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中国人民に告ぐ! 金文学


朝鮮族として中国東北地方に生まれ現在日本で教鞭を執る著者。
日頃、中国のニュースで「なんで?」と感じた疑問が少し氷解した。

この本のレビュー

朝鮮族として中国東北地方に生まれた元朝鮮系中国人(現在は日本人)学者による
母国を批判する本。
著者の前著「韓国民に告ぐ!」はびっくりするくらい罵詈雑言の塊のような論調で、
ただただ驚いたのだが、この本はかなり落ち着いて論理的に書かれている。
今まで中国を批判したり、苦言を呈している中国人の著者による本を何冊か読んだが、
多くの本が「ここがだめ」「ここが悪い」と指摘するだけで、中国に住んだこともなく、
ましてや外国人の私にはピンとこなかったり、なんでこうなるんだろう?と不思議だった。
そういう「なぜ?」がこの本によって氷解した部分がいくつかあった。

例えば、中国の学者のモラルの低下や論文盗作などはしばしば話題に上るが、
その全てが悪い学者であるはずがないし、政府に都合の悪い研究をしている人ばかりでは ないはずなのになぁ?と思っていたこと。
この本にでてくるとある学者は実に素晴らしい学説を持っているのだけども、
だけど怖くてそれが発表できないのだそうだ。

著者のような第三者がみれば、発表すれば国内外で評価されてしかるべき内容だが、
かの文化大革命の記憶が残っているその学者にすると、
発表したら逮捕されるのでは?とおびえているそうだ。
中国の学者の中には国を飛び出して世界で活躍している人も少なくないが、
そういったしがらみを気にせずに研究に没頭できるからかもしれない。

また中国と商売をしている日本人が交渉ごとをするときにしばしばダマされたり、
ウソを付かれたりして、でもばれても悪びれる態度は見せないという話も聞く。
旅行者でもよく「ぼられた!」と憤慨することもあるし、自分が痛い目に合わないように、
ゲームのように楽しむ人もあり、なんとなく「まあそういう国だから。」で納得する。
でも無理矢理納得はしても理解はできなかったんですね。

「厚黒学」こそ中国を行き抜く知恵という章をよんで、うお、こゆことかって。
厚黒学とは「面の皮が厚く、腹黒くなければならない」という意味だそうである。
古来、中国の英雄豪傑は誰もが「厚黒」を基本に置いていたそうだ。

我々日本人は中国政府の自分のことは棚に上げた発言にびっくりさせられるが、
これは中国では兼ねてから当たり前の手法であるということらしい。
この1917年に発行された「厚黒学」の本が90年代に復刊して大ベストセラーになっているというのだから驚いた。
つまり自分が生き抜くために必要だと考える人が多いのだろう。(勿論、それだけじゃないだろうが。)

この前、中国の腐敗に嫌気がさして日本に帰化してしまった元中国人の本を読んだ時、
イマイチよくわからなかったことが多かったのだが、この本を読んでなんとなく腑に落ちた。
彼のようにマジメで潔癖な人からすると、こういうのが耐えられなかったのかも。
その本でも日本企業との交渉先の企業が好きあらば騙そうとするのを嘆いていた。
彼は「清廉潔白な共産党の時代は終わってしまったのだ」みたいにゆっていたが、
金氏によると、毛沢東もけちょんけちょんである。

多くの本が「中国のここが悪い!」と指摘するだけで終わっているのに対し、
この本はなぜそう思うかという理由が必ず指摘してあり、なるほどと思わせる。

しかし川でおぼれている人を目の前にして、救助の料金交渉をするなど、
我々だけでなく世界中の人からしてもびっくりすると思う。
中国文化を追従してきた韓国だってこれは絶対ないだろう。
これは戦前日本人が書いた記録にも残っている上、今でも変わらずあるそうだ。
だれかが「中国はかつては泥棒のいない国だった」とゆっていたのを昔読んだが、
それもどうも違うみたいだし。

この本は中国では出版禁止になったそうだが、なるだろうなと思った。

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