映画「台湾アイデンティティ」の感想。

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書籍:台湾人生
2013年7月に封切られた映画「台湾アイデンティティ」をみてきました。 この映画は酒井充子監督の前作「台湾人生」の続編ともいえるもので、幼少期に日本統治時代を過ごした台湾のお年寄りから、日本が去った後の台湾での人生をインタビューしたものをつなげたドキュメンタリー映画である。
ドキュメンタリー映画というものを初めて見たので、こういうものなのかな?という気もするが、おもしろいおもしろくないで表現するならばおもしろいものではなかったです。
というのも、この映画は台湾の歴史をちゃんと知っている人でないとわからない作りになっています。

私は書籍で台湾人生を読んだことがあるのですが、酒井監督が台湾を訪れるようになったきっかけは「台湾を知ってしまったから」というようなことが書いてありました。
しかし、多くの戦後生まれの日本人は監督と同じく知らずに育ってきたわけで、
だからこの映画はそういうのを知らずに見た人には全くぴんとこない。

たとえばうちの身内なんて、台湾が日本だったことがあることすら認識してません。
韓国のことに関しては過敏に報道するので、学校でろくに習わなかったとしても
ニュースでわーわーやるから何となく知っていても、台湾のことは意識の片隅にもありません。
日本では中国にやたら気を遣って台湾のことを滅多に報道しないからです。
そもそも教科書には載っていても、記憶から消えていってしまっているのです。

だからこそ、台湾のこういった人たちの声を、人生を伝えたいのは大いにわかるのだが、
伝わるかなぁ?というのが素朴な疑問でした。
でもエンターテイメントではないので、こういう作りをするものなのかもしれませんが。
前にみた「セデック・バレ」が相当派手なエンタメを入れて楽しませてくれたので、
それと比べているところがなきにしもあらずではあります。

この映画を見る前に少なくとも台湾の歴史についてある程度勉強した方がよいです。
そうでないと、映画の中で語っているお年寄りの話が意味がわからない。
話がつながるように、たとえば228事件のこととかをナレーションが軽く説明してはいるけども、軽くでしかないので、元々しらないとよく理解できないと思う。
戦前生まれであれば、違和感なく見れる人も多いかもしれないが、
戦後生まれで、特に私ら世代以下の人たちはちんぷんかんぷんでなかろうか。

■日清戦争に日本が勝って台湾を割譲されたこと。
■台湾には漢族だけでなく、漢族がわたってくる前から居住していた少数民族(台湾では原住民族というのが正式な名称)がいること。
 ↑若い世代の日本人の知識ではこのあたりが一番怪しい。
  なぜなら今の日本で紹介する台湾は漢人の文化ばかりだから。
■日本は台湾を統治した時代に台湾の民族を日本人として教育したこと。
■日本が戦争に負けた後、中国大陸での内戦に負けた蒋介石が台湾に渡ってきたこと。
■日本時代も日本人がうざかったが、蒋介石時代はもっとひどかったこと。
■あまりの腐敗のひどさに台湾人の中から台湾独立に立ち上がった人が現れたこと。
 (日本では今は日本に帰化された金美齢さんがもっとも有名かも。)
■蒋介石の息子が突然死んで、たまたま台湾人の李登輝さんが総統になったことで、
 台湾が民主化されて、ようやく自由に発言できるような世の中になったこと。

こういう歴史を頭の中で理解している人でないと、
映画に出演している台湾のお年寄りの言っていることの意味がわからないと思う。

私はここ数年台湾旅行を重ねていたので、その流れで結構台湾に関する本を読んでいたので
意味はわかったけど、前回の旅で台湾を一緒に回った友人は228事件を知らなかったし。
そのことを軽く説明した後にたまたま日本語が達者なおばあさんと知り合いになり、
その方がやっぱり国民党が大嫌いな人で、あの時代のことをいろいろ語ってくれた。
「あのころは家の中でだってこういう話ができなかったんだ」と。

台湾はその地理的条件もあって、歴史的に外国に翻弄され続けてきたんだと思う。
それは台湾をぐるりと観光してみればわかることで、日本であり、清国であり、オランダであり。
もっと歴史をたどれば、原住民族だって、漢人が入ってきて勝手に占領した!という 言い分だって持っていそうだ。

今でも中国は領土拡大の野心を隠すことはない。
台湾の歴史を知ることで、映画に出てきたお年寄りが「時代が悪かった」「台湾人に生まれた悲哀」と言ったせりふを言った意味がようやくわかると思います。
特に李登輝もと総統などは、日本語を母語として育っている世代の方です。
映画の表題でもあるアイデンティティは日本人にかなりよっているはず。

ドキュメンタリー映画っていうのはこういうものなのかもしれませんが、
だけどこの監督は誰に向けてこの映画を作ったのだろうか?というのが疑問だった。
このお年寄りと同じ世代の日本人ならすっっとはいるだろうけども、
果たして私の世代はどうだろうか?って思う。
(きっとこの監督は私と同世代だと思うんですけども。)

いずれにせよ、映画を見る前に一通り台湾のことを勉強してから見た方がよいです。
そうでないと難しすぎて意味がわからないと思います。
前作の映画や書籍で見るのもよいかもしれません。

一番わかりやすいのは、金美齢さんの著作ではないかなぁ。
台湾独立派の立場ですが、戦後の台湾の歴史がわかりやすく入ってきます。
228事件についても、漫画とかもでてますし。

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