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中国を読む「新語」 莫邦富


近年生まれた中国の新語をキーワードに今の中国を考察した本。
知日中国人ならではの視点で今の中国をわかりやすく語ったエッセイです。



この本のレビュー

経済の改革・開放政策によって大きく発展していく今の中国で、
新たな生活、新たな社会によって生まれた「新語」をキーワードに、
今の中国について鋭く解説している本。
著者は日本への在住歴が長いため、日本の様々な問題や日本人の生活環境なども熟知しており、
その上で中国人としての目線が入った語り口で、わかりやすく書かれています。

また、NHKの中国語講座のテキストに連載されていた物の書籍化なので、
キーワードとなるひとつの言葉を4ページほどでまとめてあるため、
興味のある言葉を拾い読みしたり、ちょっとした空き時間に読むのも便利です。

中国語を勉強している人であれば、新しい単語をどんどん憶える材料になると思いますが、
私は中国語で知っている単語が少ないため、言葉よりもエピソードの方が印象に残った。

インパクトがあるのは残留農薬が尋常ではない野菜を呼ぶ「毒菜」という言葉や、
春雨を指す「フェンスー」が特定のスターのファンであるという意味を持つ若者言葉など。
一般人に身近な言葉はより記憶に残っていますが。

不動産投資で、実際には住むひとのいないゴーストタウンが生まれていることや
豊かになって海外旅行熱が沸騰している中国人の姿を現すことなどは、
日本のニュースでもしばしば伝えられるので、面白く読めると思う。

ところで、この間、私は中国に言った時、周りの人たちがレストランの店員を
「服務員!(フーエン)」と呼んでいるのに違和感を感じていました。

私が一番最初に中国に行った時は、周りの人たちは店員のお姉さんを
「小姐(シャオチェ)」と呼んでいて、私もそう呼べば通じると教わったからです。

ある時、レストランでお姉さんにこそりと「お姉さん、ビール」ってゆったら通じたっていう話をしたら、
「でも小姐って呼ぶのって失礼だって言う話ですよね?」ってとある日本人男性に言われました。

「なんで?」って聞きたかったけどその人が答えられるわけがないのでやめたんですが、
その理由がこの本を読んでなんとなくわかった気がした。

改革開放時代頃から、男性に「先生」、若い女性に「小姐」などという呼び方が定着していたそうですが、
その後、職務の略語から来る呼名に取って代わっていったそうだ。
だからレストランで服務員さんを呼ぶ時は、「服務員!」ってよぶということになるのだろう。

日本人の感覚からいうと職業名で呼ぶ時は「お巡りさん」とか「弁護士さん」とか
職業にさらに「さん」という敬称を付けるのでなかなか違和感を覚える言葉だが、
現在の中国で「小姐」と呼びかけることは、例えば日本でおじさんが「ねぇちゃん」って
女性店員を呼ぶのと同じ響きになるのかなぁと思ったりもしました。

大阪の男性はおっちゃんと呼ばれるのは良くてもおっさんと言われるとむかつくそうですし、
そういう微妙なニュアンスって中国でも地域や職業でもいろいろありそうですけども、
こういう外国語会話本なども常に最新の物を気にしてないと、移り変わりの激しい新興国とかでは
時にすごい失敗をしそうだなと思いました。

例えば、私が持っている10年くらい前に出版された中国語会話の本では、
知らない若い女性を呼ぶ時は「小姐」と呼びましょうと書いてあります。
そしてその同じ本に「同志」という言葉を知らない人への呼びかけ(もう古い)とありますが、
この同志という言葉は、今では同性愛者を指す時もあるそうです。
10年前ですら古かった言葉が、現在では違う意味の新語になっているということだ。

ま、中国語を本格的に身につける気がない私は、筆談でがんばろうと思います。
それでもじゅーぶん気を付けないといけませんねぇ。
昔、手紙とかいていぶかしげな顔をされたことが懐かしい。(手紙=トイレットペーパー。)
そう言う意味では英語とかって文字自体が表音文字なので、
言葉が変化していくこともなさそうだし、無難な外国語かもな~。

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