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第10話 カシミーリー宅にホームステイ。 [デリー]

ひんやりとしたコンクリートの床にカーペットをひいてあるだけ、そんな簡素な寝床で目を覚ました。
辺りで朝の支度をしている音が聞こえる。Sちゃんはまだ夢の中らしく、隣で横たわる彼女はぴくりとも動かない。

この朝は、コロンボで迎えるはずだったが、まだデリーにいた。実はここはナジールの家だ。
仕事に行く準備をしている弟、朝御飯の支度をしている妹。インドでも朝はやはりあわただしいようだ。
昨日は、宝石店の店先でじーっとナジールの帰りを待っていた。

夕方、4時頃だったろうか。店に戻ったナジールの表情はなんだか険しかった。

「今日は$.100を出しても99%無理」
「2日後なら確実に飛べる。打つ手はすべてうったへどだめだったよ」

すっかりふさぎ込んだ我々にナジールはこう提案してきた。

「デリーを発つ日まで一晩Rs.50で泊めてやる。」
「デリーは物価が高いからホテルも食事もお金がかかって大変だし、うちはお母さん、妹、弟と家族で住んでいるから安心だ。近くにはマーケットもあるし、空港にも近いから便利だ。」

悩んだがこの際、彼の好意に甘えることにした。インドの庶民のお宅も拝見したかったという好奇心が勝ったのだ。

ナジールの家は鉄筋のアパートの屋上のペントハウスだ。部屋が2つと台所、そしてトイレとシャワーがあるだけ。
必要なもの以外、一切置いてない。家族が着る服、毛布などが部屋の隅の一畳ほどのスペースに積み重ねてあった。
そんなシンプルな部屋の隅にあった弦の切れたギターと小さなカセットデッキには違和感をおぼえた。
そのふたつだけが高級品というか、贅沢品なので妙に浮いている。

壁には一枚のポスターが貼ってある。何かの建物の前に一人の男の人が立っている絵である。
ポスターはメッカの方向に貼ってあり、どうもアッラーの神?かなにかのようである。(偶像崇拝禁止だから違うかもですが。ようは目印。)

ドゥヌー家 ナジールの家族は、お母さん、妹のルビナとアフローザ、そして三人の弟グラム、シャキール、バルマの7人だ。
ナジールは長男で、一家の主でもあるらしい。
ナジール、グラム、シャキールは英語をしゃべれるが、他の家族はヒンドゥー語しかしゃべれない。
また、バルマは傷害を抱えていてどんな言葉もしゃべることが出来なかった。

この家の男は観光客相手の商売をしているだけに英語が達者で、さらに日本語をも勉強していた。
時々片言の日本語で話しかけてくる。

結局、昨日はナジールの店、今日はナジール宅でほぼ一日中待っていただけ。
妹たちにマーケットに連れ出され、髪飾りだのなんだのをねだられたが、すいませんがお金ないんすよ、あたしたち。

お祈り マーケットは退屈だったが、お客さんに喜んだ末の弟のバルマが相手をしてくれ、一緒に踊ったり、アッラーの神へのお祈りを教えてもらったりなかなか楽しい一日となった。
夕方になりナジールが帰宅。一日中ねばり、やっとの事で我々のチケットが手配できたそうだ。
約束と違って明日のチケットも結局追加で100$払う羽目になり少々納得いかないが、もう仕方がない。

要は最初からデリーに着いた日に2日後のチケットに変更してれば無料で席が確保できたのに、 その日の晩の席にこだわっている間に2日後のチケットの「72時間前」も過ぎてしまい、結果、賄賂を請求されたということです。 ちゃんちゃん。

デリー観光にでる

インド門 ナジール宅に居候して2日目。彼の出勤に合わせてデリー観光にでた。
ナジールとはコンノートプレースで別れ、地図を広げ行き先を決める。
とりあえずここから1番近い観光ポイントのインド門へ。
朝早いせいかインド門付近も人がまばらだ。
今は寒気で、さらに冬の寒さのピークも過ぎており、湿気も少ない上に朝の気温はとても穏やかで散歩するのがとても気持ちいい。
広々とした公園に大きな門。そしてここへ続く道の先はプレジデントハウス。大統領の家とこの門を結ぶ通りで毎年パレードが行われるとのこと(パプー談)。
ちなみに夕方以降は屋台だ出たり、ゾウやラクダに乗れたりして、市民の憩いの場&観光客のたまり場になる。暑い夏の夜は家族で避暑にくるっぽい。

プラーナキラ
プラーナキラ
次の行き先は「プラーナ・キラ」。ここではインドでは珍しくいちゃいちゃする若いカップルがみられるそうで。
宗教、カースト等、様々な理由で結婚していない男女が行動をともにすることが少ないこの国では非常に珍しい。 都会の進んだカップルですかねぇ。

ちなみにこの中にあるモスクに、モスクと気付かず土足で入って、ばあさんに叱られました。
観光名所というより、人々の生活空間っていう印象が強い。

さらにこの後、フマユーン朝を探してひたすら歩きさまよってしまった。
朝から10キロは歩きっぱなし。さすがにかったるくなったので観光はおしまい。
土産物でも買いにいこっと。

モスクの中 ところでデリーはインドの首都で、その中でもニューデリーは結構な都会だ。
休憩がてらに入った当時は珍しかったバーガーショップで、2人の日本人の女の子に声をかけられた。

デリーに来てからずっとチケットのことで奔走していたので、日本人の姿をみたのは久々だった。

「とりあえず政府観光局に行ってみようと思ったんです。 ガイドブックには"政府観光局の人は決して自ら客引きしたりしない" と書いてあるのに、思いっきり勧誘されるし、突如現れた日本人に 「俺達もここで世話になった。」とかやたらと薦めるし、 ぐるになって騙されるんじゃないかと思って、怖くなっちゃって。」

「私らは別のところに行ったけど大丈夫だったよ。そっちに行ってみる?」
「え?(←明らかに顔色が変わった)じゃ、じゃあ場所だけ教えて貰おうかな・・・」

2人は我々のことも少し警戒したようである。そりゃ、そうだよな。その男の子と同じだもん。

「説明しにくい場所だから連れて行きましょうか?じゃあ今から行きます?」
「は、はぁ」

いぶかしげな顔をする彼女らを従え、コンノートプレースの地下道を抜け道路を横断すると、
横からインド人の若い男が親しげに話しかけてきた。
振り返ると、なんとそこにはドゥヌー家三男坊のシャキールが立っていた。

「Hi!! どこ行くの?」「あなたのお兄さんのオフィス。」
「ふーん。じゃあ、僕も一緒に行く。だって、僕の働く店は兄貴の店と同じビルにあるもん。」


この時点で我々は彼女たちにとって、ちょっと"怪しい日本人"から、かなり怪しい日本人に格上げ決定!

ほどなくして、オフィスの前に到着。

「とりあえず場所はここだよ。」言っている矢先に二階のドアがカチャリ。ボス登場!
すぐさま我々に気づき、満面の笑みを浮かべ、「ハーイ!今度は何があったんだい?」

だめ押し。ボス、タイミング良すぎ。
これで我々も"インド人とぐるで日本人を騙す"輩となってしまい、彼女達は「あ、ありがと・・・」とそそくさと帰っていっちゃった(笑)

「なに?あの子たちは日本人か?おい、連れ戻してこい!!」「無理無理。絶対、もう来ないよ」

そんな具合に、インド最後の日は終わりを迎えた。

初めてのインドの旅。いろんなハプニングがあったけど、それが逆に深く心に残って実はちょっと楽しかった。

インド男たちの濃ゆい下心光線を体中で浴びながらもよくも無事で楽しんでこれたものだ。
ナジールの様にビジネス目的の下心、あわよくば日本人妻(恋人)がほしいよ~んというボスやパプーの下心。

こういうストレートな感情表現に慣れていない私にはインド人の国民性もカルチャーショックの一つだった。

ナジール一家はカシミールの出身だった。冬の間は雪深いカシミールを離れてデリーで出稼ぎするのだそうだ。
カシミールは今でも領土紛争が続いており、治安が悪いから観光客が来なくなった。
カシミールでの仕事が芳しくない今、デリーでカーペットやペーパークラフトを売るのは貴重な収入源。

そのお店がボスの経営していた旅行代理店と同じビルの地下のあの店。
チケットの交渉をしてくれている間、チャイを飲みながら半日ぼーっと座っていたところだ。
旅行会社もお店も路地裏の目立たない場所にあるのに欧米人がポツポツ来店していて、
不思議でしょうがなかった。
お金持ちそうなおばさんから耳ピアスの若者まで。一体どこで情報を得ていたのだろう。

私は日本でカシミールの製品を売ってくれないかと持ちかけられたのですが、断りました。
初めてであった外国人に気安く声をかけて来る人は単なる興味本位の時のほうが多いけども、
大小様々な下心を持っている場合もあります。
助けた後の見返りが大きいことも経験しているのだろう。他にも外国人を時々泊めているようでしたし。
1泊50ルピーと言ってたけど、結局お金は受け取ってくれなかったので、悪い人ではなかった。
デリーにはカシミーリーの悪徳商人もいるので、軽率な行動はあまりよくはなかったけど。
(私はたまたま運がよかっただけ。)



今でもカシミールの紛争は収まる気配がありませんが、彼らどうしていますかねぇ。