小さい母さんと呼ばれて クンサン・ハモ
日本在住のチベット人女性が故郷のチベットを巡った旅行記。
故郷を思う心や現在のチベットの状況を知ることができ興味深い。
posted with ヨメレバ
この本のレビュー
チベットに生まれ、幼い頃に文化大革命を経験した著者。インドでチベット人教育を受けた後、日本の大学で学び日本に在住しているという。
その彼女が四川省の成都に住む従兄弟とともに陸路でチベット各地を旅した軌跡を描いた旅行記。
彼女の幼い頃のエピソードやチベットの宗教観、訪れた土地の習慣など、
様々な事象を盛り込みながら旅が進んでいく。
この本を読んでまず一番最初に驚いたのは、チベットを出た彼女の様な人が
親族に会いに故郷に帰れるということだ。
チベットから外国に行くことは困難だというし、逆にでてしまったら帰るのも困難だと思いこんでいたのは勘違いだった。
亡命などの手段ではなくきちんとした手続きを経て出国していれば
それ相応の手段で戻れるということなのかもしれない。
知識も経験もないと頭の中で勝手な思いこみができあがってしまうようだ。
いとことともにトラックでチベット各地を回ることで、漢人によって
チベットが徐々に変わっていく様を憂えていたり、
逆にチベット仏教に傾倒し、信者として法要に参加する漢人がいたり、
中国をよく知る人の著書などを通して見聞きをしていたようなことが
実際に彼女が目の前で見聞きしていたりして、裏付けが取れたようなこともあった。
また、香港スターのジェットリーが山奥のゴンパを寄進していたりと、
(彼は僧侶に弟子入りしていた。彼女はこのとき彼のことを知らなかったらしい。)
日本人旅行者ではここまで深くチベットの奥まで入り込めないので、
とても内容が濃く、いろんなことを考えさせられる。
この本を読んで、チベットに久しぶりに行ってみたいなと思ったのだが、
調べてみると外国人旅行者への立ち入りは前よりずっと厳しくなっていて、
ガイドが一緒でないとまったく動けないようで、そんな旅行はつまらないのであきらめた。
青海鉄道がつながったことで、ますます漢人の文化が入り込んでいるであろう。
それは悪いことばっかりではないと考える人もきっと多いと思うけど、
チベット人としての文化の継承や教育を自由にさせて欲しいと願っていて、
そして、どんどんその状況が難しくなってきているようだ。
必要に駆られ、チベット人の中でも普段から中国語を話す人が増えているようで、
少しずつ少しずつ文化が失われていく。
著者はその様をこの旅行を通して目の当たりにしてきて、複雑な思いを抱えたようだ。
チベット人の目で見た今のチベットの様子がよくわかります。
チベットに旅行で行く場合は、是非どうぞ。
タグ :
チベット
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