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ホーム > 歴史・国際関係 > 横濱中華街物語 林兼正

横濱中華街物語 林兼正


日本で生まれ、日本で育った萬珍樓現社長の華僑2世から聞き書きした横浜中華街史。
話し言葉を聞き書きしているため、わかりやすい上に語り手への親しみも感じる。

この本のレビュー

私は神奈川で育ったため、中華街といえば横濱で、その存在もよく知っていた。
大学生頃からですかね。アルバイトをして自分のお金が自由に使えるようになると、
時々、横濱の中華街には行っていました。
でもそもそもが横浜市民ではないため、中華街があるという程度だったし、
外国文化にあまり興味がなかっただけに、肉まんを食べながら通りをぶらぶら歩いたり、
中華菓子を買ったりするくらい。大学生の懐具合ではそのくらいでした。

そして、社会人になり、旅に出るようにもなり、職場以外の知り合いが増えるようになると、
だんだんと横濱の中華街で食事する機会が増えていきました。
そして、中国本土だけでなく、東南アジア、南米などのチャイナタウンを見るに付け、
「あれ?なんか外国の中華街って横濱に比べると小さくない?」って思うようになった。

特に、アメリカのロスのチャイナタウンの地味さには驚いた。
香港や日本、上海などを見ていて朱色とかネオンでぴかぴかのイメージもあったし。
人もあまり歩いていなくて、こじんまりしてるし、無機質なコンクリート四角い店が多かったりして、
イメージと違って不思議だったのです。
(横濱の中華街は土日に歩くと人だらけだった。今年はなんか震災の影響かすくないけど。)

そして、中華街には2~3ヶ月に1回くらいは行っていたのですが、
そのたびに1人だったり、2人だったり、4人以上だったり、その時の人数に応じて、
またそのシチュエーションに応じていろんなお店を渡り歩いていて、
おじいさんが一人で切り盛りしているとある1軒の小さなお店に行くようになりました。

おじいさんが一人で経営しているため、メイン通りの高級店のような派手さは全くなく、
お客も10人も入れない。その上、料理を頼んでから出てくるまで1時間以上待たされることも。
だけど、仕事が一段落した時に聞くおじいさんの話や家庭料理の味に惹かれて、
時々行っていたんです。合い言葉は「じいさんが死ぬ前に行こう」で。
だって、そのおじいさんが亡くなったら店がなくなってしまいそうなんだもん。

で、そのおじいさんを見るに付け、横濱の中華街の成り立ちにすごく興味を持ったんです。
あのおじいさんは一体いつ、どうして日本に来たんだろう?って。
今まで中華街がいつできたのか、考えたことなかったなぁと。
歴史で「ペリーが浦賀沖にやってきて横濱が開港した。」ってことはならうけど、それだけでしょ?
その後のことってしらないもんねぇ。

ずっとそのことが心に残っていたのですが、ちょうど横濱が開港150周年を迎えた2010年、
それをきっかけにこの本が出版されたようで、長いこと気になっていたことがいろいろわかって面白かった。

横浜中華街に生きてきた華僑の1世たちはそれこそ歴史に翻弄されてきた人たちだったようです。
横濱といえば開港して異国人がたくさんやってきた国際都市と言われていますが、
その西洋人たちがどこから来たかと言えば、アヘン戦争で清国がイギリスに負け、
開港させられた中国各地で商売していた人たちで、商売をうまくいかせるために、
漢字がわかり、英語が話せて日本人の間に立てる中国人を連れてきたのが始まりだそう。

それから清国が倒れたり、関東大震災で街が壊れたり、戦争の空襲で焼かれたりと、
中華街もなくなっては再生し、なくなっては再生しを繰り返したという。
そして、萬珍楼の社長のお父さんは裸一貫で日本にやってきて戦後に成功した人なのですが、
成功してお金もたまって、故郷に錦を飾ろうと思ったら、中華人民共和国ができてしまい、
中華民国のパスポートで日本に来ていたために戻るに戻れなくなった。
確かにあの時代だと、海外で成功したお金持ちだったらどんな目にあうかわからないですね。
最後は故郷に帰ることもなく、日本でなくなったそうです。

そしてその息子の林兼正(日本に帰化した後の名前)さんは、自分を守れるのは自分しかない!と
若い頃から、いろんなことを考えて生きてこられたのがよくわかります。

萬珍楼といえば、私は「ああ、火事で焼けたとこだ」っていう印象なのですが、
そして、火事で焼けた後のお店に2回ほど行ったことがあるのですが、
「全焼したにもかかわらず、これだけの店が建つなんて人望あるんだなぁ」って思っていたんです。
それだけ彼に投資した人がいたんだろうと。

しかし、彼は火事で店が全焼したことによって、世界中の元お客さんから
励ましの手紙や火事見舞いを戴いたことで、
「この店は自分の店じゃない。お客さんのための店なんだ」と気づき、
以来、フルパワーで再建して、現在のお店があるそうです。

萬珍楼は高級食材を使っていて料理も高いし、毎日行けるようなお店ではありませんが、
時々、例えば家族のお祝いとか、お客様が来たときに奮発して行くにはとても良い店です。
そして、従業員のサービスも気持ちよくて、高いんだけどもまた来ようと思わせるのですが、
経営者の考え方を知り、余計にまた行こうという気になりました。

最近は中華街の目抜き通りに韓流スターのグッズショップとか、
吉本のビルなんかができていて若干興ざめだったのですが、
そういえば私はいつも石川町で降りて、延平門をくぐって中華街を歩いていて、
関帝廟は時々通りがかるけど、媽祖廟が新しくできていたのは知らなかったし、
それらが華人にとってどんな意味を持つかもよくわかっていませんでした。
今度時間ができた時に一人で中華街を歩いてみよう。そう思った。

この本は横濱の開港の歴史、日本の近代化の歴史をわかりやすく知ることもでき、
そして、今年、日本に起こった衝撃的な天災の数々に日本中が落ち込んでいますが、
なんかがんばろう!という気持ちを起こさせてくれる本でもありました。

人間万事塞翁が馬って、ホントですね。

萬珍楼はさすがに一人じゃ入りにくいから、今度どこか一人で昼ご飯とか
食べられる店でもさがそー。

ちなみに先に書いたじいさんのお店はじいさんはご存命ですが、
最近、息子さんだかが仕事を引き継ぐようでいらっしゃいました。
残念ながら、味が微妙に変わってしまって、そうすると足が遠のくかも。
息子さんは息子さんで、息子さんの新しい味を生み出して客を引きつければよいけども。
どうなることでしょう。おじいさん、お店をうろうろしてたけどね。

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