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ホーム > 紀行文・旅行記 > トンデモ中国 真実は路地裏にあり 宮崎正広

トンデモ中国 真実は路地裏にあり 宮崎正広


日本のマスコミが伝える中国は国際関係から通り一遍の情報ばかり。
中国文化を美化しすぎたり、また反日を嫌悪しすぎたりする日本人が
広大な中国の今の姿を知る一端になる。

この本のレビュー

冒頭の序文を読み始めた時、中国をめい一杯怪しい国だというすり込みがあって、
中身もとんでもなく批判的なのかと思ったが、著者の豊富な知識と行動力で
中国各地、特に一般的な観光旅行では訪れないような僻地への旅を通じて、
現在の中国の町の姿を客観的な視点で、駆け足で紹介してあります。
本が発行されたのがちょうど四川省大地震の後で北京オリンピックの前。
そういう時代背景を思い浮かべながら読むと、ふむふむと納得できる。

ただ中国はあまりに広すぎて、行ったことある地域の方が少ないので、
地名だけで町が思い浮かぶところが少なく、頭に入りにくいのもあります。
最初はざっくりと読んでから、旅行前後に該当の都市のレポートを読むと、
そういうことだったのかぁ。とすらすらと頭に入ると思う。
ただちょっと文字が細かいのと難しい漢字を頻繁に使うので読みにくいところがある。

ガイドブックが紹介するようなここでは割愛とさーーっと通り過ぎるので、
いちいち頭の中で地名とか出来事、他の本で読んだ知識を組立ながら読んだ。

2011年3月11日の東日本大震災の後に読んだため、本書のあちこちにちりばめられた
四川省大地震に関する数値がいちいち日本の地震に結びついて頭に入ってきた。

日本でも四川省大地震の直後、相次いで中国の首脳陣が現地入りした映像が入ってきたけれども、
それは北京オリンピックの記者席を確保するために日本のマスコミがこぞって現地にいたため、
いわば仕事も少ないのに中国にいなければならなかったから現場に飛んでいくのが早く
中国のマスコミよりも先に地震の映像を伝えられたとか、
あのとき中国政府は中国軍を大量に救援活動に送り込んだけども
中国軍は災害救援の訓練をまともに受けていなくて死者がたちまち6万人を越えたとか、
この地震での震災孤児は数千人とか、「あれ?日本の地震より規模小さいよね?」
耳を疑うような数字が出てくるのがびっくりだ。

「災害救助に全力を尽くすように!」と温家宝氏はテレビでゆってたが、
実際には軍はダムの補強や決壊防止のための動員としての派遣だったともある。

となると今回の地震は災害救助や耐震建築の行き届いた日本だったからこその被害であって、
この規模の地震が中国で起こったらひとたまりもないのかもしれない。

今回の東日本大震災では中国の救援隊が日本にも救援活動にやってきましたが、
去年の尖閣諸島の漁船衝突事故で冷え切った日中関係を修復する意味もしかり、
それだけでなく中国国民に災害救助の技術を外国に送れるほどの力があることを
アピールしたかったのもあるんだろうなぁ。

しかし、もっとも驚いたのは、こういった状況で生まれた孤児たちが
アメリカに養子として貰われていくということであった。
日本では欧米諸国の様に養子縁組が一般的ではないので「そうなるのか!」って感じ。
もともとそういう養子縁組をとりもつ機関(これは合法のようです)があるようなのですが
地震の直後に問い合わせが急増したということだ。(広州のページ参照。)

貰われていくといったら聞こえはいいけど貰う方はお金を払って子供を引き取るわけで、
悪く言えば人身売買ともいえなくもない。
別の本で臓器売買や骨髄移植にまつわる中国の黒い人身売買を読んだばかりなので、
そっちにも頭が結びついてしまいました。

中国に知見の深い著者が無駄のない文章で今の中国の姿をレポートしているので、
中国に興味のある人や中国に駐在する予定の人などが予備知識として読むのによいです。
観光で上海とか北京とかの町にいって美味しい物食べて~ってタイプであれば、
ちょっと重苦しく感じるかも。でも個人的にはそういう人にも知って欲しいなぁって思います。

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