アーユルヴェーダで禿を治そう!象牙の灰から作った薬が効く。
初インドで泊まった宿。
我々が乗ったのは勿論、特急で、バラナシからデリーまでの間、列車は数時間に1回停車する程度なのだが、 時々、大きな駅では停車時間が多めに取られていた。
そういう時って日本だと外に弁当を買いに出たりするでしょう?それはインドでも同じようだ。
外の空気を吸いに行く者、買い出しに行く者、タバコをのむ者。それぞれが長い列車旅行の気晴らしに外にどやどやと出て行く。
(ちなみにそれは男性に限ったことです。女性は男性に買い物に行かせてました。)
我々はちょうど車両のはじっこの席だったので、列車が停車する度に外に出て行く人々を見送っていた。
「まーた、外に出るのね。タバコかしら?」なんて言っているうちはよかった。
タバコを吸いに出ている人がいるのも確かだから。何人かの男を見送っていくうち、とある男性が目に付いた母は突然こんなことを言い出した。
「ねぇ。インドの人って頭の毛が薄い人少なくない?みんな髪の毛ふさふさよね。」
ご名答!そう。確かにその通りなのだ。インドで禿頭ってあまり見かけない。
そして、たった今、目の前を通ったにいちゃんはたまたま額がとっても広いというか、額が頭のてっぺんまであるというか、 要は頭頂部の髪の毛がなく、サムライの様な頭をしている人だった。
こういう人って、インドではあまり見ないんですよ。
「わかるわかる。実は私も前から感じてた。でも、そーゆーことって面と向かって聞けないじゃん。」
「私もずっと思ってたのよ。きっとアデ○ンスは、こっちの食べ物とか生活習慣を研究してるわ。」
「逆にトルコとかってすごい禿と出っ腹が多いというし、やっぱ、油とか肉とかを多く取るからだめなんじゃないの? こっちってほらベジタリアン多いじゃない?それにスパイス類も植物だし・・・」
髪の毛は女性ホルモンだの、中東や欧米の人は胸毛が濃いのに限って髪は薄かったりするだの、
目の前に座った父をさしおいて今まで心にためていた疑問が堰を切ったように出てくる。
だってこういうことって、触れたくても触れられないじゃないですか。女性にデブって言えないのと一緒で。(うちの父の髪も薄い。)
そして、その後も長い長い列車の旅が続いたが、そのうちに小腹がすき始めた私は次の停車駅に到着するや否や列車の出入り口まで走り出た。
日本の様に発車時間を知らせるアナウンスがあるわけもないインドで、外に出るのは少し不安。
だから、列車の中から大きな籠を抱えて歩く1人の物売りを呼び止めた。
「すいません。それ一つください」
彼の籠には、10センチ四方の正方形の紙箱が山盛りになっていた。
よーく見ると、それぞれの箱からは油がじとっとしみ出していて、中身は揚げ物だと推測される。
今時の日本だとマクドナルドのポテトだって揚げたてで、紙に油がしみてるなんて状況はあり得ない。
揚げてからだいぶん時間が経ってるなぁ。なんて思ってはみたが、駅弁もとい駅スナックなのでしょうがない。
腹は減ってる。そして、私はインドでおなかを壊した経験はない!
中身がなんであろうと、チャレンジ精神で挑むべし。
特に中身の確認もせず、お金を払おうとしたその瞬間。突然、背後から誰かに声をかけられた。
「それ、食べ物ですよ。」(←日本語)
驚いて振り返った。更に振り返って二度びっくり。だって、インドでは珍しい、例の禿頭のおにーちゃんだったんだもの。
(しかもお肌つるつる、すべすべで・・・ハンサムな若禿。)
別にさっき大声でしゃべっていたワケじゃないんで、聞かれてないとは思うのだが・・・。
「しっ、知ってます。食べ物がほしかったんです。」
「ああ、そうなの」と、彼はなに食わぬ顔をして列車の外にでるとぷかーーっとタバコをふかし始めた。
「ちょっとー、あのおにーさん日本語ぺらぺらだよ~。」
激しく動揺した(笑)インドの列車であそこまで流ちょうな日本語を話す人に出会うとは思わなかった。
東アジアでは珍しくないので発言には気をつけますけど、あせったなぁ。
ちなみに、帰国後に読んだ本※によると、インド伝統医療のアーユルヴェーダに禿の特効薬があるらしい。
「象牙の灰」で作られているそうで、それを頭に塗ると髪の毛が生えてくるんだそうである。
その薬は他に比べると割高のようですし、象牙の希少価値もさることながら、結構需要もあるのかと・・・。
象牙の輸入は禁止でも、瓶入りでさらに粉末になったらOKだったりするんですかねぇ。
それ以前に別の薬と間違えられる可能性も大ですが。・・・持ち帰ってみます?
※ ご参考まで 「私の中のインド」・タゴール瑛子・筑摩書房、「インド不思議研究」・山田和・平凡社