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知人から預かった荷物がもめ事の原因。ドラッグ?だって本だよ。


バラナシから乗った寝台列車は3時間遅れでデリーに着いた。
普段なら列車を降りるとまっすぐメインバザールの安宿に落ち着くが、今回はちょっとだけ思いっきり贅沢する。
デリーで一番豪華なホテル、タージマハルホテルに宿泊するのだ。

「大名旅行にしてあげるよ」と大見得切って両親をインド旅行に連れ出した私だが、 列車の切符を買いに行けば、「2tierじゃなくて、3tierスリーパーでいいか。エアコンはエアコンなんだし」と勝手にランクを一つ下げる。
車の車種を選択すれば、「ランクルとかのが楽かもしんないけど・・・エアコンついてる車だったら同じだろ」と。
どうもいちいち考え方がみみっちくなっていけなかった。
だから、「大名旅行なんかじゃないじゃないか。」と痛いところを突かれたりしていたが、私もやるときはやる。
最後はばばんと5☆。自分のお金で泊まるの初めてだ。(以前、フライトキャンセルで航空会社持ちで泊まったことはある。)

意気込みだけは立派な私だったのだが、ホテルのロビーに一歩入っただけであまりの豪華さに尻込み。
3階分くらいある吹き抜け。適度な感覚で並べられたふかふかのソファ。金ぴかのエレベーター。
何もかもぴっかぴかの調度品に清潔でつるつるの大理石の床。そして、それ・・・噴水?外の世界とあまりに違いすぎ。

ただでさえ浮き足立っているのにレセプションの女性は流ちょうなクイーンズイングリッシュ。話が全く聞き取れん。
インドリッシュには慣れたのに。しかも、チェックイン手続きを部屋でやったの初めてです。私。

「チップ渡さなきゃ。あ、でも、細かいお札ない~。」

おどおどしているうちにボーイは立ち去ってしまうし、ウェルカムドリンクは思わず「いっ、いりません!」と断ってしまったし、やっぱりあたしには欧米人の様にバケーションをゆったり楽しむのは・・・無理だ。

高級ホテルに泊まり、高級ショッピング街をぶらつき、有名レストランで無理矢理食事と、最後は背伸びな一夜となった。

翌日の日曜日、ホテルを12時にチェックアウトすると、帰国便の飛ぶ21時まで暇をもてあましていた。

インドの民芸品でも紅茶でもインド土産を物色できれば良いのだが、めぼしい店はみんな日曜はお休み。

暇でしょうがなかったので「迎えの車と一緒に持っていく。」と言われていた荷物を自分で取りにいった。
荷物というのは、今回の旅の途中でお世話になったMさんの物である。

数年のインド滞在を終え日本に帰国しようとしていたMさんは、インドで増えてしまった自分の所持品をどう持ち帰ろうか頭をかかえていたという。
「船便で送れば?」と思うところだが、船便は時間もかかる上、事故で着かないことがままある。

「本なんです。飛行機で運んで成田から自宅に送って頂くだけで構いません。持ち帰って頂けませんか?」

彼は以前、船便の事故で大事な書籍をなくされた経験があり、どうしても飛行機で持ち帰りたいという。
ほとんどの本は友人に託したのだが、あと鞄一つ分だけどうしても目処が立たないということだった。

困った時はお互い様。私は、「別にいいですよ。そのくらい。」と何も考えずにMさんの荷物を引き受けた。
だって、日本に着いたら空港から着払いの宅配便で送ればいいって話だし。
ここで改めて付け加えるとMさんはデリーで初めてお会いした。知人の知人であり、その知人がすごく信頼している人。
そして、見た目も会話の雰囲気からも明らかに善人で、警戒する要素は特になかった。

彼は私がインドを回っている間にデリーの家を引き払うそうで、だから今回の旅を手配してもらったメインバザールの旅行代理店に荷物を一時預かってもらっていたのだ。

メインバザールに着くと、「こんにちは~。Kさんいますか?」といつもの調子で声をかける。
いつも愛想の良い彼はなぜかこのときものすごく無愛想。この人、黙ってるとすごい怖い顔なんだよね。

「何しに来たの?」
「え?暇だったから荷物を自分で取りに来たんだけど・・・。」

刺すような鋭い目線。そして、なに考えてんだか・・・とでも言いたげに顔を左右に振ると、ため息を一つ。

「何で来たの?ちゃんとホテルに持っていくって言ったでしょ?聞いてなかったの?」

いやそうだけど、暇だし、取りに来たからといって何が悪いの?突然、怒り出す意味がわからない。
沈黙。そして、こっちが何か言おうとするとへりくつで遮る。どうも自分がこうしろと言ったことに従わなったことが気に入らないようだ。
でも、これってそんなに怒られなきゃいけないことか?

しばらくすると目の前の机の上に20リットルくらいの黒いザックが乗せられた。10日前にMさんと一緒に預けた鞄だ。
するといきなり荷物のチャックを開けて中身を取り出し始めた。え?なんで人の荷物を勝手に開けてるの?

「ちょっとちょっと一体何してるの?」

K氏はもはや限界だったようで、鬼のような形相で私をにらみつけるとこういった。

「何言ってるの?この中にガンジャが入ってたらどうするの?捕まったら刑務所行きだよ!」

はい?!なんですかそれ?!唖然とするとはこのことである。
私にはそんな発想はこれっぽっちもなかった。だって、本だって言われたし、自分で持ち帰れない理由、いろいろと他を当たったという経緯等々、 全てつじつまが合っていて、Mさんに悪意などみじんも感じられなかった。

「でも、本だよ。あなたもMさんはいい人だってゆってたじゃないですか。」
「本の間になにか挟まってたらどうするつもり?日本人だから信用するの?」

次々に浴びせられるとげとげしい言葉。でも、Mさんが私に薬を持ち帰らせるなんて考えられない。

「バラナシの時の話もおかしいでしょ。Mさんから連絡がないからってどうしてMさんの友達に電話するわけ?
 会ったこともない人に電話するなんて信じられない。その人がいい人だってどうしてわかるの?」


「あなたは私とは何年のつきあいですか?私よりも今回初めて会ったMさんを信用してる。それは彼が日本人だからです。」
「日本人はインド人のことは信用しない。インドで悪いことする日本人いっぱいいるのに・・・。来るたびに薬やって、持って帰って、日本で売る。そしてまたインドに来る。そんな奴ばっかりだ。」

手のつけられない位に怒りまくる。それもKさんは急に切れたのではなく、小さな違和感が積み重なっていたようだ。
今回の荷物は単に起爆剤だっただけ。

ガイドブックをぺらぺらめくりながら、「最後の日に暇つぶしにエンポリウムとか行けないかな~」と漏らしたことがあった。
「あそこは政府の店だから日曜休み」と答えるKさんの言葉をふーんと聞き流し、本をめくれば確かに"日曜定休"の文字。

「あ、ホントだ。日曜休みって書いてある。」

「・・・あなた、私の言うこと信じてなかったの?」

ええ?これって信じてるとか信じてないの問題ではないのでは?別に疑って調べたわけではないのだが。
本のことだって、「持ってきてくれるかわからないから取りに来た」と勘違いもしてるし。・・・暇でごめんよ。


毎日毎日インドには日本人がやってくる。そして、毎日毎日騙されて泣いている子がいる。
一度騙されると、インド人みんなが大嫌いになり、何も悪くないのにK氏に「インド人は嫌い」とつっかかる子もいる。 腹いせにあること無いこと人に言いふらす人もいる。彼らをあからさまに見下して偉そうに振る舞う奴らも少なくない。
勿論、そんな人たちはごくごく一部。大半の日本人は普通の旅行者だ。

そして、まれに私のようにリピーターになって、また彼らに世話になる人もでてくる。
でも、外国人に毎日接する仕事をしていても、育った環境からくる行き違いはどうにもならない。
K氏は「日本人のことはよくわかってる。」と口癖の様に言っていたが、ちっともわかっていない。
そして、勿論、私もインド人のことをよくわかっていなかった。

安全な日本でのほほんと生きている私には麻薬が簡単に手に入る現実や、お金のために人を陥れる人間がいる現実を本当の意味で理解するのは無理な話。
それに今回の状況の場合、私ではなく他の誰かだったとしてもMさんを疑おうという気持ちは全く持たないと断言できる。
ある意味、日本の社会って、人と人との信頼関係から成り立っているようなところがあるからだ。

そして、日本人旅行者は、外国にでると旅先で出会った同胞に親しみを感じる。

言葉の通じない外国で言葉が通じる喜び。日本とは違う文化に触れたショックや感動を分かち合う喜び。
その様々な出来事を自分の言葉で話したくて、今後の旅の情報交換のために、今、そこで初めて会った人と一緒にご飯を食べに行ったり、時には部屋をシェアする旅行者までいる。

英語があまり得意ではないことも一つの理由だが、それより物の見方が似ている人間といる方が楽しいから。
それにぱっと見や話し方で、「あ、この人とは合いそう。」ってだいたいわかるし。

「だったら、何で1人で旅行するの?」って言われて、その楽しさを説明したこともある。
でも、そういうのって、日本人に説明するのも難しいのに、インド人に理解して貰うのは無理な話。
彼らにしてみれば、女性が1人でふらふら旅行をするのは考えられないだろうし。

今回のインド人K氏を例にとれば、言葉の節々に、"人を疑うところから始まる"ように感じたものだ。

「あの人の言っていることはウソだよ」「絶対に信用するな」「あなたは私が信じられないのか?」

正しいのはいつも自分。他人は信頼できない。信じてるのは自分の身内だけ。
プライドもものすごく高い。
ともかく、細かいことがたまりに貯まって、今回大爆発したのだと思う。

「もういいよ。あなたは今日、日本に帰るからね。もう関係ない。」

話をしようにも「もう、話したくない」の一点張り。
あまりに突然、しかも、全く思いもよらない理由で人に拒絶されたのは初めてで、頭の中は大混乱。
どうしようもなくなった私は、1人、すごすごとホテルに帰ったのだった。


帰国直前に起こったインドの知人との決裂は、しばらく私の旅に影響を及ぼした。

「私みたいな若造が簡単に外国を旅できる今の現実は、来られる方の立場ではやっぱりイヤなものかな。」
「本をいっぱい読んで、その国のことをわかった気になっていたのかな。」
「結局、自分が痛い目に遭ったこと無いから、旅慣れたといい気になってたのかな。」

ケンカならまだいい。言いたいことをお互いに言い合えるのだから、わかりあえなくてもそれはそれですっきりするというモノ。
しかし今回のように、聞く耳を持ってくれないという状況は心底応えた。

その後しばらくはすっかり混乱し通し。気晴らしにでたはずのベトナム旅行はちっとも楽しくなかった。

「あなたと友達になりたいから。」なんて言葉は冷めた態度で聞き流したし、 自分から誰かに声をかけることもほとんどしなかった。
終いには居たたまれなくなり、航空会社に飛び込んで帰国を早めてしまった。すさんでたなーあのときは。

今になって当時を振り返ると、向こうの言い分もおかしいとわかる。
でもこれまではあれほど頭ごなしに友人に怒鳴りつけられることなど無かったので、
相手の言い分の矛盾には気がつかなかったのだ。

彼らがインド人だから信用してくれないと言うが、そういう彼らも私という日本人を信用していない。

例えば、パキスタンの山の上で出会ったS美さん。彼女とこんな話をしたことがある。

「デリーでさ、○○っていう旅行会社知ってる?私、あそこの××に誘われちゃった」

××とは、K氏の同僚だ。彼は妻子ある身なのは誰でも知ってる。

「お互い大人なんだから遊ぼうだって~(笑)昔、日本人の女の子とこんなことやったとかあんなことやったとかやらしい話ばっかり。でも、私はあの人好みじゃないからやだってゆったけどね。」

S美さんとはいろんなことを話した。彼女が旅に出た理由、今までの旅行について、日本での生活のこと。
旅行者の中には嘘ばかり語る人もいないではないが、彼女はそんな人ではなかった。(と思う。)
後日、S美さんの話はK氏に耳打ちした。彼女の話が事実だった場合、あまりに過ぎると営業に差し障ると思ったからだ。

そんな私に彼が言ったのは、この一言。

「××はそんな奴じゃないよ。私が一番よく知ってる。彼女の言うことは絶対に嘘。そのことは他の人に言わないでください。」

確かに本当かどうかはわからない。それに××さんがいい人なのも知ってる。
でも、私には彼女の言っていることが本当だとしてもウソだとしても、それを他の第三者に言うつもりはない。
そうじゃなかったら、なんで当事者のあなたに話すわけ?
そして、「彼女の言うことはウソ。」と念を押される度に、その彼の言葉がウソくさく思えた。

人と人とのつきあいは日本人同士ですら難しいのに、それが外国人だと思いも寄らなかった方向に転がることがある。
それを初めて体感したのが今回の旅だった。たぶん、旅慣れて調子に乗ってたんだよね。若かったな。私も。

今思えば、タイのバンコクなんかの帰りに、税関とかで「他人から荷物預かってませんか?」と聞かれることありますよね。
要するに中身がドラッグだと知らずに持ち帰る日本人も結構いるというわけで、
そういう意味では私も甘かったといえば甘かったのかも知れませんね。

失礼でも「中身をチェックさせてください。」と本人の前で言うべきなのかもしれませんね。お互いすっきりしますから。

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