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ラダックの旅:パンゴンツォからの復路にて。いいドライバーでも事故る。

へミスゴンパの砂曼荼羅
へミスゴンパの砂曼荼羅。触ったら崩れるのに触る不届き者がいる。

一泊二日のパンゴンツォ湖訪問の旅。
午前8時過ぎにはメラク村を出発すべく、各自が出発準備を整えていた。
家の室内温度は16度くらいだったが、外の気温は10度前後だったのではないかと記憶している。
ひんやりと冷たい空気にさらされてピンと緊張した肌に、強烈な太陽光線が明るさと熱が降り注ぎ、
日陰にいると強烈に寒いのに、日向に出ると驚くくらいに暖かな空気に包まれるのを感じた。
いわば電気ストーブに当たっているような感覚で、太陽の近さと熱のエネルギーの強烈さをまざまざと体感できる。

聞けば昨晩はマイナス3度まで気温が下がっていたらしい。
帰路で凍った小川を目の当たりにして、関東育ちの私が理解できる限界値が今のラダックの姿で、
真冬のこの地でどうやって彼らが生活しているのかが全く想像できない。

積み上げた石をコンクリートで固めた家に、カーペットを敷き詰めて作った部屋の気温は16度だった。
それなりにひんやりはしたが、それなりに機能性の高い服を着ていたし、
家主が準備してくれたふわふわの毛布がとても暖かく、蓑虫のようにくるりとくるまればぐっすりと眠れた。
だけど、この状態がまだ、"夏の終わり"なのである。

冬になったらあの部屋にストーブを置いて寒さを補うにしても、昼間の気温が今よりずっと低いはずだから、
その効き目は推して知るべし。まあ、とにかく寒いに違いない。(でも私の想像の範疇は超えている。)


そういえば、パンゴン湖畔のテント食堂の隅には、従業員用のパイプベッドが置かれていたのだが、
ベッドの上には大量の毛布やセーターなどの防寒着が山積みになっていた。
夏限定の店なので、店主たちは店に住み込みで働いているのだが、ベニヤとビニール製のテントでは、
屋根と壁があってプライバシーがあるというだけで、住環境は外と変わらない。だからとにかく防寒用品がいる。

「人って生まれ落ちた場所でここまで人生が変わってくるんだね。」

何気なく口にした友人の言葉に、今更しみじみと感じ入る。
日本は自然災害が多いという多少のデメリットはあれど、自然条件にも恵まれていて、とても過ごしやすい。
こうやっていろいろな場所を旅できるのも今の時代の日本に生まれたからこそ。つくづくありがたい人生だと思う。

事故現場のスクショ
事故現場のスクショ
さて、この後、ちょっとしたトラブルが起こった。
8時にメラク村を出発し、往路と同じ道をレーに向かって戻るのがこの日の行程。
途中、チェムレゴンパやへミスゴンパに立ち寄るが、基本は戻るだけである。

復路は景色も同じで面白みには欠けるものの、ヤクやパシュミナ山羊の放牧地の場所が 往路より道路に近い場所に移っており、間近で放牧された家畜たちの写真を撮ったりして、 それなりに楽しむことはできた。
ただし、いかんせん、軍のトラックの数が異様に多く、 狭い山道だからこそ、十数台ものトラックに何度も道を譲らねばならず、 ドライバーでもない私でも、たまにイラつくくらいだった。

我々の車のドライバーは安全志向で、落ち着いた運転をするので問題はなかったものの、 すべてのドライバーが安全運転をする訳ではない。
中でも、同じツーリスト向けの1台の車が明らかにいらだっているのが見て取れた。

勝手知ったる道で、のろのろ運転を強いられる状況が嫌なのか、早く帰りたいのかは定かではないが、
とにかく少しでも早く進もうと、隙を見てはアクセルを踏み込む。

そのうち我々の車も抜き去って、あっという間に視界から消えていったはずなのに、
寄り道しながらゆっくり走っていた我々の車が、再び彼らの車のテールランプを捕まえた。

原因は、彼らの車の前にいたアルト。
日本でかつて大人気だった軽自動車のアルトはインドでは普通車のエンジンを積んで活躍している。
見た目からして少し前のデザインのアルトに乗っているのはインド人のカップルで、
おそらく、二人で景色や会話を楽しみながら、マイペースに山を下っていたのではないかと思う。

こじんまりとした車体のアルトが道路の真ん中にいると、車の左右に中途半端な空間が生まれる。
追い抜くほどの幅はないから追い抜けないのに、遅いスピードに合わせて追従せざるを得ない。
右へ左へ車体を振りながら、追い抜く隙をうかがう様から、前のドライバーのいらだちはピークに近いと思われた。

事故の責任を巡ってもめる人たち
事故の責任を巡ってもめる
そんな状態で数分が経過した時、対向車が行き違えるくらい道幅が広くなった。
すかさず追い抜きをかけようと、前の車がアルトの右脇に車体を滑り込ませようとした瞬間、 あろうことかアルトが幅寄せをしたのである。

実際にはアルトの運転手はわざと幅寄せをしたのではなく、後続車のことなど気にもかけてなかっただけだろう。
走っていたら道幅が広くなったから道の真ん中に寄っただけ。
だけど、我々を含んで後続車側から見ると幅寄せしてきたように見えなくもない。

トロトロ走っていた車を追い抜こうとしたら、幅寄せされて、驚きのあまり急ブレーキを踏んじゃって・・・。
結果、安全運転を貫いていた、我が車が追突してしまった。もう、ええーーーって感じ。

ドライバーのチョクラは亡命チベット人の2世。人間的にも穏やかで、真面目で実直。
出過ぎず、かといって必要なことはきちんとやってくれて、一緒にいて居心地のいい、とても良い人だった。
前にラダックを旅したとき、ドライバーがいけ好かない若造で、非常に後味が悪く終わったので、
事前に「いいドライバーを確保しておいて!」とわざわざ頼んだくらいで、それで来たのが彼だったのだ。

運転も丁寧で、ほんとに安全運転だったのに、よりによってもらい事故である。

さすがにチョクラもこれには頭にきたようで、車から降りていってヒートアップ!
2台のツーリストカーとアルト。3人の運転手は道のど真ん中に車を停めたまま、言い争いを始めてしまった。
当然、みるみるうちに我々の車の上にも下にも後続車が貯まっていく。

こういうとき、日本だと後続車のドライバーが下りてきて、「何やってんだよ!邪魔なんだよ!」
逆ギレしたりするんだけど、インドでは割と違った展開になる。

「たぶん、あのひげのおじさん一通り当事者の話聞いた後、「仕方ないだろ」って説き伏せて終わらせるよ。」

当事者が「おまえが悪い」「悪くない」と互いに一歩も引けずにいる中、第三者がお互いの言い分を聞いてやる。
そして、一通り聞いてやって落ち着かせたところで、今の状況を客観的に理解させる。
気持ちはわかるけど、道路封鎖されて迷惑なのよって。

思っていたとおり、3人で喧嘩してた時は収集付かなかったのに、第三者の登場であっという間に収束した。
誰も怪我せず、車もちょっとへこんだくらいで済んだってこともありますが、
警察を呼んだり、保険会社に電話したり、修理代を巡って揉め続けたりしないんだな。これが。

車に戻ったチョクラはまだまだ納得していなかったが(当たり前)、親父の登場で落ち着いてきたようで、

「ま、これでも食べて。」

日本からはるばる運んできたブラックサンダーの封を切り、彼に差し出すと、険しかった表情が幾分か和らいだ。
きーんと甘い、日本のチョコレートに、少しでも気が紛れたらいい。

「ところでさ。この車ってチョクラのなの?それとも会社の車?」と問えば「自分の車」ときた。
さらに我々が誰も気がつかなかったのに、走りながらバンパーが外れた音に、耳ざとく反応し、
車を停めて、さみしげな表情でバンパーを拾いあげるのを見た時は、なんだか、気の毒でしょうがなかった。

車とチョクラ
車と運転手のチョクラ
今思えば、事故現場って、結構な山道の途中で、下手すると崖の下に落っこちて大惨事になっていたかも知れない。
それを考えたらあの程度で済んだのは運が良かったんだけど、
(たぶんひげの親父はそんなこと言ったんだろう。)
一番、まともに運転していた人の車だけが壊れて、しかも、きっとローンがまだたっぷり残ってるだろうし、 ほんと、運がなかったなぁ。

我々ができることと言えば、チップを弾むことくらい。
(西洋人なら逆に事故で遅れたから払わないといいそう。)
そして、日本から持ち込んだお菓子をたんまり押しつけて、「またね!」と3日間をねぎらった。

次にラダックに行くことがあったら、またチョクラを指名するよ。だからめげずに頑張ってくれ!

パンゴンツォから帰路に寄ったゴンパ

チェムレ・ゴンパ

チェムレゴンパ
チェムレ・ゴンパはカルーのチェックポイントからパンゴンツォ方面に向かってすぐにあるゴンパ。へミスゴンパの分院なんだそう。 外観も内部もなかなか見応えがあって立派な僧院だが、周辺のへミスやティクセに比べると観光客が少なく、 現在、鋭意修復中といった感じ。チェックポイントの先というのに行きづらさがあるのかもしれません。
レーからはバスで2時間ほどで行けますが、周辺のゴンパも行くなら車が便利です。

チェムレゴンパの中庭 チェムレ・ゴンパのマニ車 チェムレゴンパの屋上
チェムレ・ゴンパのお供え チェムレゴンパのお供え チェムレゴンパの仏像

チェムレ・ゴンパの屋上からの眺め
チェムレゴンパの屋上からの眺め。

インド:ラダック旅行に行きたくなったら・・・物価の目安にどうぞ。

旅行時期:2018年9月
1ルピー=約1.7円
■宿泊:アムチホームステイ 800ルピー/人
■交通:チャーター車 14,500ルピー/台(チップ400ルピー別)

■成田-デリー航空券 直行便で燃油サーチャージ込み90,000円前後~。
 デリー-レー航空券 片道8,000円くらい
旅程を立てるために参考にした本やウェブサイト
ラダック ザンスカール スピティ 北インドのリトル・チベット
ラダックについて最も詳しく書いてあり、なおかつ新しい書籍がこれ。 地球の歩き方の別冊シリーズの一つで、これがあればインドの中のチベット世界へ行くのにかなり役立ちます。 重いのでコピーしたけど。
ただし、旅先はラダックだけではなかったので、地球の歩き方インドとロンプラの該当ページを持参した。
ロンプラは公式サイトからジャンムー&カシミール州のみ購入しました。

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