インドネシア NBA航空(アンボン-バンダ島)手配の顛末(2)
【NBA航空の搭乗風景。徒歩で移動。左:アンボン空港、右:バンダネイラ空港】
預け荷物が出てくるのを待っていると、一人の男性が声をかけてきた。
「ハロー。ナイストゥーミーチュー」
彼が旅行代理店が手配した現地スタッフのヤネス。ナイナイの岡村隆史にそっくりの中年マルク人。
カバンを受け取ってから外で会うとばかり思っていたが、到着ゲートの中まで入って来ていたのには驚いた。
「パスポートを貸してください。バンダ島は外国人の出入りに厳しいのでコピーが必要です。」
「大丈夫。ちゃんと後で返します。ところで荷物の半券は?ボクが荷物を探すよ」
ヤネスはちょっと世話好きな感じの男だ。ちょこまかと落ちつきなく動き回る姿はホントに岡村にそっくりである。
後にアンボンの町を歩いて気づいたが、アンボンにはヤネスのような顔立ち、体型の男性をよく見かけた。
岡村似の女性には気が付かなかったのは、ショールなどで頭を隠しているからかもしれない。
コピーを終えたパスポートと荷物を受け取ると、後はバンダ行きの航空券をこの男から貰うだけである。
「じゃ行こうか。ホテルトランジットは近いからベモで行けばいいよ。ベモで。」
ホテルはともかく、航空券はどうした。
「航空券?ボクが持ってる。ホテルのチェックイン手続きの後で渡すから。」
空港受け取りのハズの航空券が、ホテル受け取りになり、オジェ(バイクタクシー)でホテルに移動。
「部屋の準備が整うまでソファーで座ってなよ」と、ほよんっとクッションが心地よいソファーに促されたところで
ようやくヤネスは「ちょっとした問題」の真相を詳しく話し出した。
「はい。航空券。」
渡された航空券は今はなかなかない手書きの航空券。なんか懐かしい。
っていうか、あの、片道しかないんですけど。
「さっき空港でちょっと問題が起きたってゆったでしょ?
実は1月のスケジュールが白紙になったの。
飛ぶと決まってるのは明日(12/29(水))と12/31(金)だけ。」
え?それが ちょっとした問題?
「運行スケジュールはジャカルタの事務所が決めるんだけど、彼らは29日の飛行機で飛んで、
後はバンダ島で運行再開を待てっていうんだよ。」
「でも、問題は君が1/8の飛行機でジャカルタに戻らないといけないことなんだ。」
え?問題はそこか?!
ことの真相は恐らくこうだ。
私はマカッサルに本社を置く旅行代理店に航空券の手配を頼んだ。
代理店は航空券の予約手配の時に、NBAの事務所がマカッサルにあるならマカッサル事務所で、
そうでなければ振り込みなどで航空券代を航空会社に支払ったのだと思う。
そして、アンボンのヤネスは旅行会社から某かの手数料を貰って仕事を依頼され、この場にいるのである。
これで往復ともキャンセルなら話は早いのだが、飛行機も往路は私が依頼したとおりの便が取れている。
航空券は定価だしキャンセルしようと思えばできるだろうけど、いかんせんお金の流れが複雑で処理しづらい。
「マルセル(代理店のスタッフ)は12/29にバンダに行って、12/31にアンボンに戻る。
後の日程はセラムとか別の島を見て回るのはどうかっていうんだけど・・・。」
え~、セラム島なんて行きたくない。それ以前にバンダが2日だけってのは忙しすぎてイヤ。
一通り話を聞き終えた私は、ヤネスにこう提案した。
「状況はよくわかったけど、私はセラム島とかには興味ないです。
例えばこういう手配できる?まず、帰りの飛行機をキャンセルして、お金を返して貰う。
そしたら私はバンダからアンボンまで船で戻るよ。ペルニ船が1/5にあるでしょう?」
実は12月に入ってペルニ船のスケジュールを調べたらチレマイ号が復路にドンピシャにはまることを知った。
「うわ~、行きは飛行機。帰りは船っていう選択肢が取れた~」って悔しく思ってたんです。私。
私の提案に、それまで神妙な顔をしていたヤネスの表情がパッと輝いた。
「じゃあ、こうしよう。もし飛行機が飛ばなかったら、5日の船でアンボンに戻る。
ボクはその間に旅行代理店からお金を貰っておくから港で君にお金を渡すよ。」
「バンダ島の宿は決まってる?ゲストハウスならガマラマゲストハウスに電話しておいてあげるよ。
オーナーのウチュには空港までの迎えと5日の船の手配するように頼んでおくから。」
ヤネスは航空券の入っていた封筒に日程を書きながら頭の整理を始めた。
「1月5日か6日に船に乗って、6日か7日にアンボン着、っと。8日のジャカルタ行きは何時?
夕方なら時間はたっぷりあって問題ない。じゃあ7日はアンボンでフリー!!」
乗船が5日か6日というのは、天候や荷物の積み卸しなどの状況により遅れが生じる可能性があるからである。
先のジャカルタの代理店に「離島はそれなりの日程の余裕と覚悟がいる」と忠告されていたこともあり、
アンボンのフリー滞在期間を3日とっておいたのだが、見事にその予備期間が生きる形になった。
「もし飛行機が再開されたら飛行機、だめだったら船ってウチュにゆっとくからね。」
と、こんな感じで、NBA航空の小さな問題は処理されることになった。
後でバンダ島に行ってわかったのですが、私のバンダ島滞在期間内にペルニ船はチレマイ号以外にも
いくつか船の入港が決まっており、バンダからアンボンへ戻るだけなら、3隻くらいの選択肢があった。
インドネシアの離島から離島への旅は早めに手配したからといってスムーズに行くわけでもなく、
かといって事前に手配しなければ飛行機の空席は望めず(アンボンにいた旅行者が「満席」といわれてた。)、
余裕をもったお休みを取れない日本人の休暇で訪れるのは、なかなか難しいのでした。
私からのアドバイスは、多少のお金を払ってでも現地の人の助けを借りるべき!ということです。
自分で手配する方が安くすむけど、席がなければ現地で数泊待機の可能性もある。
スケジュールの変更など、不安定な交通事情を乗りきらねばならない時に助けてもらえますよ。