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ホーム > 紀行文・旅行記 > 感動中国! 谷崎光

感動中国! 谷崎光

北京在住で中国に軒並みならぬ興味を持つ著者だからこその旅行記。
世界遺産や経済成長の裏で起こるいろんなハプニングが、
旅行中にたびたび現れるのが興味深い。

この本のレビュー

感動中国!というタイトルと女ひとり、千里をいくという副題はなんとなくなじめないが、
中国に並々ならぬ興味をもち、知識も在住経験も深い著者だからこその見事な旅行記。
ただし、各旅先でのエピソードにまつわる歴史的事実をだらだらと綴るところもあり、
中国の地理や遺産について詳しい人ならいざ知らず、よく知らずに読み進めると、
とちゅうでこんがらがってきます。
とくに学校の世界の歴史をいい加減に聞いてた私のような人には全てを理解はしづらい。

が、しかし、著者は北京語を操り、現地の人や旅先であった中国人旅行者、ガイドなど、
行き先の観光地に関わる多くの人との対話が直接できるため、内容がとても濃い。

私が中国を旅したときはまだあまり世界中に「世界遺産」と名だたる観光地がなくて、
でもそれでも中国の観光地は中国人観光客でむせかえるほどだったので、
(日本の正月三が日の明治神宮なみの人混みになる。)
世界遺産というお墨付きをいただいた場所など近づくのもコワイ。

しかし、例えば世界遺産になる前から時々テレビで見てた客家円楼などに
国内の観光客もどーーっと押し寄せるようになったようです。
それはそれで彼らにとっていいのだろうと思っていたら、大量の観光客が来て
入場料がわんさと入っているはずなのに、当の円楼に住んでいる人たちへの配分が
一人9元/年(126円)。もめてもめて700円まではあがったようだが、
いろいろ悶着あって、最終的に「ふざけるな~」と円楼に立てこもる宣言をしたら
公安に社会秩序を乱したとして、逮捕されたそうで。
(ちなみに2008年の観光総収入は47億円だったそうです。なのに126円・・・。)

普通に暮らしていた自分たちの家を見せ物にされたあげく、
ほとんど金銭的なメリットもないなんて、すげー国だと驚いてしまった。
日本のテレビクルーが番組撮影のときに払ってる金は
肝心の住人たちにちゃんと渡ってるんだろうか?っておもってしまいましたよ。

このように観光地を歩いた旅行記に、著者がニュースや新聞、書籍などで知り得た
豊富な知識が組み合わされて説明されているので、とても面白く読めます。

最初の章などは華僑についていろいろ書いてるんですけども、
日本では「貧しい人が海外に出て行かざるを得ず華僑となった」的な説明だけで終わるけど、
世界各地で欧米諸国に危険な場所での労働力として送り込まれたあげく、
おびただしい数の人が死んでいるという事実が語られていたりもするので、
世界各地で生き延びて財をなした華僑が国も政府も信じないっていうのもなるほどと思った。

また、とある観光地ではバックパッカーカフェみたいなものがあるそうで、
(中国人旅行者が情報交換をできるサテン。)
中国もそういう若い世代がでてきたと著者は語っているけども、
まだ海外旅行でふらふらと個人旅行をしている中国人旅行者に会うことは少ないけど、
そのうち海外の安宿からは日本人や韓国人よりも中国人が多くなるのかなとも思った。

まあ、私もあまり滞在費に安さばかりを求めなくなったので、会っていないだけで、
すでにそういう層はあちこちにいるのかもしれないですけどね。

「感動中国!」っていうタイトルは中国はスバラシイです!という旅と勘違いしますが、
「食べ物美味しい」とか「景色がきれい」で終わる日本のテレビが流す中国ではなくて、
日本ではあり得ない、日本人感覚では非日常で、非常識な驚くべき体験を通して、
大陸はやっぱひろいなぁ。と一筋縄ではいかない中国に対して感じた言葉ではないかと思った。

もし私のように中国にさほど詳しくないかたは、地図やガイドブックで確認しながら
読み進めることをオススメします。
遺跡の名前とかいろいろ出てくるけど、どういう遺跡なのかさっぱりわからんかった。
小難しい漢字の地名も地理感がぜんぜんピンと来ないので、そゆとこはながし読みです。

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