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第5話 この旅は「レズカップルの旅」ということで。

「今日は席を交換しなよ」

さて、昨日は車の助手席にSちゃんが乗っていた。今日は私が前、Sちゃんが後になれという。
別にどうでもいいけど。考えてみると二人後ろに座るのが一番しっくり来るんだけど。ヤダともいいにくかった。

この日はジャイプールでしこたま買い物した後、アグラに向かった。ジャイプールアグラ間もかなりのロングドライブである。

私が助手席に座ると困ったことにパプーは、私の手を握ってくる。
それだけならまだいいが、そのうち私に馴れ馴れしくさわってきたかと思えば、私の手を取り自分の股間に持っていく。
さすがにこれにはびびって手をふりほどいたが、こりないというかやめようとしない。
(びっくりのあまりここで怒れなかったんだよねぇ。)

「なんか手を握って触らせようとするんだけど・・・。」

後部座席にいたSちゃんに言うと、お互い顔を見合わせながら大爆笑になってしまった。

「もしかして、昨日写真撮ったとき胸さわられなかった?」「ええ?やっぱり?」

二人ともやーーーっと気が付いたのである。
だって、日本で初めて会ったタクシーのドライバーがこんなことするってないじゃない?
あり得なくて気が付かなかったんだよ。
インドに来てからというもの、浮かれまくりで危機感ゼロ。


「今日はゼッタイに部屋に入れるのをやめよう」
そして、何故か知らないが今日はパプーの友達との大カレーパーティ。
結構おいしかったので、そこそこの値段のお店のものではないかと思う。
他の観光タクシーのドライバーはいるけど、その雇い主たるお客の姿はない。
このあたりも我々のうかつさが現れている。

パーティーの場所はホテルの一室だが、部屋のドアは常に開け放たれているのが救い。

「やばそうになったら、○まけっ飛ばして逃げよう」

って、男ばっかり10人くらいいるんだから、ほんとに悪者だったら勝てないですよ。
そこは我々の考えすぎだったようで、何事もなく、美味しい料理を頂いて帰れたのでよかったです。
夜中の12時過ぎになり、眠気を押さえながら部屋に戻ろうとした。

「もう寝る。」
「え?後で一緒に呑もうってゆったじゃないか。友達とも約束しちゃったよ。」


そんなの勝手に決めるなよ。日本人ってこういう時、主従関係に慣れてないからなあなあになる。
しかも友達と約束っていうのも、よく考えると危なかったかもしれません。
日本では男女混ざって飲み会なんて普通にあるけど、そういう感覚でいたのだと思う。

ぶつぶつとこぼしながら我々の部屋に入ってきたパプー。
その瞬間、突如「出てけ!!」と命令口調で叫んだ我々。

突然の強い命令口調に訳の分からず立ちつくしすパプー。
そりゃそうだ。さっきまでにずっと愛想笑いしてたんだもん。
そして、もう昨日からの疑惑を洗いざらいぶちまけて文句を言いまくった。でも、ちーっとも納得しない。

「確かに身体を触ったのは悪かった。謝るよ。ごめん。」
「でも、昼間は俺のおかげで楽しんだじゃないか。カレーも旨かっただろ?怒るなよ。」


「じゃあ、昼間のガイドは認めてもいいよ。でも、昨日のことは許せない。
 それにホントにもう眠いンだってば。悪いけどでていってくれる?」


しかし、彼はあくまでも「自分はあれだけのことをしてやったんだから当然感謝されるべきだ」と言う考えを崩さない。でも日本人からするとこういうのはものすごく不快だ。
今思えばインド人の自己主張(やいいわけ)はこういうものだってわかるけど、
あんたも外人相手のサービス業なのだからもうちょっと日本人のこと勉強したら?
確かに我々も遅きに失したところはあるが、怒られてしかるべきなんだからここで逆ギレするなよ。

どうしても帰らず1時間だけ呑むのにつきあう事になってしまい、クラーク・ゲーブルと四人で酒をちびちび。当然、会話は弾まない。
そして、1時間後、空気の重さに耐えきれずとっとと退散したクラークゲーブルに対し、パプーはまた粘って「部屋をシェアしよう」と言い始めた。

蚊取り線香に懲りたのだろう。今晩、ぱぷーはちゃーんと自分の部屋を取っているのを知っている。
昼間、自慢げに見せびらかしていたからだ。

「何いってんの?自分の部屋で寝れば~?」

つれない返事にパプーはこんなことを言い出した。

「この部屋の代金は俺が出してやる。だからおまえ(友人)はここで1人で寝ろ。
 彼女(私)は俺の部屋に連れて行くけどいいか?」


はぁぁ???なんで?私がパプーの部屋で寝るんだっ。
というか、もしや朝の「プロミス」はそういう話だったのか。
聞き取れなかっただけだったが、それが曖昧な態度になってしまっていた。

勿論、そんなことには応じるわけはなく、ここで私とSちゃんはレズカップルということになり、
彼女が「あたしの彼女よ!」って怒ってくれたことでしぶしぶ引いていった。
「うそだろ?」とまじめに驚いていた彼の表情はわすれられません。

しかし、パプーが下品な親父で運が良かったと思う。
ヒゲもじゃで毛深くて小太りで。人前で豪快なゲップをしたり、とにかく「ゼッタイにいや!」
断言できるサイテーのヤツだったからこそ、かたくなに拒否できた気がする。
勿論、常識的な友達と一緒だったのも幸い。

会って間もない人とは、1歩、いやそれ以上距離を置く。ましてや、宗教などの理由で抑圧されている人には、それなりの態度で接すること。
日本の感覚で接した我々も悪いんだから。
私はどちらかというと男勝りな方ですが、そんなことは関係ない。今は単なる日本人女でしかない。

当時のインドの人は、結婚するまで女の人と一緒に歩かないなんて人がまだまだ多かった。
そして、結婚も家の決めた相手とお見合いでっていう場合がほとんど。
知識として知ってはいたが、本当にそういう人を目の当たりにしてやっと自覚した。

そういややたらといろんなところで「酒を飲みましょう」と誘われたんだよね。
そういうことだったのか。「飲み会誘われちゃった。」って気分で応じたらだめってことです。

その後一人旅を繰り返すようになったけど、慎重になりすぎるくらい慎重な旅をするようになりました。この経験があったからこそです。

ちなみに今日の昼間、パプーに次のようなことを言われていた。

「俺がガイドとしてどんなに優秀か、日本人に推薦する文章を書いてくれ。
 ページの上半分に日本語で、下半分に俺にも解るように英語で。」


日本語と英語。全然中身の違う文章を書いたことは言うまでもない。
いっぱい書きまくったので喜んでたけど、ほとんどあんたの悪口だよ。
あのノートを目にした日本人はいるのかな~。