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福建省客家土楼:高北土楼群景区 承啓楼に泊まる。

高頭の承啓楼
【高北土楼群景区 承啓楼】

洪坑土楼群景区(永定土楼民族文化村)を一通り見学し終わった時には午後3時過ぎになっていた。
日が暮れるまでにはまだ時間があるが、遠くの土楼を見に行くには中途半端な時間である。
この民族村の手前5キロの場所に高頭という村があり、その周辺の高北土楼群も有名な場所の一つ。
永定土楼民族文化村に比べると規模はだいぶ小さめで、夕方の数時間で見て回るにもちょうどよい。
とりあえず高頭に移動してみて、周辺で宿泊場所を探すことにした。

土楼村の出口を出ると付近にはツアー客用のマイクロバスでごった返していた。
永定発の高頭行きの路線バスもあるはずだが、この町にやってくる正確な時間がよくわからない。
また、バイクタクシーがわーーっと客引きに寄ってくることを期待していたのだが、それもない。
ツアー客があまりに多いので、個人客とツアー客との見分けも早々つかないのかも知れない。
この日は日も高く、気温も34度と真夏日。廈門は濃霧に包まれていたのにウソのような晴天である。
「このまま5キロあるくかなぁ。夕方までにはつくだろ。」と覚悟を決めたところで、
文化村に入る前に声をかけてきた客引きの女性に声をかけられた。ターミナル前にある宿の経営者だったようだ。

土楼に泊まらないか、バイクタクシーで田螺坑や塔下の夜景をぐるっと回らないか?といろいろ提案されたが、
そんな体力残ってないので丁重にお断りし、結局、高頭までの片道のバイクタクシーだけをお願いすることにした。

高北土楼群景区を見下ろす
高北土楼群景区。
展望台から見下ろしたところ。

高頭のバス時刻表
高頭発着のバス時刻表

承啓楼でお世話になった家の子供
泊めて貰った家の孫。
倒れそうで危なく見えるが・・・。
手配して貰ったバイクタクシーで高頭までは10分もかからなかった。
行きには気にとめなかったのだが、永定側から高頭に入ると、
村への入口にどでかい門と駐車場を備えた建物があった。
どうやらここが高北土楼群のエントランスのようだ。

永定土楼民族文化村は川と山に挟まれた地形をしていたため、
出入り口に指定された門を通らなければ中に入れなかったのに対し、
高北土楼群の場合はスルー。
高頭の町の隅に土楼がポツポツとある感じなので、地域住民のことを考えると 道路を封鎖するわけにも行かないようだ。

その代わり、町の出入り口を軽く封鎖して出入りをチェックしていた。
路線バスや地元民のバイクなどは素通りさせるが、
明らかに観光客らしき風情の人や観光バスは通さないようだ。

バイタクのおっちゃんは土楼のエントランスでチラリと振り返ったのだが、
そのまま何も言わずに土楼群のど真ん中までバイクを走らせた。
そして、高北土楼群で最も有名な土楼大王「承啓楼」の前で止まり、
「明日の観光はまかせろ!」と名刺を置いて立ち去っていった。

承啓楼は福建省の最大の土楼だそうだ。
高北村の土楼群は永定の土楼文化村ほど数は多くないのだが、
五雲楼など明代に建てられた方楼もあり文化的価値も大きい。
だから当然、入場料はしっかりと取られる。

エントランスはスルーしたけれども、そこは役人もしっかり承知していて、
承啓楼の出入り口という出入り口でチケットをチェックしていた
夕方近いこともあり、土楼の前にあるチケット売り場は閉まっているし、
「免票!(入場券)」
「だって、チケット売り場しまってるよ?」
「下の売り場までもどって買ってこい。」
と、こうである。
エントランスから承啓楼までは、坂道を延々下って行かねばなりません。

この後、承啓楼の住人で外で土産を売っていた江さんという人の家に泊まることになった。
(ちなみにここいらの土楼は江一族が建てたのでほとんどが江さんなのですが。)
江さんは「裏から出入りすれば大丈夫」と言って客引きされたのだが、
江さんと一緒に出入りする時でもうるさく注意を受け、最終的に入場券を買う羽目になった。

こんなことなら最初からエントランスを通って入場券を買っておけばよかったです。
夜になって入場券手に入れてももう他の方楼とか入れない。入場料払って宿に泊まるようなものだ。

ちなみに日が暮れかかった時に円楼のまわりを散歩している時や、早朝にトイレに行った時に、
何度も呼び止められて「免票!」とチェックされてとことんうざかった。
こういう時、日本なら「ご協力有り難うございます」のひと言くらいありますけど、ここでそんなの望むべくもなく。
「あ、君ら外国人だったのか。宿泊してるのね。了解。」という態度の人もいたけども、
「ふん。ちゃんと払ってたのかよ」ってあしらわれるとなんだか気分が悪いのだ。

当番の公安が変わるたびにあちこちで呼び止められると思うととうんざりするし、
日付が変わったらまた入場券を買えと言われかねないと思い、2泊のつもりがめんどくさくなって移動した。

ま、個人的にはそれ以前の問題もありました。
入場料も宿泊代もバイクタクシーも思っていた以上に値上がりしていて、
廈門でろくに中国元を作ってこなかったために2泊するのがちょっと厳しかったのでした。
永定で90元、高北で50元、田螺坑で100元と土楼の入場料だけで軽く3000円(/人)超えます。
調子に乗っているとどんどんお金が減っていくので要注意です。
ATMも銀行もないような田舎町なので、来る前に中国元を充分準備しておきましょう。


高北土楼群景区 写真館

承啓楼

承啓楼の中を見下ろす
福建省の土楼の中で最も大きな土楼がこちらだそうです。 直径73メートル、円周は229メートルもあるそうな。規模と美しさから土楼王とも呼ばれる。
昼間は観光客でごった返していますが、夜になるとものすごく静かです。 あまり住民がいないようで、階段を上り下りする音も滅多に聞こえません。
客家の人は教育熱心で子弟を外国留学させる人も多いと聞きますし、一族の一部だけが 土楼に残って生活しているのかもしれません。 夜も早く、朝も遅くて皆さん8時ゴロまで起き出さず、生活はのんびりした感じ。
朝、ぶらぶらと円楼内を歩いていたら楼主に声をかけられました。
見慣れない顔だったので念のため楼主としてチェックしたのでしょう。 「維生さんの部屋に泊まったの」というと「そうか、そうか」とにこやかな笑顔。「免票!」と横柄な役人とは大違い。(彼らもそれが仕事なのだが。)
大事に飾っている日本のこけしをわざわざ見せてくれたり、なかなかに穏やかで優しげな人でした。

承啓楼の正面入口から入る 承啓楼の正面入口一番奥にあるほこら 承啓楼の廊下
承啓楼の1階を見下ろす 承啓楼の1階の炊事場付近 承啓楼の1階の部屋が並ぶ 2階に上るための階段

円楼の内部構造

承啓楼の内壁
土楼は外から見るとなんだか立派な建物ですが、中から見ると年月の経過もあり、若干土壁が剥がれたような箇所もありました。外壁の円周は229メートルでしたが、壁の厚みが1メートルくらいある箇所もあります。
頭上を見上げると梁や瓦が透けて見える。外側は頑丈だけど、大砲とかで上から攻撃されたらひとたまりもないです。
また、写真を撮るのをうっかり忘れてしまいましたが、部屋の中は改装されていて、コンクリートで壁を塗り込めてありました。人の居住スペースはきちんとなおされています。

承啓楼の屋根の梁 承啓楼の屋根の裏 承啓楼の壁の穴

マートン(おまる)

マートン
中国のトイレでおなじみマートンです。円楼は元々外敵の攻撃を防ぐための要塞としても使えるように設計された建物です。夜は分厚い鉄門を閉めてしまうので、トイレには行けず、これを使います。
朝になると外にある公衆トイレに流しに来る人もいますが、泊めて貰った維生さんちはこの通りだいぶためていました。いつ、どうやって片付けるんだろう。結構重量ありますけどね~。
ちなみに泊めて貰った部屋は飲みかけのペットボトルがいくつも転がっていたりして、お世辞にも綺麗な部屋ではありませんでした。ベッドの上の布団も勿論、干しているワケもなく、シーツも家族が使ったままです。
中国のお宅拝見!という好奇心で数泊するくらいなら耐えられますが、だめな人は宿として営業している土楼に行った方がまだましなのでは?思います。(泊まってないので憶測です。)
また、田螺坑は土楼自体の歴史が浅いので、土楼内にトイレやシャワーがあるので、そちらにする手もあります。

マートンが隠れている扉 3階の廊下。内側の棚にマートンがある。
マートンが入っている棚を閉めた写真が左側。
右側の写真は承啓楼3階の廊下の写真です。暗いですけど。
右写真の向かって左が住民の個室になっており、右側の足下に棚があります。 バケツやスリッパなどの生活用品とマートン(小便入り・・・)が一緒に収納されてました。
扉を開けただけではあまり匂いは漂ってきませんが・・・。

楼主が部屋の割り振りなどをする

円楼内の電気メーター
チョークでドアの右上に部屋の主の名前が書かれている 円楼も建物の外観はそのままでも中は近代的に改装してあります。 電気も引いてあり、電気メーターに誰の部屋のメーターか名前が書いてある。 マンションみたいなものですからね。電気代は各自負担なんでしょうか?
そして、各部屋のドアにチョークで名前が書いてありました。 ちなみに全員「江」さんなので、書いてあるのは下の名前のみです。

円楼に住む人たちの食事(恐らくご馳走。)

円楼でよく出されていた野菜
土楼の人がよく食べていた野菜。
茎の根元はそぎ切りして炒める。
アスパラみたいな食感でした。
葉っぱもスープや炒めものにします。

食事も泊めて貰ったお宅で作ってもらいました。自家製野菜や漬け物が中心のメニューで、豚肉がちょっとだけ入っている物もあります。炒めものが3品くらいと、スープにご飯と盛りだくさん。朝食は豚スープのお粥と炒めものと卵でした。
しかし面白いのは、この土楼に限らず他の土楼でもみなさんご飯の時間になると山盛りのご飯に漬け物やおかずを載せた茶碗を持って、うろうろしながら立ってご飯を食べているのです。食卓について食べたりしないの。
というか、食卓自体がないといいますか。私が戴いた場所は江さんのお茶屋さんの中にあるお茶用のテーブルでしたし。
この土楼を去る時など土楼の門の近くに設置されていたベンチに江さんがいたのですが、 一人、ご飯を食べながら友達(親戚)とおしゃべりしてました。江さん以外はご飯など食べてません。文化の違いだなぁ。

ちなみに江維生さんはお茶屋も経営しているので、美味しい鉄観音も沢山飲ませてくれました。
勿論、「お土産にどう?」って薦められますけど、断ってもしつこく食い下がっては来ません。
さすがにお茶の産地だけあって、中国の他地方では高級品のウーロン茶もがばがばのんでます。

ところで、とある文化人類学者の先生の本で中国は箸ではなくさじの文化で、茶碗や丼を持ってかき込んで食べたり、椀から汁を飲み干したりしないとありましたが、客家円楼の住民の方に限ってはそれはないようです。
日本と同じように茶碗を持って、箸でかき込みながら飯を食う。お粥もお茶漬けのようにさらさらっと食べるの。
茶碗も日本のと似ていて、縁にかけて薄くなっているタイプです。炒飯たべる器とは違う。
こういう食事の仕方をするのであれば、日本のような先の尖った箸の方が食べやすいですよ。中国もいろいろ。

江さんちの晩ご飯 江さんちの朝ご飯(お粥) 江さんちの朝ご飯(おかず) 早朝に肉や野菜の店がたつ

高頭地区の今風に増築した円楼

高頭の今風に増築した円楼
高頭の今風に増築した円楼2 高頭の町の真ん中にも円楼が残っていますが、観光施設に指定されていない物は 住みやすいように改築してありました。
部屋を外側に増築したり、鉄筋コンクリートの建物と渡り廊下で繋げたり、 少しでも快適に過ごせるように工夫をしているようです。 古い家を維持するのってたいへんですもんね。


中国 福建省に行きたくなったら・・・物価の目安にどうぞ。

旅行時期:2012年3月
1元=約13円


■交通:バス 廈門-永定土楼 45元、バイクタクシー 土楼文化村-高頭 10元
■観光:洪坑土楼群景区(永定土楼民族文化村) 90元、土楼撮影料 5元、高頭土楼群 50元
■食事:梅菜扣肉 35元、客家文笋 35元、宿飯夜 25元/人 朝 15元/人
■土産:ゆず茶 80元(はかり売り)
■その他:水 (500ml) 2元、ティッシュペーパー(大) 4元
■宿泊:高頭 承啓楼の江さんち民泊 120元+食事代 ←10年前は40元くらいだったのだが。

■成田-大連航空券 直行便で50,000円前後~。

日本企業が進出しているためANAの直行便があります。ビジネス路線なので座席は取りやすい。
中国の他の都市や台湾、香港からの便も多いですが、経由するメリットはあまりないと思うので、直行便がベスト。 時間がある旅行者は台北から金門島に飛んで船で廈門入りもできる。

旅程を立てるために参考になる本やウェブサイト

客家円楼 1週間で円楼を見に行く (旅行人ウルトラガイド) [ 岡田健太郎 ]

内容は古いので円楼の入場料や宿泊代などは参考にならないが、周辺の様子や交通手段などの参考になる。 地球の歩き方D05と合わせて利用して、後は現地で確認を。世界遺産になったのでかなり政府の手が入ってます。廈門はガイドブックの情報では足りないのでネットや観光局を併用したほうがよいです。