バラナシで素敵なリキシャワラとの出会いと旧市街観光と。
マットレス抜いてあった。
一人だから問題ないけど。
今回は安宿ではなく駅北部の中級ホテルに宿泊する。
こういうところは静かに滞在できる代わりに繁華街から離れており、観光には不便きわまりない。
タクシーの運転手が「この後、このタクシーで観光地に連れて行ってやる!」としつこかったのだが、
アグラですっかりやる気のなくなった我らは、「観光なんていかない!」と提案を突っぱねた。
しかし、バラナシはやはりデリーなどに比べると田舎の町。同じ値段を払う場合、デリーの方がずっとましな宿に当たる気がする。
部屋はすごく広かったが、バスタブはあっても穴が開いたまま放置してあるし、替えてもらった部屋はペンキ塗り立てみたいなにおいが充満しているし、 同行の身内はゆっくりと休めないことに切れてしまった。
正直、私はインドの観光地観光地している街はあまり好きではない。だけど、「初めての人はとりあえず定番のところに連れて行くべきだ。」と言われたのもあり、デリー、ジャイプール、アグラ、バラナシに行程をとってみたのだけど、失敗だったかも。
やるならやるで全て5☆ホテルにするとか、1都市の滞在時間を長くするとか、とことんリッチに行くべきだった。
ジャイプールでは通りすがりの見ず知らずのにーちゃんに「タバコちょうだい」って言われてびびった位ですんだけど、アグラの客引きの蛇の様なしつこさは凄まじいものがあるし、寝台列車で熟睡できずにいたのに、バラナシでゆっくり寝たくても異臭で頭が痛くて寝られない。
部屋を変えたくても、もう他の部屋は空いてない。 結局、割れたバスタブをガムテープで止めてある、広さだけは豪華な部屋に戻ったが、今度は停電。
とことんアンラッキーだ。
ガンガー近くの雑貨屋
中・高級ホテルがある新市街からガンガーまでは、道のりにして5、6キロほどだろうか。
父の疲れっぷりを見る限り、インドって意外と体力消耗するのかも。さすがに歩いて行くのは無理なのでリキシャに乗ることにした。
ホテルの前に待機しているリキシャに値段交渉すると、意外と高くない。
彼はホテルの専属リキシャで(ほんとかどうかは疑問)、料金は定額だとのこと。
新市街、カントンメント駅向こうから、ガンジス川のガートまで、片道50ルピー、往復で100ルピーだという。
翌日、流しのリキシャを捕まえたときも、ヒンディ語ができる知り合いが交渉してくれても50ルピーまでしか下がらず。
つまり、自称ホテルの専属リキシャワラは、最初から最低料金を提示したということだ。
インドでこういう人に出会うと光り輝いて見える。
お客からぼったくらないことを条件にホテルの敷地で客待ちをすることを許されているのかも知れません。
観光客の場合、長距離移動の可能性も高く、町で一般人を捕まえるより効率が良いのかも。
そのリキシャワラは、有名なダシャシュワメードガートではなく、十数メートル上流のVIJAYAガートに連れて行ってくれた。
変な客引きもおらず、ほんの少しだけボートマンがいるとても静かなガートだ。
「ボートに乗らないの?」という問いかけに首を振り、ただ静かに川を眺め、ホテルに戻った。
「わざわざここまで来てボートに乗らないなんて・・・変な外人!」って顔をしてたな。いいじゃん、別に。
翌朝、今度はとりあえず早起きして朝日が登るのを眺めに行った。一応、ガンガーと言えば、これでしょ。
相変わらず、ボートには乗らない我々を不審そうな顔で見るリキシャワラ。
「せっかく、ガンジス川にいるのになんで?」と言われましても、乗りたくないっていうからしょうがないのだよ。
「でも、せっかく来たんでしょ?ボートは1時間○○ルピーだよ」
そう、言われてもな。安かろうが乗らないっていうんだもん。
しかし、リキシャワラの君が何故にそこまでこだわるのか? ボートの紹介でバックマージンが入るわけでもなさそうだし・・・と不思議だった。
「・・・ボートに乗らないなら、もうホテルに帰る?何時までここにいる?」
この台詞を聞いた瞬間、ぴーんと来た。なーんだ、そーゆーことか。
・・・君は、まだここを離れたくないんだね?
「しばらく・・・そうだな、30分から1時間はここに座ってるよ。1時間後にホテルまで連れて行ってくれる?」
「わかった。1時間後だね。1時間後にホテルまで連れてくよ。約束する。」
彼は、にっこりと満面の笑みを浮かべながらそう言うと、Tシャツを脱ぎ捨て、どぼーーんとガンジス川に飛び込んだ。
そして、ゆっくりと川を歩いてゆき、昇る朝日を見つめながら静かに沐浴を始めた。
彼は、見た目はその辺にいる「今時風」のインド人にーちゃんだ。
正直にいうと、その見た目とのギャップにほんのすこーしだけショックを受けた。
インドも日本と同じで、経済の発展や教育の普及に伴って、だんだんと状況が変わっているから。
例えば、「ガンジス川?汚いよ」っていうヒンドゥ教徒もいる。
そして、そういう奴に限って、外国人をからかったり騙したりするので、旅の間はそういうのばっかりに関わっていたのかもしれません。
ガンジス川のほとりで静かに祈る彼の姿。あの時の彼の姿は、ほんとに美しかったと思う。
ダシャシュワメードガート
「誰でも行くインド旅行の定番だし、ガートで沐浴見るくらいでいいかな~、身内だし。」と安易に考えていたのだが、思いがけず、デリーで会ったMさんがバラナシの案内を買って出てくれた
「ちょうどバラナシに用事があるんです。バラナシは庭みたいなモノですから案内しますよ。」
遠慮なく、彼の心遣いに甘えさせて貰うことにした。
Mさんは、たまたま我々と全く同じ日にバラナシ入りすることになっていた。ただし、我々がアグラから来るのに対し、彼はカルカッタから来るという。
お互いの宿泊予定の連絡先を交換し、万一のために彼のバラナシ在住の友人宅の連絡先を書き留めた。
そして、昨日。我々の宿泊しているホテルに彼からの連絡は来なかった。こちらから連絡するも彼の宿泊先にも彼の友人宅にもまだ現れていないと言う。
「インド旅行だし。予定通りに進むとは考えられないしな~。」
少し残念ではあったが、特に気にすることもなかった。
「連絡が遅れてすみません。カルカッタからの列車が遅れちゃって、今着いたんです」
彼は、昨日のうちに着くはずのカルカッタ発の寝台列車に乗っていた。
しかし、その列車が投石による列車妨害で遅れに遅れ、着いたのは翌日の朝!車内に半日以上も長く閉じこめられたという。
疲れてるだろうに「大丈夫です。ゴードゥーリヤーの交差点って知ってます?そこで○時に会いましょう」と、快く 案内役を引き受けてくださった。
再びオートリクシャに乗り、バラナシ旧市街に向かう。
オートリクシャは、ゴートゥーリヤの交差点の手前で止まると、「ゴートゥーリヤはあっちだから」と指さした。 この先は、オートリクシャは進入禁止だからだ。
交差点までたどり着くと、まだ来ぬM氏を3人で静かに待った。
「どこまで行くの?ガンガーはあっちだよ」とお節介を焼くインド人を軽くあしらうと、 通りの向こうから見覚えのある背の高い日本人が歩いてきた。暑がりなのか玉のような汗が額を伝って流れ落ちているのがわかる。
時々きょろきょろと周りを見渡しているところを見ると、まだ、私には気が付いてないな。
「Mさん。ここです。わざわざありがとうございます」
こうして、デリー以来、ほぼ3週間ぶりにMさんと再会した。
Mさんの後について、バラナシの路地を歩く。
今日まで大きな都市の観光地ばかりを歩いていた父と母は、そのごみごみとした様子に面食らっていた。
バラナシの旧市街は、インド各地から巡礼に来るヒンドゥ教徒やそれを見物に来る外国人がひしめき合っていて、落ち着いて歩いていられない。
迷路のように入り組んだ細い路地を進み行くのを阻むのは、巡礼者向け、観光客向けの露天やそれに群がる人。
そして、そんな狭い路地に、どかっと座り込んで通せんぼをする聖なる牛だ。
しかも、足下を見れば、緑色を帯びたべたーーっとした牛の糞がそこここに張り付いている。
田舎で牛を飼っていた母などこんなの見慣れているだろうに。それでも今の生活に慣れきっている二人の目には、汚い物にしか写らなかったのかもしれない。
ガンガーからバラナシの町を望む
Mさんの後を続き、ヴィシュワナート寺院に着くと、入り口に立っていた門番は我々を不審な目で睨んだ。
「ここは、ヒンドゥ教徒以外は立ち入り禁止だ」
「やっぱ、そうだよな~」と思いつつちらちらと様子を伺っていると、驚いたことにMさんは門番と交渉を始めた。
「私はヒンドゥ教徒です。ほら腕につけているこれがヒンドゥ教徒の印。だから中に入らせてくれ」とかなんとか言ってるくさい。ヒンドゥ語の会話だから、全くわからないのだが。
流ちょうにヒンディー語を操る彼に門番は混乱している。
しかし、Mさん。あなたの後ろに立っている私は真っ赤なシャルワールカミーズを着てはいるが、どう考えても日本人顔。
そして、私の背後にいるうちの身内は、どう考えても、おのぼりさんの日本人観光客なのですが・・・。
「だめだ、だめだ!」と拒否する門番。それに食い下がるMさん。
最終的に門番もめんどくさくなったのか、「俺には判断できない。向こうでヒンドゥ教徒の証明書を貰ってくればいれてやる」とかなんとか言い出したらしい。でも、そんなもの、我々に出して貰えるわけないもんね・・・。
結局、我々は、この寺院に入ることを許されなかった。
「前は簡単にいれてくれたんですよ。結構インド人なんていい加減ですから・・・」
いいんですよ。気持ちだけでとても有り難いです。
「せめて、写真くらいはいいだろ?」と門番に問えば、無言で「NO PHOTO!」と書かれた看板を指す。いえ、本当にいいんですからっ。
その後、門から少し離れたところで、すかさず「ここから写真撮っちゃえばいいですよ」というMさん。
しかし、門番の方もそんなことはお見通しで、こちらの動向をじーーっと探っていた。「写真とるな~!」と遠くから叫ぶ。 なんつーか、毎日観光客と攻防を繰り広げているんでしょうな~。
いちいち、恐縮していたMさんですが、本当~にいいんですよ。我々は町をぐるっと歩けただけでも満足なんですから。
その後、渡し船から町を望むこともできたし。ボートにも乗れたってことで。
こんな感じで、バラナシで過ごしたのでした。