程さんの台湾料理店 程一彦
台湾人の母と日本人の父を持ち、激動の昭和を生きてきた台湾料理人の人生。
昭和という時代や料理について、興味深い記述が多い。面白く読めました。
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この本のレビュー
台湾人の母、日本人の父を持ち、激動の昭和の時代を生きてきた料理人程さんの人生を生まれ育ちから現在までを順を追ってひもといた本。
戦後の日本がどんなところだったのか、関西居住の人の立場から書かれていた本は
初めて読んだので、いろいろと興味深かった。
私は関東のベッドタウンに育ったので、周りはみーんな似たような境遇の人たちで、
だから周りに外国人や金持ちも貧乏人もおらずという環境だったので、
関西に遊びに行った時に、「差別はやめましょう」とか部落がどうのという集会を目にして 驚いたことがあります。
戦後の混乱期に闇市がたったりといった話はききますが、持ち主が不在の土地を乗っ取ってしまったりしていたというのを読んで、そういうことの積み重ねで民族間の摩擦は生まれそうだなぁと感じた。
でも生きていくためにはなりふり構わなくなるのはわかる。そういう時代だったのでしょう。
横濱の中華街は明治期に横浜港が開港したことで上海や広州、香港で商売をしていた
西洋人が中国人を従えて来たことから中国人の生活の場として始まった町だそうですが、
大阪近郊は戦後の混乱期に日本に残された人たちが作ったということみたいで、
そもそもの町の成り立ちが全然違うようです。(神戸はまた別でしょう。)
だから、中華料理店と中国料理店の違いを語っているところなどは、
横濱中華街の萬珍楼のご主人とは意見が食い違っていて、台湾がルーツの人と、
大陸がルーツの人の考え方の違いもちょっとかいま見れて面白かった。
(萬珍楼のご主人の話は、横濱中華街物語で読んだのでこの本には勿論出てきません。)
印象的だったのは著者は自分を中国人だということです。
お母さんは台湾出身ですが、元々大陸から台湾に移り住んで5代目だったらしい。
でも華人というワケではなく、中国人という。(現在の国籍は日本人です。)
台湾に住んでいるひとは台湾人だという意識が強いと思っていたので、
中国人っていう言葉がしばしば出てくることが印象的でした。
(まあこの人はそもそもが日本生まれなので台湾人意識もないかもしれませんが。)
後半は料理にまつわるエピソードが満載です。
今まで食べてきた台湾料理や中国料理、さらに日本料理との違いを理屈で理解出来ます。
日本料理は水の料理、中華料理は油の料理というのもなるほどと言う感じです。
日本は綺麗な水に恵まれてきたので、素材を生かして、そのまま食べる料理が発達して、
中華は油を上手に使いこなしてきた。
今まで家で作ってきた炒め物が店で食べる炒め物に遠く及ばないのは、
火力の問題ではなく、フライパンや油の使い方が下手だったのだなぁと。
「ああ、この前台湾で食べた筍炒めが絶妙だったのは炒め方か!」と目から鱗です。
さらに香港じゃテリを出すために最後に油を加えたりするんですと。
だから台湾料理は炒めてあるのに油っぽくなくて、広東料理の方が
てかてかしていたのか、といろいろ納得しました。
自分の興味がある分野の本だったので大変面白く読めました。
今度、大阪に行くことがあったら、この人の店でビーフン食べてみたいです。
ビーフンが台湾のネイティブっていうのも初耳だったなぁ。(意識したことなかったので。)
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