カンボジア国境の町で食事を終えA氏を宿まで送り届けると私はそのままタイへ逆戻り。
これから久々の一人旅が始まる。

バイクに乗って国境に向けて元来た道を戻る。橋を越えてタイに入ると舗装されていて、インフラの整い方一つでもタイとカンボジアの違いが見て取れる。
イミグレに到着し、ドライバーに約束の金を払うと行きと同じイミグレーション小屋へ。パスポートを受け取った窓口の親父は、ページをめくりカンボジアのビザを確認。出国スタンプを押す為にスタンプに手を出した瞬間、親父の眉毛がピクっと動いた。

「あんた、カンボジアに入ったの今日?」
「そうですけど、なんで?」


日本人である私はアジアの国のイミグレーションで尋問されることは滅多にない。こういうのに慣れてない上に聞かれる理由が全くわからない。

タイのイミグレ 「じゃあ、300B払って。じゃなきゃ、スタンプ押さないよ」

はぁ?!一体なんでだよ~~!

「なんで?だってちゃんとビザあるじゃん。じゃあ何のために今朝1100バーツもの大金払ったわけ?」
「これは観光ビザだ。でも、あなたはツーリストじゃない。だから300B払いなさい」

って、ツーリストじゃないってどういう意味よ。

「どこからどう見てもツーリストでしょ。だから通せ!」という私に対し、親父は「タダじゃだめ」の一点張り。
払いたくないならココンに戻って1泊してこいって、おい。一泊すればツーリストなの?

相手はお役人なので決まりは決まりと引いてくれない。 落ち着いて考えると、物品の売買の為とか、女を買うとか、観光目的じゃなくて泊まらずに帰ってくる人はいるだろう。タイ人やカンボジア人であれば。
そもそも観光客ビザってヤツは、カンボジアに滞在してお金を落として頂く為にだす許可証っていうことで、それ以上にビザ代に落としてるっちゃー落としてるけど、よくよく考えると、何の目的もなく、3000円もの大金払って日帰りする旅行者なんて怪しいってこと?

それでも懲りずに「やだ。払わない」と言い張ると、親父も負けずに「あっそ、じゃ、ココンに1泊するんだね」、パスポートを投げ返した。

くっ。ココンに泊まって朝一に国境でて・・・帰れないこともないけど、バンコク発つの明日の夜なんだよ。

「わかった。払う、払う。」

お役人にたてついても始まらないのはどこの国でも一緒。 仕方なしに300Bを差し出すと、先ほどからのけんか腰のやりとりで親父は完全に怒っていたが、なんとかスタンプをおしてくれそうだ。

「でも、ちゃんと払うからレシートくれる?」

余計なことを言った。親父の血管きれるかと思ったよ。カッを目を見開き、「レシートなんてあるかっ!」っとペンを投げ出した親父の切れ方を見る限り、どう考えても逆ギレ。わかってて悪いことしてるとき、それを指摘されると頭に来るんだよね。

「はい。レシートなんていりません」

正規のレシートが出せないっていうことは、この300Bは親父のポケットに入るってこと。
ホントに国の決まりで日帰りの観光客は通しちゃいけなくて、見つかったら親父の傷が付く。
そのリスクに金を要求しているとか、そういうことにしておきます。
だってまた町に戻っても、往復のタクシーと宿で300B以上お金使うし。
その上何かあったら、バンコクから先のチケットがパーだもん。

イミグレを突破し、数時間ぶりに無事タイに戻った。
国境の町ハートレークからトラート、トラートからバンコクへ。バスを乗り継ぎ戻った時は、夜中の12時近かった。

ちなみにカンボジアとタイの国境はここに限らず、どんどん外国人に対しても開いていくのですが、
ガイドブックには必ず「不愉快な思いをするので、できれば陸路は避けて空路で行こう。」と書いてあります。
きっと私が通ったときから変わらず、役人があらゆる理由をつけて外国人から金をせびり続けているのだと思う。
私も「日帰りじゃなくて1泊しろ」と言われたけど、1泊したところで、「短いから観光じゃない」とか言われたのでしょう。
東南アジアの旅ってあんまり嫌な思いをすることないんだけどな~。

夜中の一人歩きにご用心。(バンコク:タイ)

トラートからバンコクの東バスターミナル(エカマイ)に着いたのは、夜中の11時半頃だった。

スカイトレインに飛び乗り、国立競技場前まで。今回はその周辺で宿を探すことにしたのだが、いかんせん、この辺りに宿泊するのは初めて。マーブンクロンセンターとかサイアムスクエアとか、繁華街の目の前だけど、さすがに夜の12時を過ぎれば人も車もまばら。

「とりあえず、この筋を行けばいいのかなぁ?」

「ジムトンプソンの家(タイシルクの店)」への看板を見つけその路地に入ってみたのだが、宿どころか街灯もほとんどともっておらず、進めば進むほど暗くなってる気が・・・。
それに、そこの道に止まってる黒いランドローバー!何もしないで、じーーっと運転席に座ってる男が・・・こっち見てない?

「ヤバッ! こりゃ、道間違えた。」

さすがに怖くなり、元来た道を戻りかけた時、あろう事かランドローバーの窓がウィーーーンと開いた。そして、窓越しに「おいっ」と叫ぶ男。

あ、あたしのこと呼んでます?
「こっちに来なさい」ってなに~?

逃げても車じゃ追いつかれるし、逆ギレされても困るし、仕方なしに少しずつ車に近づいていった。
男に向かって、「あんたを怪しい人だと思ってるんだから」というオーラはだしまくりで。
でも、このままさらわれちゃったらどうしよう。

「一体、こんな時間に何をしてるんだ」

偉そうな口調でそう言い放つと男は車から降りてきた。

車から降りると、街灯の明かりがスポットライトの様に彼の姿を映し出す。
少し四角目の楕円形の輪郭に短く刈り込んだ髪。あごは丸めで一重まぶた。どうも、中華系のタイ人みたい。
服装は上下共にぱりっと糊の効いた茶色のシャツに茶色のスラックス。んっと、どっかで見たことあるような。

「ええと~。ゲストハウスに行くんです。バンコクにさっき着いたので。探してただけ。」

話しながらも少しずつ後ずさり。だって、このまま車に連れ込まれたり、バッグ奪って逃走されたりしたらやだもん。
こういうときは「命さえ助かればそれでいい」と言うものなんだろうけど、私は、自分の荷物、ハンカチ一つでも他人に取られるのはイヤ!

ジョルダーノのカップ 彼をとことん疑ってかかり、不審な目で見つめる。そんな私に彼はこう言った。

「ゲストハウス?だったら隣の道だよ。こんな時間に女の子が1人で歩いていたら危ない。送ってあげるから車に乗りなさい」

くっ、車に乗るぅ?どうして隣の路地に行くのに車に乗るんだ~。やっぱ、怪しいじゃないか。

「僕は警官だよ」っておい。アジアの人たちって警官は信用するなってよく言ってるよ~。「お巡りさん」なんていって慕っている日本が信じられないって・・・。

「いいえ、歩きます。大丈夫ですから」

「いいかい、僕は韓国人なんだよ。日本と韓国は同じアジアだ。だから君を助けてあげたいんだ」

って、あまり理由になってないと思うんですが・・・だって、タイだってアジアだもーーん。

「ノーサンキューノーサンキュー。ちょっと道を間違っちゃっただけなの」

にっこりと笑顔でお礼を言うと、更に一歩車から離れた。「本当に送っていかなくていいの?」なおも食い下がる警官君。 仮に親切だったとしてもこれから一件一件宿を当たるのに車じゃ面倒くさい。

「じゃあ、気を付けて。そこの道を戻って突き当たりを左。そして一本目の横道でまた左だよ」
「OK。コップンカー。」

彼を説き伏せ、立ち去ろうとしたその時、同じ制服を着た1人の男が、突如暗闇の向こうから現れた。
その男は素早く車の助手席に滑り込むと、韓国ポリスに向かって合図をする。

「じゃあ、僕らは行くよ。そこの道を左に曲がって、すぐ左だ!わかったね」

ランドローバーのエンジンがかかる。 スルスルと動き出した車が、私の横をすり抜けた瞬間、窓越しに、助手席の若い警官とバチッと目があった。 生粋のタイ人と見られる彼は、小麦色の肌にくりっとした目。こういう人は笑うとかわいいんだよなぁっって思ったら、にこって、きゃーーーー。くそう。送ってもらうんだった。

しかし、今考えると職務質問をされていた怪しい人物は私の方だったんだな。
あんな真夜中に、人気のない路地で、黒い帽子に大きなザックでうろうろしていたら、それこそ怪しさ100%。

・・・しょっ引かれなくてよかった。