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第9話 リコンファームとアンダーザテーブル。 [デリー]

ジャイプール、アグラ、バラナシを経て、4日ぶりにデリーに舞い戻ってきた。今日このデリーを最後にインドを離れる予定だった。

寝台列車は朝8時頃、無事にニューデリー駅に到着。
駅のクロークルームに荷物を預けると、暇に任せてそのまま街を散歩してみることにした。
冬の早朝のひんやりと心地よい空気を肌で感じ、とてもすがすがしい気持ちである。

通りすがりに食堂を見つけた。ダーバと呼ばれる大衆食堂だ。
路上にはみ出たキッチンで、くるくる生地をのばし、プリーやチャパティを作る親父。
ステンレス製の食器を両手に抱え、小走りに駆け回るウェイター。
テーブルの上の食料をただ、ただ黙ってもくもくと食う通勤前らしき男たち。

ぐぅぅぅぅ。見てるだけでお腹が減ってきた。

おそるおそる店内に入ると外国人はあまり来ないのだろう。店員もちょっととまどっている。

メニューはないし、注文の仕方もわからない。しょうがないから食事をしているおじさんのプレートと同じ物をもらった。
そして、唯一知っていた「チャイ!」を追加。日本じゃこんなに甘ったるい紅茶飲まないのにすっかりはまってしまった。

しばらくしてウェイターの兄ちゃんが持ってきたのは、お好み焼きのようなパンケーキみたいなもの(※今思えばパラタだと思う)とカレー風味のスープだった。
スープはとても薄味で、胃に優しい感じ。どうやらインド人も朝からこってりしたカレーは食べないようだ。

腹が満たされ満足したのもつかの間、ふと目の前に公衆電話があるのに気づいた。
電話を見た瞬間に現実に引き戻された。今日の飛行機リコンファームしてあるよねぇ・・・。
実はリコンファームはデリーを発つときボスに頼んであった。ツアー前に何度もスリランカ航空に電話がつながらなかったからだ。

朝が早かったせいか、スリランカ航空のオフィスにあっさりと電話がつながった。
しかし、なんだか受話器を持つ友人の様子がおかしい。切迫した顔で、何度も受話器に問いかけている。

・・・なんとその日の飛行機にはのれなかった

「あなた達の予約はキャンセルされている」

あまりにもショッキングな台詞に、しばし言葉を失ってしまった。

「一体どういうこと?」

電話を切ったその足でエアランカのオフィスに向かおうとしたが、よりによって地図が間違っていた。
歩けど、歩けど、エアランカのエの字も見つけられない。
こうなったら向かうところはただ一つ。「ボスのオフィス」である。
1週間前に登った階段を上がり、ばーん!と入り口のドアを開け放つと、部屋の奥の奥、真っ正面のデスクで暇そうにのさばっているボスの姿が目に入った。

「あなた、私たちのこと憶えてますよね?」

はじめは、誰が入ってきたかときょとんとしていたが、すぐに気がついた。

「あれ、おはよう~。バラナシは楽しかったかい?」

って、楽しかったって報告になんか来ないってば!

「ちょっとリコンファームの約束忘れてたでしょ!!」

我々の剣幕に、ようやくそんな約束もしたようなと思い出したらしい。しぶしぶ電話をかけてくれたが、もう通じない。

「エアランカはここから近いから行ってみな。」

おまえが行けよ!という気もしないでもないが、言われるがままにオフィスを尋ねてみた。

エアランカのオフィスでは、ひっきりなしに電話が鳴っており、電話を切ったと思ったらまた電話のベル。
オフィスにいる客は少ないのに、なかなか相手してもらえない。今回の旅で、初めて忙しそうに働くインド人を見た気がする。
数十分後、やっと順番がきて、「リコンファームちゃんとしてありますよね?」と、目の前の女性スタッフに告げる。
その女性は、我々の航空券を見ながらなにやらコンピュータに入力し、そして言った。

「これは予約がキャンセルされてるわ。」

やっぱりリコンファームのことを忘れていたのだ。
デリーとコロンボ便は週2便の上、飛行機の収容人数も少ない。どう転んでも今日の便には乗せられないのだという。

「2日後のフライトなら今からでも何とかなるわ。」

2日後では遅いのである。実は明日、友人が日本からコロンボへやってくる。そして、その友人とは空港で落ち合う約束だ。
さらに空港で会えるつもりだったので、会えなかった時のことを全く打ち合わせていなかった。
今のように携帯電話でさくっと話をつけられる時代ではなかったのである。

「私たちを助けて!!」

そんなことを言われても困るだろうが、こっちも必死である。他の窓口のスタッフに頼んでもみたが結果は同じだった。
それでも「ヘルプミー!」を繰り返していると、男はカウンターに体を乗り出し耳元でささやくようにこういった。

「とりあえず、午後2時になったらまたここに来なさい。」

・・・?どういうことだろう?

ワケのわからないままオフィスを出たのだが、だんだん腹が立ってきた。こうなったのもボスのせいである。
「やっぱり、乗れないよ!!リコンファームをしてくれたんじゃなかったの?」 「なに?!そんな馬鹿な!よし、俺が行って交渉してやる!」

ボス、我々、そしてもう1人背の高いインド人の男性が加わり4人で再びエアランカへ。
ボスが交渉しても状況が変わるわけもなく、「今日はノーシートだ」それ以外言い様はないのだ。

リコンファームは忘れずに そのうちボスはカウンターに乗り出し、男と小さな声で密談を始めた。
そしてオフィスの外で渡された航空券には2日後のフライトが書かれたシールが貼ってあった。

「今日は無理だ。2日後の飛行機なら問題ないからこれに乗りなさい。」
「それじゃ、困るんだってば!明日友達がスリランカに来るの。どうしても今晩インドを出たいのっ。」

我々も必死である。

「あ、そゆこと・・・」と、やっと我々の事情を飲み込んだボス。
「ま、チャイでも飲みながら話そうや・・・」とレストランに向かった。

チャイを4人分頼み、一呼吸おいたところで、ボスはゆっくりと話始めた。 「今日は飛べない。なぜなら72時間前までにリコンファームをしてなかったから。だけど、$100を払えば飛べる。」

「何故?ファーストクラスやビジネスクラスには空きがあるの?」「違う。同じクラスだ。エコノミーだよ。」

訳がわからない。我々が不信感を抱いていることを感じ、ボスと一緒にやってきた背の高い男(ナジールという)が口を開いた

「いいか、ここはインドだ。 インドは君たちの住んでいる国と違ってすごくクレージーな国なんだ。みんなお金のために何でもやる。」

「君らが$.100を航空会社のオフィスの机の下からそっと渡すだろう?すると、今まで「ノーシート」と首を振っていたヤツも、あっさりと「O.K.」ってコンピュータの端末をたたくんだよ。」

「100ドルで君たちの席が確保されるのさ。この国はそういうところなんだよ。」

でもお金を渡したからといって席が空くわけはない。とにかく満席は満席の筈である。
「例えば我々が$100ドル払うことで他の誰かの席がなくなるの?」「違う。そんなことはない。」
訳わからない顔をしていると、その場にあった紙にこう書いた。"VIP CLASS"と。

納得。大いに納得。
日本の新幹線などでも要人が急に移動するときのために席をいくつか確保しておくと聞いたことがある。
つまり緊急に備えて、VIP用に空けてある席があるということなのだ。そのシートを$.100で明け渡してもらえると。
そして、その金は席を用意した係員のポケットに入るってことか。

とはいっても我々にとって、$.100は痛かった。インドは物価が安いと聞いていたので、あまりお金を持ってこなかったのだ。
しかし、背に腹は代えられない。$.100払うしか手だては残されていない。
なんで待ち合わせ場所としてホテルを予約しなかったのかな。私たち。

「ホントに、$100払えば大丈夫なの~?」
「俺を信じろ。大丈夫だ!」

この台詞、この旅の間に、何回聞いただろう??

ちなみにこの賄賂ですが、インドではとても一般的な手段で、数年後には賄賂の額も跳ね上がっていた。
そして、今回は本当に満席だったようですが、あるとき国内線の切符を購入するのなかなか席をだしてくれなかったのに、
搭乗してみたらがらがらだったりしたこともあった。

その後、我々の100ドルを持って、先ほど搭乗した大男がスリランカ航空に交渉に行った。
我々は旅行代理店と同じ建物の地下にある宝石店で待つよう指示された。

数時間もの間怪しい宝石店で待ち続けたが、結果ははい。飛べませんでした。
暇な学生だったし、友人との待ち合わせの約束さえなければなんの問題もなかったんだけども。
今思えば、ほんと旅慣れてないが故の笑い話である。いろんな意味で。