見栄っ張りインド人必須アイテム、GSM携帯電話
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「香港に行くなら携帯電話を買ってきて!」
最近、日本では携帯電話を持っている人は3人に1人はいるそうだが、周りを見回してみるとあまりにみんなが電話をかけているため、持っていない人の割合の間違いじゃないかと思ってしまう。
が、この便利な携帯電話、日本国内でしか使用することができない(実際には一部国外で使用できる機種も出ているが使用範囲が限られている上に高価なため手が出ない)。私のような人間は国内での行動範囲が決まっているためいっさい必要性を感じず、むしろ連絡が付かなくなる海外で使用できれば買うのになと思う。
ところが、日本、アメリカの一部を除く100カ国あまりの国では、ヨーロッパで標準化されたGSM(Global System for Mobile Communication)方式のデジタル携帯電話が使用されており、使用可能国であればどこでもその電話が使用できると言うのである。
GSM携帯電話は衛星携帯電話ではなく基地局を使用しており、日本の携帯やPHSと仕組みは似ている。その基地局に対応したチップを電話本体(通常、内蔵電池の部分)に組み込むことで電話の使用が可能となる。つまり、香港で買った携帯電話はインドでチップを買えば使えるのだ。
インドの携帯電話の通話料金は、プリペイド方式になっている。使用前に一定額分の通話料を払い、電話の使用に応じて残り通話時間(時間じゃなくて、金額かもしれない)が表示される。残金ゼロになったら使用できなくなり、また通話料を払うと復旧するシステム。
だから、チップを装着後すぐ使用可能となるが、その電話機で電話をかける場合も受ける場合も通話料が発生するので、通常の電話に比べたらホントにバカにならない。とは言ってもやはり便利なのか、1995年のサービス開始以降、多少の伸び悩みはあったものの急速な勢いで普及している。
ところで、インド在住の日本人から又聞きをしたのだが、インドでは一般回線電話の申し込みをしてから実際に通話が可能になるまで、1年くらいかかってしまうのだそうだ。
中流以上の階級の人間の増加に伴い、一般家庭への電話の設置が普及し始めていて工事が追いつかないのかもしれないが、彼によると通常の工事料金を払うと1年待ちだが、袖の下を1万ルピー(3万円弱くらい)ほど払うと1週間後には工事が完了するという。その他、袖の下の金額によって工事着手期間が短縮されていくというのだ (あながち考えられないことではないと思う)。「賄賂を払うくらいだったら、携帯電話を買っておこう」と思う人がたくさんいそうである。
携帯電話が普及した理由の一つは、このことかもしれない。
それと現在法律上でのカースト制度は無くなったものの、逆に物によるカースト制度がはびこっているという。特定の物を持つことがステータスシンボルになっている。その一つが携帯電話だ。
見栄っ張りなインド人は携帯というステータスが重要らしい。ポケベルなんかはほとんど普及しなかったとのこと。なぜなら、ポケベルは運転手など足で仕事をする人々が持たされていたからだそうだ。主人に使われる身分の低いものが使う物という意識が定着してしまったのだろう。
携帯電話を持っている人は、「俺は携帯電話を持っているぞ!!」というアピールを忘れない。
人との待ち合わせをしていて、茶店で一息。 「遅れてごめん」なんていいながら友達の向かいの席につき、なぜかわざわざ携帯をポケットからだしてテーブルの上に置いたりする。
電車の中でもこれ見よがしに携帯でがんがんしゃべる。たまたま電車で隣り合わせになったインド人青年に 「デリーでなにかあったら僕に電話して」と携帯電話の番号をもらったこともある(かけないって)。
しかし、携帯電話は受信時も通話料がかかるから、液晶表示されている番号を見て公衆電話からかけなおすひとも多く、その使われ方はポケベルとなんら変わらないらしい(それが人前だと、電話に出るんだろうな)。そして、携帯を見せびらかしはするが、あんまり自分の携帯の番号は人に教えないとか。確かに、たいして親しくもない人からくだらない電話がかかってきて、さらに通話料金を自分で払わなければならないなんてやってられない。
で、私に携帯を買ってくるように頼んだ友人は、「インドで買うより香港のほうが質がいいから買って来て欲しい」と言った。インドで買える質のいい輸入品は税金が高いというのだ。
とは言っても、香港でも最新モデルは3万円近い値段で、お土産の許容範囲を超えている。インド人商人の経営する携帯電話ショップを何件も周り(表通りにある香港人の店は最新型ばかりで高かった)、ちょっと古い型の携帯電話を「インド人の友達のために買うんだから安くしてくれーー」と粘って粘って値切り倒した。「インド人のため!」といえば、何とかしてもらえると思ったのである。
事実、当初の提示価格の2/3まで値段を下げてもらい(商売あがったりだぜという顔をして「アッチャ」とうなずいていた彼)、何とか土産を手に帰国した私。
ところが、私がそれを差し出す前に、勝手に土産袋の中身をあけた友人は一言。
「もっと小さい携帯は無かったの?」
ばかものーーー!
彼の場合、仕事の関係上携帯が必要だといった。
サービス業に従事している彼はいつでもお客さんからの電話をとれるようにと携帯を持っていたが、自分のオフィスの机の上に置きっぱなしにして、席をはずした隙に誰かに盗まれたそうで、そんなことをやらかすあたり、やっぱり見栄っ張りインド人の一人。
オフィスって言っても、ビルの一角を間借りしているので誰でも自由に行き来するし、携帯も日本のように契約をストップすれば使えなくなるのではなくて、チップ残量が無くなっても補充とか交換とかすれば誰でも使えるシステム (実際には使用前にPINコードを入力する必要があるので、解除できない素人は使えないかもしれない)なんだから、盗まれてあたりまえ。 「あんた馬鹿?」というせりふを飲みこんだ私。
でも、この間インドに行った時、その携帯電話も元気に活躍していたので、まあ許してやろう。今度テーブルの上に置きっぱなしで無くしたらもう知らんぞ。
もしかしたら最新型じゃないから恥ずかしくて見せびらかしていなかったりするかもしれない。・・・なんだかそれもむかつくなぁ。
(※これは2001.02.18 に執筆した記事です。気に入ってたので保存してます。)
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