中国を追われたウイグル人 水谷尚子
中国の西の果てのウイグル族自治区で起こっている民族問題を
様々な立場の亡命者の証言によりまとめた物。根が深い問題です。
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この本のレビュー
中国には多くの少数民族が居住していますが、チベットのようにダライラマのような象徴的な人物がいないだけにウイグル人についての迫害の事実は日本人の多くが知らない。
私もつい最近までウイグルは普通に漢族とウイグル族が
それなりに平和に暮らしているところだとばかり思っていた。
知らないということがどれだけ怖いことかと考えさせられた一冊。
この本は前置きとして、ウイグル問題は迫害に直面した人の証言に頼るしかなく、
確たる迫害の証拠といえるものが少ないそうで、だからなるべく冷静に客観的に自分の
体験を語れる人のいくつかのインタビューをまとめたもの。
中国、ウイグルのどちらに味方するでもなく中立の立場に立つと、
いかに広い国土、多くの民衆、異なる民族を率いていくことが難しいかがよくわかる。
アメリカですらいまだに人種差別がしばしば問題になるくらいだし、
その何倍もの民族をひとつに統一しようというのだから大変なわけで、
さらに個々人の私利私欲などを抜きにして人を動かすなんてとうてい無理とさえ思える。
中国から日本を非難されるとき、自分のやったことは棚にあげてなんだ!と、
「自分たちだってチベットやウイグルにひどいことしたくせに!」と言い返したくなってしまうのだが、
そういう子供じみた論争をしても堂々巡りになるだけで、どうにもならないとも改めて思った。
日本の新聞やテレビでは国際問題はほんのちょっと触れるだけで、
しかもちーちゃい記事でちょこんと書かれているだけだったりする。
ウイグルのデモなど「デモがあった」とか「何人亡くなった」と中国当局発表のものが載るだけだ。
そもそも何でデモが起こったのかということを知るためには
新聞やテレビのニュースだけでは足りないよなぁとしみじみと感じた一冊です。
この本に書かれているウイグル人の証言については中国政府に反発したり、
ウイグル独立を訴えているわけでもなかったのに、危険分子扱いされている人もいるようです。
たまたま行商でアフガニスタンにいたときに戦争が始まってアメリカに拘束されたり、
ウイグルの核実験で被爆した患者の現状を訴えた医師がテロリストにされてしまったり、
ましてやウイグルの歴史を純粋に研究していた東大の大学院生が逮捕されたなんていう話もあります。
この東大の大学院生については先日週刊誌でジャーナリストの櫻井氏が続きの顛末を書いていましたが、
日本が絡んでいるだけになんとかならないかなぁとつくづく感じます。
アフガンで拘束された東トルキスタンの一般市民はグアンタナモ基地に搬送されたようですが、
そもそも私はグアンタナモ基地がキューバにあると知った時、驚いた。
あ、あれ?アメリカってキューバに経済制裁したり嫌がらせしてなかったっけ?
なのにキューバにアメリカ軍の基地があるんだ・・・。ってね。
なんか国際情勢ってしればしるほど、一般庶民の感覚では驚くことばかりが出てくる。
旧満州国は5族共和を理念にしていたそうですが、
今の中国は5つどころかもうものすごい民族が多いわけで、
共和社会を作るのは並大抵のことではないのはわかるのですが、
もうちょっと違うやり方もあるのでは?
この本のおかげでよく知らなかったウイグル問題が少しわかりましたが、
まだまだ不可解なことも多い。早く問題が解決してくれることを願います。
その為には多くの人が感心を持つことが大事なのかも。
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