第9話 おフランスと機械油の臭い。二つの顔を持つ街。[シエンフエゴス]
【シエンフエゴスの市庁舎】
トリニダー発シエンフエゴス経由ハバナ行きの長距離バスをシエンフエゴスで降りた。
バスを降りると私の名前が書かれた紙を握りしめたおじさんが迎えに来ていた。
実はトリニダーのカサでシエンフエゴスの宿泊先を紹介して貰っていたのである。
迎えのおじさんは同じバスに乗り合わせていた西洋人のカップルと私を確認すると、
サイクルリキシャに指示を出した。どうも西洋人カップルはリキシャに乗せてしまうようだ。
西洋人の男は「ムイ・カロ!(高すぎるよ!)」と交渉を始めたが、リキシャマン一歩も譲らず。
結局、一ペソも値下げされることはなく、渋々とリキシャに乗りこみ去っていった。
「さて、君はこっち」
バスターミナルの隅に停めていた自転車を引き出してきたおじさんに促されるままついていく。
カップルが乗ったリキシャとは全く反対方向で、同じ宿でないことになんとなくホッとした。(だってめんどくさい。)
私が宿泊する宿はバスターミナルから2ブロックほどのところにあるお宅。
2階建てのアパートの2階部分が住居の様で、バルコニー付きの鉄筋構造の住宅だった。
案内されたのは8畳はある広い部屋にスプリングがふかふかの大きなベッドがどーんとある部屋で、
部屋にはちゃんとシャワーもトイレも付いている。おまけにそのバスルームも結構広い。
それでいて宿泊料はトリニダーの宿より5ペソも安く、20CUC(US20ドルくらい)。
後で振り返ってもコストパフォーマンスの高さが最も良いのがこのシエンフエゴスの家だったと思う。
ところで、シエンフエゴスはフランス人によって造られた町で、街を走る道路は広く整然としている。
こぢんまりとしたトリニダーとは異なり街の規模も大きく、近代ビルと懐古的なビルが入り乱れている。
ホセ・マルティ公園を中心に教会、市庁舎、文化施設が集中して建っており、観光客は自然とここに足が向く。
オモチャみたいなトリニダーとは異なる趣でそれなりに見応えがあるとおもうのだが、
「特に見所がない」で終わる某日本のガイドブックはどうかと思う。取材してないだろ・・・。
裸で元気よく遊ぶ。
(今時デベソも見ない。)
シエンフエゴス湾の端まで歩くと、川を挟んで造船所、石油精製所などが
どーんと建っていて、整然として美しい中心部とはうってかわって灰色な雰囲気。
工業地帯だけあって、川の水もやっぱし汚かった。
辺りはいかにも下町の雰囲気で、車の往来もなく、子供たちが元気に遊んでいた。
綺麗にペンキで塗り替えられた内陸部に比べてだいぶ放置されている感じで、
観光客を泊められる民宿の碇マークもこの辺りの家には全くかかってなかった。
さらに湾の外にでると広い公園、野球場、サッカー場とスポーツ施設も沢山あって、
小さい子供がピンッチングマシンの前で手動でバッティング練習をしてたりして、
(ネットに囲まれているので外でバッティング練習するよりラクなのだろう。)
「おお、いかにもキューバって感じ!」
トリニダーって単なる観光地っていうだけで、町で見かけるのは老人ばっかり。
まあシエンフエゴスは空港も港もあるので町の規模が全く違うんだろうし、
トリニダーは田舎だからこそ古い町並みが残り、世界遺産になったんだろうけども、
私はキューバにスポーツ大国のイメージを持っていただけにこういう町の雰囲気が見れて嬉しかった。
ガイドブックが推奨する観光地はお仕着せの観光プランにお金を払わされる感じで、
たまにはいいけど毎日続くとおなかいっぱいというか、飽きるというか。
そして、ハバナになると今度は町の規模がでかすぎて歩いて隅々まで回れるワケもなく。
だからシエンフエゴスってちょうど良い規模の都市だなって思いました。
しかも他の都市と違ってここはフランスが造ってるので町並みも異なります。
シエンフエゴスを内陸と湾を分断するかのように走る大通りパセオ・デル・プラオは
海風を受けながら散歩するにはもってこいの雰囲気。
夕暮れ時に馬車をチャーターして走るのもロマンチックかもしれません。
おフランスな優雅な町と泥臭い工業都市という二つの仮面のギャップが面白い町です。
1泊で充分なので立ち寄って見られることをオススメします。
シエンフエゴスで泊まった家。 2階建ての2階部分。 |
宿泊した部屋。 調度品も整って快適な滞在。 | カサのバルコニーからの景色。 整然とした町の作りがわかる。 |
町の目抜き通り。 カフェや旅行代理店などが並ぶ。 | プリシマ・コンセプシオン大聖堂。 フランス風のステンドグラスが見物。 |
夕方のパセオ・デル・プラド。 車も人もだいぶ少ない。 |
シエンフエゴス湾の工業地帯。 煙突から黒い煙は日本と同じ。 | 港を行き交う大型船。 この辺りはサトウキビ産業も盛ん。 | シエンフエゴス湾付近の民家。 壁のペンキがはげて茶色い。 |
マシンを使わないのに敷地を使う。 野球小僧。日本では減ったなぁ。 | 町はずれにある野球場。 隣にサッカー場もあった。 | 馬車とサイクルリキシャが庶民の足。 夕暮れは海に日が沈んで綺麗。 |