミ箱
ニューデリーで見たうさぎ。
瞳孔開いてるって・・・。
「ICでチケットとってもいいですか?大至急、連絡してください」

一体、何のことだろう?この前の夏のインド旅行で知り合った友人から届いたe-mailに首を傾げつつ、慌ててインドに電話をかけた。

「あのー、○○さんいますか?」
「今ちょっと出かけてます。あなたは誰ですか?」
「あ、すいません、私は××です」
「え?あなたのチケットICで予約しても問題ないですか?ICなら今席が用意できます」
「えええ?ICでって突然言われても・・・。だいたいそのチケットは一体何処で買えばいいんですか?」


ICっていうのはインディアンエアラインのエアラインコードのことだ。
日本からインドへの直行便がないからあまりポピュラーではないが、タイやネパールなどにも国際線を飛ばしている。
しかし、予約を取るのはともかく、その後どうやって金を払って航空券を受け取ればいいのだ。

「あー・・・とにかく、大至急○○さんに連絡とって!」

実はこの1週間ほど前、私はタイからインドのチケットのOKが出ないとぼやいていた。

「年末の旅行はとりあえずタイまで行って、そこから何処に行くかはそのうち決めよう」

のんきに構えていたらインドどころかめぼしい国に行くチケットがことごとく満席になってしまった。

「インドのビザの有効期限がまだあるからさ、インドに行こうと思ったけど無理かもね。」

その気楽な台詞に気を利かせて、こちらに確認もせず航空会社に直接プッシュをかけた知人。
インドはコネと賄賂の社会なのは初めてのインド旅行でも経験済みで、こういうのは当たり前の世界だ。

「ICに知り合いがいるからね。席を取って貰うよ。予約しちゃっていい?」

しかし、この時、ICのバンコク-デリー線は火・金のみの運行。しかも早朝の便で使い勝手がよくない。
加えて、評判も今ひとつだし。出来ればタイ航空とか全日空がいいんだけど。
それに予約を取ってくれたって、航空会社で買ったら正規料金になっちゃうってば!
このころは大手航空会社の間でようやくe-ticketが普及し始めた時代で、当然ながらサービスが悪いと悪評高いインディアンエアラインにイーチケットなんて望めるわけもない。

「わかった。とりあえずなんとか自分で手配して行くから。」

チケットが取れたらインドに行こうくらいの気分だったのだが、ここまでされたらインドに行かねばならん感じ。
仕方ないのでバンコクで旅行会社に飛び込み、デリー行きのチケットを手配することにした。

よく航空券を買っているなじみの旅行代理店に飛び込み、空席状況を確認すると、
翌日のインド行きの便で残っていたのはシンガポールエアラインのみ。
それもシンガポールのチャンギ空港でのトランジットにえらい時間がかかる。
このときの私はシンガポールのチャンギ空港の快適さを知らないので、躊躇していた。

「あのー、急なことですが、今日の全日空はないですか?」

この当時、全日空は成田からバンコク経由でデリーまで飛行機を飛ばしていた。
(ちなみにその後はムンバイ便だけになり、さらにムンバイ便もなくなったり復活したりをして、さらにデリー便も近年復活した。日本企業のビジネスがインドで再び活況を呈している証拠だ。)
「帰りはありますけど、行きはエコノミーは満席ですね。」
「じゃあ、行きはビジネス、帰りはエコノミーっていう席設定は?」
「デリー線であったかなぁ・・・。」


そうつぶやくとデスクに載っているパソコンの端末をたたき出すスタッフ。
バンコク発着だとこういう変則的な格安航空券の設定があることもあるのです。

「あ、ありました!じゃあ、すぐ発券しますね」

発券してもらったチケットをもぎ取ると、大急ぎで空港に向かった。
旅行代理店を飛び出して宿に戻り、宿もチェックアウト。国際線は出発の2時間前に空港着が鉄則だ。
髪を振り乱し、汗だくでチェックインカウンターに走り込んだモノの、今日の私の行く先はエコノミーじゃなくてビジネスのカウンターだった。なんか、分不相応で恥ずかしい限りである。

「ビジネスクラスのラウンジは入り口を入って・・・」などと、普段は利用しない場所の説明をされることにとまどってしまい、係員の台詞が頭に入らない。

せっかくのラウンジも使う余裕がなくてあわてて飛行機に搭乗したら、ビジネスクラスの席はガラガラで、担当のスッチーの所作にもかなり余裕が感じられた。

「おしぼりでございます・・・」
「あ・・・。」

目があったスッチーは昨日の成田-バンコク間のエコノミークラスのフライトで担当だった人だった。
一晩バンコクで過ごし、翌日のフライトに搭乗するシフトなんてあるんだなぁと相手の顔を伺う。
向こうもこちらの顔を覚えていたのか、なんだか表情が一瞬こわばったのを見逃さなかったよ。私は。

と、こんな風にばたばたでインド行きを決めたのが今回の旅でした。
マルチビザなにももったいないなぁという貧乏人根性からの発想の旅だったが、
夏に引き続いて冬もなんて、他人から見たら単なるインドフリークなんでしょうね。

でも、帰ってきた今だからいえるけど、冬のインドは私には厳しかったな~。
せめて南インドだったら楽だった。今更だけど。