バンコクで二泊した翌朝、私はフィジーに向かっての遠回りな飛行機に乗りこんだ。

フィジーは、日本を中心にしてインドと線対称の位置にある。
つまり時差はプラス3.5時間。日本からの飛行時間は8時間ほど。
バンコクからの直行便があればいいのだが、国内に綺麗なビーチがあるタイ人がわざわざフィジーになんて行かないだろう。
だから、一度、日本の方向に戻らないといけない。

その上、日本からの直行便がなくなったので向かうのはソウル。持ってる航空券の都合でバンコク経由でソウルという 何とも非効率な行程なのである。
そして、日付が変わって26日の早朝、私を乗せた大韓航空は、ナンディ国際空港に着いた。

今回の旅行ではビジレブ島以外の島に渡りたかった。いわゆるリゾートとはかけ離れたところが見たい。

「ナンディに1泊しても意味ないしなぁ。行けるとこまで行くか」

まずは島の反対側にあるナナヌイラ島を目指すべく、空港を後にした。

タブアのバス停
【タブアのバス停】
タブアのスーパー
【日曜は休みなのだ。】
旋回するタクシー
【バス停を旋回するタクシー】
空港のすぐ外にあるバス停に立ち、数人のフィジアンと共にのんびりバスを待っていた。
とりあえずここから数キロ先にあるラウトカまで行き、そこのバスターミナルでバスを拾う予定つもりだ。

ラウトカ行きのバスはちっとも来なかったが、代わりに何台も乗り合いタクシーがやってきた。
1人、2人・・・と数人ずつ、空席の数だけの客が乗り込み、3台目くらいでようやく私も乗ることが出来た。
この辺で一番大きな町のラウトカへ行くのでさえこの調子。 やっぱり1日の移動距離は、アジアの旅の半分くらいを見積もらないとだめだ。
がちがちに予定詰め込むと帰れなくなるかもしれない。

ラウトカの町は、なんとなく閑散としていた。
それもそのはずで、着いたのはちょうど日曜日。しかも昨日はクリスマス。敬虔なクリスチャンの多いフィジアンは、仕事なんかせずに教会に行く。
だから市場も町もみんなシャッターが閉まっているのである。ひゃー、どうしよう。
思わず同じタクシーに乗っていたフィジアンのおばさんにかけより、「すっ、すいません。バス停はどっちですか?」と尋ねた。だってこれを逃したら、道を聞く人に会わなくなりそうなんだもん。

実は、フィジーの女性の風貌は慣れるまでちょっと怖い。
パパイヤ鈴木を彷彿させるアフロちっくなヘア。浅黒い肌にぎょろりとでかい目。ガタイのいいゴツイ体つき。なんか、やたらと迫力があるんですよ。
でも、日本人と違う風貌で勝手に怖いと思うのはとんだ間違いで、ほとんどの人が考えられないくらい気さくで親切。
「えええ、なんでそこまで?」と、こっちが恐縮してしまう。

このおばちゃんも例外ではなかった。

ラキラキ行きのバス停に行くと、数人のフィジアンがベンチに座ってバスを待っていた。

「この子がラキラキに行きたいらしいんだけど、次のバスは何時?」
「今、行ったばかりだから、次は2時間後の14:15だよ」

やっぱなー。空港でリコンファーム等々にだいぶ時間を食ったし。

「バスは2時までないわ。私はこれからタクシーでバに向かうけど。バからタブアまで乗り合いタクシーに乗ってタブアまで行ってから、バスに乗り換えるといいわよ。」

別に急ぐ旅でもないしここでバス待ってるほうが楽かな。その方がお金もかからないし。

「わかりました。ありがとうございます。じゃあ、私はバスを待ちますね。」

私のその台詞を聞くとおばさんは困惑した顔をした。そして、自分はバに向かうと言っていたのになぜか私の隣に座り込んでしまった。

「ええと、私はバスを待つので、どうぞバに行ってください。」

そう言っても、動こうとしない。なんでーー?

しばらくおばさんの行動が理解できずにぐるぐると考えていたのだが、ふと気がついた。
もう、気を遣わないでくださいよ~。

おばさんは一度道を聞かれた行きがかり上、私を1人でほおっておけなかった。
私は1人でこうやって旅するのは慣れていたしバスを待つのは全く苦にならなかったのだが、おばさんにはそんなことはわからない。
そのままフィジーをよく知らない外国人旅行者を置いておくのは気が引ける。とそんな所だと思う。

「やっぱり、乗り合いタクシーでバまで行きます。その後、タブアまでの行き方を教えてくださいね。」

そう言うと、おばさんは満足そうな笑顔を浮かべた。

「勿論、OKよ。さあ、タクシーはあっちだから行きましょう。」

タクシー乗り場でバ方面へ向かうタクシーを捕まえた。
ラウトカからバまでは車で30分ほど。乗り合いタクシーで2ドル(フィジー$)程度で、バスよりは高いがそれほど高額でもない。
おばさんにとっては2時間もバスを待つメリットはさほどない。

バでタクシーを降りると、今度は乗り合いタクシーの運転手とおばさんの二人がかりでタブア行きのタクシーを捕まえ私を乗せた。

「いい?この子をタブアのラキラキ行きのバス停で降ろしてちょうだい。頼んだわよ。」

そう言って、おばさんは町の中へ笑顔で消えていった。

道を親切に教えてくれたり、ちょっと案内してくれたり、といった親切を受けることは旅をしているとしょっちゅうある。
自分も日本で道を聞かれたら出来る限りの英会話を振り絞って答える。
でも、そのときは「このバスに乗って。」とか「あっちです。」とかその場で答えておしまいで、自分の用事をなげうってまで人に親切にはできない。 日本ではなんとなく忙しくしてるしなー。

私の友人も前に言ってたっけ。
すんごい急いでいるときに外国人に病院の場所を聞かれて、「あっちに○×医院があるから。」って教えてそのまま立ち去ったけど、 考えてみるとすごく具合悪そうだったし、本当は病院の前まで付いて行ってあげないとまずかったかもと。
その友人とは一緒に台湾に行ったことがあるのですが、その旅では台湾人にすごく親切にされたので、
「私は日本でここまで外国人に親切にできないなぁ。」としみじみ語っていたのです。

人の振り見て我が振り直せではありませんが、私も日本で誰かに恩返しをしようと思った出来事でした。