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ぼくらの祖国 青山繁晴


民間シンクタンク独立総合研究所の社長である青山氏が、今の日本の問題を
みんなで真剣に考えるよう問題提起した本。正直、泣けた。

この本のレビュー

元共同通信の記者で独立総合研究所という民間のシンクタンクを立ち上げ、
現在はエネルギー問題や国家の安全保障の専門家として活躍している著者。
たまにテレビで見かけることがあり、他の評論家といわれる方々と言うことが違うなと思うことはあったが、
それほど気にとめずにいた。
そして、何の気もなしに彼が数年前に書いた著書を手に取る機会があり、
その内容に衝撃をうけた。
わたしは社会も政治も興味がなく、テレビのニュース番組は見ない子供だったから、
戦後の日本の置かれている状況は知らなかったし、知ろうともしてなかった。
だから、世間で大騒ぎしている北方領土はロシアが不当に奪ったものと知っていたが、
南樺太が日本の領土だったことを知らなかったのだ。
いつだったか南樺太は資源が豊富に採れるので、人々が豊かになっていると 報道していたが、
あれって、日本の国土だったんですか・・・と。

少し上の年齢の方に聞くと、「そうだよ。」と当たり前のように帰ってくるが、
我々の世代ではきちんと日本の歴史を勉強した人でないと知らない人の方が多いのではないかと思う。

で、その著書を読んで以来、続けて探したのがこの「ぼくらの祖国」である。

この本を出すきっかけになったのは、若いお母さんから届いた手紙だそうだ。

「自分の子供に祖国を教えるための本がない。」

日本は戦後に占領国のあらゆる文化を輸入して、自分たちなりに料理して、
新しい文化を創って、世界を見渡すと非常に豊かな暮らしをしていると思うが、
気が付くと、自分たちの根っこを知らずにいる。

戦争については日本が仕掛けて悪かったごめんなさい。的な解釈で、
ちょっとでも祖国や先祖や古来の文化の話をすると「右翼」とか言われる。
わたしは特に20代前半は無気力で、日本のこともどうでもよいと思っていたが、
海外に出歩くようになって、日本の良さがいろいろと見えてきた。
逆に日本の問題にも目が向くようになったと思う。

そして、この本に出会い、青山さんのような人が生きていて良かったと思った。
こんなことを言う方が、言論界で生き残っていることが救いだ。

メタンハイドレードにしても日本海側では簡単に採掘できるのに、
既得権益側が太平洋側に固執しているうちに韓国が竹島近郊で動きを始めた。
そして、その韓国に資金援助をしているのはアメリカ企業だそうだ。
アメリカの言い分は「日本政府は日本海側に興味を示さない。
だったらやる気のある人に手をさしのべるのはフェアだ」という。

ニュースでは日本海側にもある可能性はあるけど、公にすると韓国と
ロシアが黙っちゃいないので、太平洋側で採掘をするのだといっていたが、
すでに日本海側ではメタンハイドレードが簡単に採掘されていて、
それでも太平洋側に固執していた理由は金をかけた方に成果が出ないのは
メンツが立たない。とただそれだけ。

結果がでないことを税金の無駄遣いだ!なんて誰も思いませんよ。
両方調査すればいいではないか。と誰もがいうと思うのだが。

独立研究所が確保したなけなしの1000万円の予算は、有名学者が執拗に反対し、
300万円に減らされたそうだ。300万円は調査船を出すための片道に費用にしかならないという。
太平洋側50億円に対し、日本海側300万円。この差は一体なんでしょう?

私も関わっていた研究プロジェクトを執拗に邪魔されてつぶされた経験があるので、
こういう日本の悪しき嫉妬社会はしらないわけではないが、
さすがにエネルギー問題になると、今の自分の名誉のために未来の可能性を
つぶすのはかなり悪質で情けなさ過ぎると思う。名指しで告発してもらいたいくらいだ。

そもそもが日本が第二次世界大戦を起こした発端は資源である。
列強に資源輸入の道をたたれて生きていけなくなったから戦争を起こした。
だったら戦後の日本はもう戦争を起こさないためにも、自前の資源を
確保するための努力をするべきではないだろうか?と著者は提言する。
そして、それが目の前にあるんだからやりましょうよ!と問題提起する。

拉致問題、原発事故、硫黄島など、いろんな現場をかけずり回って、
国内外の様々な人たちとの議論や考え方を交えながら祖国を語っています。

で、個人的に泣けたっていうのは硫黄島の章でした。

わたしは祖父が硫黄島の戦いで戦死しています。
別に職業軍人ではなく、最後の最後に赤紙が来て送られた庶民です。
でも戦争のことはよく知らないし、会ったこともない祖父ですから、
硫黄島のことは興味を持ってきませんでした。

子供の頃に毎年連れて行かれる高尾山の慰霊祭はめんどくさかったし、
なんで休みの日に毎年ここに来ないといけないの~?って感じでした。
連れてくる両親もその意味については何も語りませんでした。

いつだったか叔父が硫黄島に遺族代表の一人として行ってきました。
硫黄島から持ち帰った石ころと何かの木の枝を持ち帰り、
兄弟たちに島のことを報告したそうです。

そのとき一番下の叔父が「飲んでるときにそんな辛気くさい話をするな」といいだし、
叔父は「そんな話とはなんだ!父親のことだぞ!」と怒鳴ったといいます。
父は叔父(兄)が怒った姿を生まれて初めて見たそうです。

一番年下の叔父は生まれてまもなく祖父が戦争に行ったため、父をほぼ知りません。
だから、一番長く父親と接してきた兄とは思い入れは違うのは確かです。
一方で、やっぱり祖父を見たことがなく、戦争のことなど考えたこともないわたしも
どちらかというと一番下の叔父の感覚に近かった。
石ころしか入ってないお墓のお墓参りに意味があるとも思えなかったし、
千鳥ヶ淵や靖国神社に行く意味もわからなかった。

それがこの本を読んで、どうしてそんなことになっているのかを初めて知り、
そして、身内のことをここまで何も知らなかったことが情けなくて泣けた。

今うちの実家の庭では叔父が硫黄島から持って帰ってきた枝が根を張り、
すくすくと育ち続け、いつのまにやら木になってしまいました。
これからはこの木を見るたびに祖父を思うでしょう。

奇しくも今月末は参議院選挙です。
この本を読んだお陰で、どういう視点で政治家を選ぶか腹が据わりました。

そして、この本は辛気くさいと一蹴した叔父に読ませてやりたいと思いつつ、
それはできないので、自分の子供ができたら読ませたいです。

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