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フンザで風の谷のナウシカごっこ。オタクぱわーすごい。

ギルギットの親子
山の上では顔立ちが変わってくる。
モンゴロイドも混ざってそう。
突然ですが、ギルギットでダウンしました。

ギルギットに着いたとき、いつものように町を徒歩で一周してみた。
思い起こせば、あのときやたらとだるだるだった。足が重かった。食事が旨いと評判の宿で食事がのどを通らなかった。
夜の冷え込みに、シャワーのぬるま湯に震え上がり、気がつけばベッドに倒れ込んでいた。

今回は国境越えがしてみたくて無理矢理パキスタンに来ているが、1週間後にインドで待ち合わせをしている。
おとなしく山の下にいればなんのことはないのだけども、パキスタンはどちらかというと山の上の方が評判が高いので、 山の上の町まで来てみたかったのである。
パキスタンの道がキレイに整備されており、2日もあれば1000キロを超える距離をもブッちぎれることを身をもって証明したばかりだが、そのお陰でぶっ倒れてりゃ世話ないっちゅーに。

「ピンディまでの飛行機のチケットってお願いできます?ついでにジープチャーターするといくらかなぁ。」

私は時間をお金で買うことに決めた。


ところで、私、日本人宿といわれる場所に、まるっきり1人で足を踏み入れたのは今回が初めてだった。
なんていうか、宿も独特だけど、集まる人間も独特。
長期旅行者と話していると、旅の目的や時間の流れが全く違って、なんかこう、感覚のずれにとまどっていた。

「カリマバードはどう?どこかお勧めってある?」
「えーとね、オールドフンザはまあまあだけどメシがまずい。コシオサンはメシがすっげー美味いけど、
 あそこ今、ベッドに虫が出るんだよね。ハイダーは女の子はイマイチ。宿の従業員がうざいって。」


短期で効率よく、しかもそこそこ快適に旅をしたいと考える私と、長くのんびりと旅を続けたい人では求めているものが違う。
宿一つとっても、彼らが選ぶのがドミトリーが主体の宿。
安くて、話し相手がいて、ご飯が美味しくて。それだけ揃ってれば充分ということだ。

フンザから望んだ山 そして、こういった旅行者の多くはくそ暑い平地の気温をやり過ごした快適さからか、「ホントはフンザに来るつもりはなかったんだけど・・・。」といいながら、ビザの延長手続きに出かけていく。
山の上の生活に退屈するまでの間、さしたる目的もなく、ギルギット、カリマバード、パスーなど、周辺の村をローカルバスで何度も行き来し、 時たまクルタパジャマーにチャッパルという超軽装のまま、氷河トレッキングをしている。

そのひょうひょうとした姿を見ていると、あくせく動き回ったあげくに熱まで出した私はバカみたいだ。

長期旅行者といってもいろいろで、自転車で世界一周している兄ちゃんや日本の生活に疲れて傷心旅行に来ていたおねーさんもいた。 目的がはっきりしている人は自分のことをよく話すので会話は割と成立した。
自転車で世界一周と聞くとなんだか無条件でかっこよく思えたものだけど、旅に必要な荷物がすべてくくりつけられた姿は自転車と言うより大型バイクで、 「あの自転車すげーよ。よくあんな重たいので山登れるよな~。」とみんな感心していた。


ところで、今回の旅ではある意味、ここでしか出会えない人物に出会った。

坊主頭のナウシカである。

カラコルムハイウェイは、ギルギットから先、カリマバード、パスー、スストとフンジャラーブ峠を越えて中国に至る。
カリマバードの辺りはいわゆる「フンザ」の中心で、日本が誇る有名アニメーション、「風の谷のナウシカ」のモデルになったといわれる場所。

ゆっくりと流れる氷河がの溶けた冷たい川、緑に包まれた眼下の村、目の前にそびえ立つラカポシ、ディランなどの峰峰。峡谷の斜面の所々に建つおもちゃのような家。
春には一面杏の花が咲き乱れ、その美しい景観を一目見ようと世界中から観光客が訪れる美しいところだ。

ちなみにこの年は異常気象の為、杏の開花の時期が大幅にずれてしまい、観光客が肩すかしをくらったらしい。
ギルギットにもインターネットはないワケじゃないので、出かける前に様子を聞いてみるのも手かもしれませんね。

フンザから望んだ山 話は戻って、フンザは「風の谷のナウシカ」のモデルになった土地である。

いわれてみれば確かに風がひゅーーーっと吹き抜けてゆく谷を見おろしていると、そこに大量のオームの姿、オームの触手がわさわさとナウシカを取り囲む様が思い浮かばないことはない。 (宮崎アニメが特に好きでもないので、こういう特殊なシチュエーションしか記憶にない。)

町の人の服装も似ている。アニメにこんな服装が使われていた気がする。
またある町で出会った一人の女の子は(写真左)、私とバチッと目が合うと、突然木によじ登って木の実をとってきて、無言で差し出した。
口の中ではじけた実はほろ苦く、「コレはチコの実!」とナウシカの世界に見立てて1人楽しんでいた。
あらゆる雰囲気がナウシカっぽくて、なまじ日本のアニメなだけににわかファンになる。

こんなパキスタンの山奥ににわかファンがいるなら、当然、本物のオタクがいてもおかしくない。
そう、「風の谷のナウシカファンご一行様」はツーリストコテージに宿泊していた。

彼らがギルギットに来てまずしたことは、衣装作りである。

スカイブルーの布地を1人数メーター購入。白と赤の布は各少々といったところか?
それらをぎゅっと握りしめ、次に向かったのは洋品店。
日本から大事に運んだナウシカのイラストを元に、彼女のトレードマークである胸元の模様まで
徹底的に指導し、ワンピースを4枚作り上げた。

勿論作って満足ってワケではない。洋服は着るモノだ。着なくちゃ意味がないのだ。
例え持ち主がいがぐり頭の男の子だったとしても、作ったからには着るのが当然である。

ご一行様(女性2人、男性2人の4人グループ)は、鞄に衣装を忍ばせ、カリマバード行きのバスに乗った。
やはり、ナウシカの聖地はカリマバードなのである。

想像してほしい。カリマバードで、緑がいっぱいの、風が吹き抜けるさわやかな山間の村で、いがぐり頭の男2人とかわいらしい女の子2人 (実は女の子はかわいかったらしい)が、胸に白地のエンブレムの入った、スカイブルーのワンピースを着て踊ってる姿を。
「らんらんらららんらんらん・・・」とやっただろうな~。

日本じゃなかなか見られない光景だよな。4人のナウシカ!しかも半分男!
コスプレイベントだったら絶対キャラわけるでしょ。(みんなナウシカだったら変だし。)

やってる本人も一度やって満足したのか、ギルギットで出会った私の前ではそれを再現してはくれなかった。

「でもさ~、この衣装、ちょっとこの胸のマークが大きすぎるんだよね~。」
「着て見せてよ~。」
「やだ。俺が着ると気持ち悪いんですよ。」

なんだ、自分でわかってたのか(笑)

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