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永遠の0 百田尚樹


現代を生きる若者が海軍の戦闘機パイロットだった祖父の足跡をたどる。
戦闘機や戦争をよく知らない世代でも涙なくして読めないエンタメ小説。

この本のレビュー

終戦から60年目の夏、26歳にしての青年がゼロ戦乗りで、最後は特攻隊としてなくなった祖父の生涯を戦友たちの証言を元にたどっていく物語。

この主人公の青年の世代であり(うそ。実際は主人公の姉の世代。)、戦争を知らず、
また学校の歴史教育では基本的に昭和はさらっと終わってしまって、
正直、戦争のことなどよくわからないで大人になった。
テレビや新聞では「反省しろ!」とか大騒ぎする某国の発言が取り上げられたり、
戦争を体験した世代が「戦争は二度としてはいけない」とおっしゃられるが、
そういうつぎはぎの記事を見ているだけでは何が起こっていたのかが見えなかった。

日本が空襲で焼けたことや長崎、広島に原爆が落ちたことくらいは知っているし、
あとは特攻隊で飛行機ごと敵陣に突っ込んでなくなった方がいたとか、
うちの祖父が硫黄島でなくなったとか。
ただ、そういう断片的な事実を知っているだけでは戦争で苦しんだ祖父、祖母の世代に
「戦争は二度としてはいけない」と言われても、その真意までは理解できなかったと思う。
今の日本は平和だから戦争というのがぴんとこないのもあるし。

NHKなどが戦争を特集したドキュメンタリーをたまに放映するが、
正直、そういったまじめで重苦しい番組を見るほどの興味がわかない。
そして、政治家の靖国参拝を巡ってやいのやいの大騒ぎするメディアにはうんざりだった。

この小説はフィクションだが、この小説を読んだことで腑に落ちたことがいろいろあった。
というのも、まず主人公が私と同じ戦争を知らず、戦争で散った祖父をもつ立場であるので、
その目線で進む物語は、すんなりと入ってくる。

また、ゼロ戦っていう戦闘機のことも名前だけは聞いたことがあったけど、
そのゼロ戦っていうのは日本にとってどのような位置づけの戦闘機だったかや、
その戦闘機乗りが参加した戦闘のエピソードが戦争を知らない世代にもわかるように
時系列に沿って丁寧に描かれるので、どういう経緯で戦争が起こったのかなど、
歴史的な背景まですんなりと理解できる。
今まで断片的かつ一方的に新聞記事などで知らされた事実、これまでに旅した記憶、
他の本で得ていた知識などがつながって行く。

「靖国参拝はけしからん!」という人の言い分とか、意味わからなかったけど、
こういう背景があるならそういう考え方も出てくるかも。と初めて理解した。

また、脇として偏った思想をもった新聞記者が出てくるのもなかなかやるなという感じ。
もう、自然と腹が立つんですね。あまりに偏見に満ちてエリートぶった人物に描かれているので。

緻密な時代考証、戦闘機の操縦や機械的な構造の知識を丁寧に描きつつ、
エンターテイメントとしての完成度も高いので、戦争を体験した世代の方から、
そうでない方まで幅広い世代に受け入れられる小説だと思う。
難しい歴史書を読むより遙かに歴史が理解できます。
そして、なにより戦争とか歴史に興味がなくても普通におもしろいです。
恋愛とか人間としての生き方、家族のあり方を考えるきっかけにもなりますよ。

ちなみにこの後、記念試合 [ 室積光 ]という小説を読みました。
こちらは九州の旧制高校の野球の対抗戦を巡って、その時代と現代が交錯しているのですが、
こちらはどちらかというと旧制高校というのはどういう存在だったかが、 小説の形で知ることができるのですけども、元陸軍軍医で戦争で生き延びたおじいさんが出てくるため、戦争についてや特攻隊についても触れられてます。

ただ、こっちの小説は終わり方がファンタジーになってしまってちょっとな~っていう感じなのと、
野球に興味がないので、最後の方はぐだぐだな印象だった。
(この作家の他の本はもっとすっきり終わったんだけど。)
ただ、あの戦争によってこの国のあり方が相当変わってしまったのだなぁというのはよくわかります。

ともあれ、「永遠の0」は2013年12月に映画が封切りされますので、 映像で見るのが楽しみです。

ガダルカナルとかラバウルはそうそう行くところではないかもしれませんが、
こういう小説を事前に読んで旅行にでるとま旅の趣が変わりそうです。
いつかフィリピンとかも行きたいですね。

--------------------------2014.01.追記---------------------------

永遠の0がV6の岡田准一氏主演で映画化されました。
「戦争賛美」とけなしている映画人などのコメントがあったりしたのでどんなかと思ったら、
戦争賛美とは違うとは思うけど、映画にするに当たり、かなり短くまとめてありました。
宮部久蔵の人となりのほうにスポットが当たっている感じです。小説の方が面白かったです。
ただ、実際の零戦がどんな物だったのかとか空戦をCGで再現してあるので、
そういうシーンを実写(というのだろうか)で見れたのは良かったとは思います。
新聞社や軍部を批難するようなシーンとか、登場人物自体が削られていて無くなってるし、
その辺は新聞社がスタッフロールに入っていることなど、いろんな裏事情が絡んでいるんだろうとは思う。
でも、こまかい設定(宮部の話し方とか)については小説を見ているから知ってるけど、
見ないで映画を見たらあの時代に上官が部下に敬語で話すのがおかしいこととか、
そういうのがわからないですよね。私みたいに知らない世代には。
というわけで、戦争賛美というのはああいう風にきれいにまとまっていることからも 来ているのかも知れないなぁと思ったりはしました。
そして、映画ではミッドウェー海戦とか真珠湾攻撃とか、歴史的背景を知らない人には
伝わらないとも思う。小説はそのあたりの細かい説明もあるから。

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