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第11話 Mr.A 行方不明につき [コロンボ]

スリランカは相変わらず蒸し暑かった。北インドのカラっとした天気からうって変わってこの陽気。
今はまだ朝早いからどうって事ないが、昼間のことを考えるとうんざりしてくる。
空港では相変わらず政府観光局の職員がつきまとうが、こちらも一応入国は2回目でローカルバスが走っていることも知っている。
Aくんとは国際電話で待ち合わせ場所をゲストハウス「Lake Lodge」と約束したし、さっさと無視して歩いた。
今思えばこれが、これからのトラブルのモトだった。

うま Lake Lodgeにつくと、フロントのおじさんは我々のことを憶えていてくれたようだ。

「私たちの友達がここに泊まっていると思うんだけど...。」

そう告げると我々に一枚の紙を差し出した。

"コロンボの観光をしてみたくなったのでちょっと出かけてきます。ここには三時頃戻る予定です。Mr. A."

実は我々は、今日中にスリランカの島の中心であるキャンディに向かおうと勝手に計画していた。
日本では日立製作所のCMでおなじみの、あの大きな木がスリランカのキャンディという町にある。
それを見に行こうというくだらない理由から思い立ったスリランカ旅行だったりもするし。(※ 実際の撮影に使われたのはハワイの木です。)
でもこの状況じゃ無理だ。今晩はここに宿泊して明日キャンディに向かうことにする。

この前と同じ部屋に通されしばしくつろいでいると、宿の従業員が電話を持ってやってきた。Aくんかな。

「誰だかも、なんなのかもよく分からないけど、これからここに来るって言ってる。」

え?一体何者!?しばらくして2人の男がやってきた。その男はAくんから伝言を預かってきたと一枚のメモを差し出した。

"やっぱりシーギリヤとかも見たくなってきたのでそっちの方に行って来ます。
今晩はキャンディのマクロイドインと言うホテルに泊まります。
あなたたちの部屋についても○×さん(手紙を持ってきた人)に頼んであります。
とりあえずSちゃんは自分の彼女と言うことにしてあるのでその辺はよろしく。 Mr.A"


なんと彼は今、スリランカの遺跡見学をしているらしい。そして今日はキャンディに泊まるとかいう。

おっちゃん達は、空港でインドから到着する我々を待っていたらしい。
我々の名前を書いたボードを持って。
でもそんなもの見てるわけない。こっちは「早くレイクロッジにいかなきゃー」って必死だったんだもの。

「で、君たちはどうするんだ?」

全く予想もしていなかった展開に気が動転していた。

「じゃあ、これからすぐにチェックアウトしてキャンディに向かうよ」
「解った。彼にはそう伝えておく。電車?それともバスで来るのか?」
「うーん。電車かな」


男たちが出て行き、大急ぎで荷物をまとめていると、心配した宿の人が部屋へやってきた。

「今チェックインしたばかりなのにチェックアウトするなんてどういうことだ?」

気が利くのか何なのか、さっきの男はフロントに伝言して帰ったらしい。

「今、友達はキャンディにいるらしいの。だから移動しようかと思って。」
「事情はわかったけど、今日はここに泊まりなよ。今から行ったって着くのは夜だし、宿代損なだけだ。
 明日の朝一番の電車で行けばいいじゃないか。」


確かにおっちゃんの言うことは一理ある。どうせ今日向かっても、行って寝るだけだ。

「じゃあ、そうする。」

このとき既に、「Aくんに伝えておくから」と言って立ち去った男のことは全く頭になかった。


朝一に宿の従業員をたたき起こしてチェックアウトし、キャンディへ向かった。

スリランカは小さな島国なこともあるからか、列車はあまり発達していない。バスの方が本数が多くて断然便利。だけど、あまり混んでいない路線なら歩き回れる分だけ列車の方が楽なこともあるが、ベンチみたいな固い座席なことと、車両がうるさいので長時間はキツイかな~。

街や宿の調度品などを見ている限りでは、生活水準はインドよりかなり上に見えるのに列車はインドの方が上である。インドは広大な上に貧富の差が大きいから列車もクラス分けが細かいし、我々外国人はアッパークラスに乗らせて頂いているのだから当たり前のことなのだが。

町のスリランカ人はインド人を馬鹿にするような発言や顔をしていたが(「インドを旅行してきた」というと、「はんっ」って鼻で笑った様な仕草をする人がいた)、列車は断然インドが上だな。

そして、列車が五月蠅いのは、ただ走行している音だけではなかった。
ナッツ、果物、スナックをかごに入れて売りにくるおばさん、へたくそな素人音楽家、壁をドラムに、イスの縁を木琴代わりに使いリズムを取りながら歌いまくる若者!朝もはよからみな元気。
朝5時発の列車だ。寝起きで機嫌が悪い私は、うるさーーーーーい!と心の中で叫んでいた。

もうっ。

キャンディ駅に到着したのは、午前9時過ぎである。
「Lake Logde」で紹介してもらった宿「IBY BANK」(銀行ではない)に連絡をとり迎えに来てもらい、車の中で運転手にマクロイドインのことを尋ねた。
キャンディの宿は湖を中心にあちこちに散らばっているのだが、この二つの宿はたまたま近くだったのであっさりと見つかった。
荷物を置くとすぐにとにかくそっこーでマクロイドインに向かった。

マクロイドインに着くと、まずは運転手が様子を見に行き、我々は言われるがまま車内で待機していた。
5分ほどが経過し、宿の入り口から1人の男が手招きしている。一体、こいつ誰?
男に連れられて、宿のテラスにでると、テラスのベンチにだるそうに腰掛けている男がいた。

あ あ あ あ あ あ あ あ あ !!!!

Aくんはのんきに本なんか読んでいる。
その様子から、すっかり我々と待ち合わせはあきらめているように見えた。
そもそも海外なんだし、待ち合わせる方法が間違っていたんだよ。ここは日本じゃ、渋谷じゃないんだから・・・。

昨日、ゲストハウスに我々を訪ねた男は、きちんと彼に伝言をしたらしい。

「君の彼女は夕方の電車でキャンディにくるよ。たぶん6時半ゴロに着く列車のはずだ」

Aくんは当然、6時半前に駅に迎えに行く。列車は着いても我々は降りてこない。
次の列車にもその次の列車にも乗ってこない。

「もしかして、バスにしたのでは?」

バスターミナルに行ってもやはりこない。
こうやって駅とバスターミナルを延々何度も往復していたらしい。

スリランカの列車は本数も少ない。バスだって日本のように夜中まで走っていない。終電、終バスまで待ったけれども、我々は乗っていなかった。

「昨日、彼は大変だったんだ。いくら待っても君たちがこないものだから、ひどく心配しちゃって食欲がなくなっちゃったんだよ。晩御飯も食べずにビールばかり飲んでいたんだよ」

こういうのはAくんが雇ったドライバー兼ガイドくん。
ここまではいいのだが、彼らの私に対する態度が「恋人同士を邪魔するおじゃまむし」なのがどうもしっくりこない。

昨日、コロンボの宿に伝言を伝えに来た男なんて、

「AくんはSちゃんと寝るためにダブルルームを予約しているんだ。君のためにシングルルームを頼んでやるからそこに寝ろ!」

とまで言う。なんだそりゃ!

※ ちなみにきっぱりと言い切りますが、二人はつきあってません!・・・この時点では。

この木何の木 我々は3人そろって彼の運転手(兼ガイド)の車でペラデニヤ植物園へ行った。
思えば、この旅行はガイドブックをめくって、「この木何の木気になる木見たいよねぇ~」という安易な乗りから始まったのだ。この木何の木は、この植物園にある。
(木の正式な名前はジャワビンローだが、ずっとこの木何の木と言っていた)
しかし、3人が3人とも初めて足を踏み入れた海外自由旅行の楽しさに夢中になっており、自分らの旅を話したくてしょうがない。とりあえず、木は見たし、写真も撮ったけど、公園もろくに回らず、食事もせずにずーーっとずーーっとおしゃべりをしまくっていた。

気になる木 成田からコロンボまで、日本からのフライトが9時間。2日間も待ちぼうけをくらい、一緒に遊んだのはたったの4時間。
Aくんは、「列車に乗りたいから車はここまででいい」とガイドを断り、あのガタゴトやかましい列車に乗って、コロンボへと戻っていった。
コロンボの便は深夜便なので、このまま日本へ帰る。2泊4日という強行な日程の旅。
会えた時間は少なかったのだが、とりあえずはめでたしめでたし?