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スピティの名ゴンパ。ラルン、ダンカール、タボのゴンパ巡り。

クアリス
背面からのクアリス
TOYOTA QUALIS (2.4L)
トラックベースのシンプルな車。
「明日は特にイベントもないし、周辺にすばらしいゴンパがあるから行ってきたら?」

Kさんにこの祭りの情報をくれた例のカメラマンからの提案である。狭いイベント会場だ。しっかりここで再開を果たしたのである。
スピティーの取材を3年も続けている彼らからの提案に心酔しきりといったところ。

「実はもう車を頼んであって。返事をしないといけないの。」って、それじゃー選択の余地はないじゃん。
特に断る理由はないんだけど。大自然に身を任せてぼーっとするとか、クリスみたいに洗濯でもして1時間で乾いてしまうことに感動するとか、 クリスみたいにペットボトルに水を汲み汲み水浴びでもするとか、そんなことしかすることない。
なんかクリスがとても楽しそうにアウトドアライフを満喫してたものだから・・・。アメリカ人ってこういうの好きそうだし。

私が水浴びできないということは一緒に行動しているNさんもKさんもなので、汚いのは自分だけじゃないからまあいいや。
インドでバックパッカーしてると女を捨てるってホントだ。

スピティー地区には、キー・ゴンパの他にもいくつかのゴンパが点在しているが、「中でもラルン・ゴンパ、ダンカールゴンパ、タボ・ゴンパの三つを見ておけば思い残す事はなくなるはずだ」というのが、彼らのアドバイスだそうである。特に、タボ・ゴンパにはチベット本土にすらないという立体曼陀羅というモノがあり、それが見物とか。

遠くにゴンパ 丸山氏達の通訳兼ガイドのさらに友人とかいう運転手の車でゴンパ巡りへ。
顔立ちはやはりチベット人だけあってかなり日本人に近く、加えて陽気な性格の様でなかなか親しみやすい。 これなら道中楽しかろうと思いきや、わかりもしないのに会話に入って来ようとしたり、窓の外を指さしながら何か言ってきたり・・・。 横が崖だっていうことを忘れないでくれ。いいから前をむいてーーー。

加えて大事な大事なトヨタの新車だったので、ちょー低速走行。安全運転を通り越して、いらいらするんですけど・・・。
ちょっとでも段差があると今にも止まりそうなくらいに減速してそーっと乗り越えたりしてるし、その辺で道路整備をしている人にはタカびーに石をどけさせるてるし(しかもどかさなくても通れる)、カーブなんて超スローインスローアウトである。
砂利が多くなる度にその傾向が強いってことは、どうやら小石が跳ねるのをなるべく避けているらしい。車、傷つくもんなー。

もし、この人の本当の職業が運転手じゃないのに、むりやり車を出してくれていたと言うなら謝りましょう。
だが職業を運転手にしてるんだったらば、車よりも客の心配をしてくれ。車は大事にするくせによそ見しまくりってのは如何なものか。

「家まで送ってやるよー。あ、でも俺の車って土禁だからぁー。靴脱いでくれる?」

って言われるくらいムカツク。(←言われた事がある。)

それにこういう使われ方したら、せっかくのトヨタ車が、クアリスがもったいない気がする。 この車、二駆だし、あまり慎重に走ると逆に川から脱出できなくなるんじゃないかと心配になっちゃうよ。(鉄橋が落ちてたりするんですよ。なんせ山の中だから。)勢いも大事よ。

まず始めにテント村から一番近いラルン・ゴンパへ向かって山を登り始めたが、ほんの数十メートルあがったところで、道の真ん中に大きな石が立ちはだかり行く手を阻む。
ドライバーはあっさりとUターン。

「ここは後にしよう」って、マジですか。ホントにちゃんと後で来る気あんの?

次なる目的地ダンカール・ゴンパへ。ダンカールの村はインドがイギリスから独立するまではスピティーの中心だったそうだが、今やスピティーの中心はカザの町でカザの周辺だけ、街灯あり、舗装道路あり、バスターミナル、ガソリンスタンドありとかなり栄えています。
どうもカラチャクラに合わせて整備したんじゃないかというくらい。アスファルトはまだ新しかった。

ダンカールの旧ゴンパ
この崖をいくの?
ダンカールの旧ゴンパと山道。
ダンカールには、車で行ける中腹付近の新ゴンパと、谷を挟んだ奥の山のてっぺんに旧ゴンパがある。 車から降りると、自然な笑顔を浮かべたお坊さんが対応をしてくれた。 その後、あくまでも控えめに、「旧ゴンパを見ませんか?」と促す彼。

新ゴンパは単なるお参り用の寺院だが、旧ゴンパは歴史を感じさせる建物でお布施代わりにエントリーフィーとして25ルピーを支払う。
後で聞いた話によると、この周辺にあるゴンパの中でダンカールが一番お金がないのだそうである。
他のゴンパは台湾とつながっていたり、インド政府が金を出したりしてお金集めが上手なんだって。

勿論、お寺にお布施を払うのはいいのだが、エントリーフィーと言う形で払うのには違和感がある。 お賽銭とかお布施に慣れている日本人と違って、クリスチャンの人とかになるとお布施を出さずに帰ってしまうんだろうか。 でも私を含め、インドに来ている外国人は、ケチかもなぁ。旅費を節約するのに命をかけてる人多いし。

ところで、旧ゴンパへは、谷間へと落ちていく山の斜面にわずかながらできている獣道ならぬ坊さん道を歩いて行くのだが、 途中、つい最近崩れたばかりと見え、ゴボッと足下が崩れ落ちた斜面を通って行かねばならず、我々若者でもズルズルっ、ずるずるっと足を取られて滑り落ちそうになる。はっきり言って、すげー怖い。

そんなところをイタリア人の老人が果敢にチャレンジ。おばーちゃん大丈夫か?
そんな様子を山の上から見守っていた地元民らしき男性が、おばーちゃんを手助けするために崖を駆け降りてきたのにはびっくりした。 それも超猛スピードで。

どうやって止まるのかと思ったら、おばあちゃんのところまであと5メートルってところで両足を揃え、ざざざーっと斜面を削り取りながら滑り落ちてブレーキング。スキーで止まるときと同じ要領なんですね。彼の足下の砂利が左右にかき分けられていき、それと共に減速していく彼の体。おお、これぞ摩擦力。

ちょっと止まる判断を誤っておばあちゃんの目の前を行きすぎていたが、とにかくすごい!そのまま転げ落ちるかと思った。

そして、車に戻る道すがら、車椅子の青年を連れた西洋人夫婦とすれ違った。 さすがに車椅子では崖を通ることはできないが、一応もうちょっと安全な通路があり、車いすでも誰かの助けがあれば旧ゴンパにたどり着くことはできる。
しかし、そうはいっても車いすでこんな山奥まで家族旅行に来ていたことにはびっくりである。
彼といい、イタリア人のおばーちゃんといい、その行動力には脱帽!

ダンカールゴンパの写真

新ゴンパの内部

新ゴンパ内部 新しいゴンパの内部。新しい建物の匂いさえした気がする。それほど綺麗。 真っ正面の台座の向こう側のガラスの中に、何体か仏像が祀られている。
今は、毎日ここでお坊さん達は読経など(勤行というらしいが)を行っているとか。
写真撮影OKと言われてばしゃばしゃ撮る外人(自分含む)のなかで、Nさんだけは撮らない。 風景写真か、人物写真しか撮ってない。カメラも本格的だし。

民家を見下ろす

民家を見下ろす ここいらのチベット文化圏に来てずーっと目に付いていたこれらの民家。 一見直方体のカタチをしているが、見下ろすと家の真ん中に必ずといっていいほど中庭がある。
そして、平屋、二階建て問わず、大抵屋根に登るコンクリの板が渡してある。 屋根で何をするのかとかいっさい不明。この季節は使わないのでしょうか?
しかし、この構造、雪の季節はどうなるのでしょう?中庭が雪で埋まってしまいそうだ。 実はかまくらみたく保温効果があったりして。

おお、ハイテク!朝日ソーラーか?

ソーラーセルの湯沸かし 屋根根の手前にあるのはソーラーセルパネル。確かに日差しがかなり強いこの地で太陽エネルギーを活用しなければもったいない。 奥はソーラーパワーを利用した湯沸かし器。日本の朝日ソーラーが出しているモノと原理は同じと見た。
他にも、衛星放送を受信するためのパラボラアンテナが設置されている建物もあり、こんなところにまでハイテク機器が入っていることが驚き。インド政府の配慮なのだろうか?
そういえば、太陽エネルギーを最も得られる地はエジプトなんだそうである。 その環境を利用して日本とエジプトで太陽光発電の研究を始めたという噂をちょっと前に聞いたことがある。
スピティーは太陽に近いけど、冬の間はダメだろうしなぁ。雪解けエネルギーを何とか友好活用できればいいのにね。

理科の学習の時間です

雪解け 雪が溶けて、川になって・・・。こういうのを見ていると、子供の頃理科の時間に習った事が本当だと納得できる。 山に降り積もった雪が溶けて、この斜面を流れていき、川を作っていった様子が一目でわかる。
「英語を習ったらすぐに何年か外国旅行をして使えば身に付く。歴史を地理を習ったら、その場所へ行ってその目で見て確かめればいい。頭で憶えるんじゃなく体験して理解しないからすぐに忘れる。」とゆってた学者がいたけど、私は大人になってこれを実感してます。

旧ゴンパの展望台から見下ろした

ダンカール ちょっとわかりにくいかもしれないけど、斜面にうまい具合に建っているこれらの建物は、崩れてくる瓦礫に埋もれるに任せているらしい。崖崩れで埋まったら別のところに移動、っていうのを繰り返しているとか。ほとんど出入り不能な建物もちらほら。
それにしても、そのうち上部の岩が根元から折れてばたんと倒れそうだが・・・。ちと怖くないか?

村の子供達

村の子供達 旧ゴンパから車に戻る途中で、我々をみて声をかけてくれた子供達。
きゃいきゃいはしゃいでいたけど、「写真とってもいい?」 とカメラを指さしながら言ってみると、ぴしっと気をつけのポーズ。めっちゃかわいい。



ダンカールを後にした我々はタボ・ゴンパに向かった。
ここは1996年にカラチャクラフェスティバルが行われたそうで、そのせいかゴンパの周りには宿泊施設やレストランなどがちらほら。 建設中のゲストハウスもあり、観光客を集める準備を着々と進めているようだ。

ダンカールで長居をしてたため、もうとっくに昼を回っていた。せっかくドライバーがゴンパの前に車をつけてくれたというのに、花より団子。
先に昼食。ってことで車を食堂に回す。

しかし、注文してから数十分。いつまで経っても頼んだチョーメンが出てこない。(チャオメン=炒麺=焼きそば。)
厨房からチョーメンを持ったウェイターが現れると動きを追っていた。あ、向こうの人もチョーメン。あ、外の席の人の分か。
そうこうしているウチに、明らかに我々よりも後に来たチベット人団体にチョーメンを運ぶ彼。

「ちょっとー、こっちのチョーメンはまだなわけ?」

しまったっ、忘れてたという顔をした彼は慌てて厨房に戻る。

そして、さらに十数分が過ぎた頃、本当に申し訳なさそうな顔をした彼が我々の前にやってきてこう言った。

「すみません。チョーメンはなくなってしまいました。」

こらっ、いい加減にしなさい!
車で別のレストランに連れて行ってもらったら、注文したモノがあっさりと運ばれてきました。・・・早かった。

タボ・ゴンパの内部は撮影禁止。正しくはフラッシュ禁止だったと思う。 ここのお坊さん達はカラチャクラのためにキーに行ってしまっているのか、ゴンパの番は村人が担当していた。

「誰も見てないから写真撮っちゃえ!」とこっそり撮ってる外人がいたが、しっかり「写真はダメだよ」って子供に注意される。子供に怒られるってのも情けないな~、もうっ。

ところで、ここの立体曼陀羅は、本当に初めて見る不思議なものだった。 色とりどりの神様の像が壁一面にくっついているのである。壁面に描かれた曼陀羅の仏像が飛び出して来たかのようで、その数33体!
私の描写ではその素晴らしさを語れないし、絵に描くこともできないので、文献を読んで戴くことをお勧めします。 カシミール様式の素晴らしい壁画などが残された貴重なお寺ということです。あ、それでインド政府が目を付けたのか。

観光客が集まると、そこいらに腰掛けてくつろいでいる村人がよっこらせと立ち上がって鍵を開けてくれる。 ところどころ天井が空いていて光が入っているのは神々しいが、その分痛んでました。 修復が必要な壁もかなり多かったな。
タボゴンパ
タボゴンパの鍵
さて、タボ・ゴンパを見終わったると、もう結構いい時間になっていた。あの食堂の待ち時間が余計だったのだ! これじゃラルン・ゴンパに着く頃には日が暮れるかもしれない。
「もう、帰ろうぜ!」なんてドライバーが言い出すのではないか?

おまけに、新車のハズのこのクアリス!
スピードメーターの横に何かの警告ランプがついており、さっきからずっとピーーーーと警告音が鳴り響いてうるさーーい!
ちょっと走ると車を止め、ダッシュボードからマニュアルを出したり、ボンネットを開けてエンジンをじーーーっと見たり、ファンベルトを触ったり、とにかくぜんぜん進まないのだ。

そして、ドライバーも自分ではどうすることも出来ないことをやっと悟って走り出したはいいけど、今度は大音量でインド映画音楽を流す。 気になるぴーーーをかき消すためだと思う。

ああっ、もう、やめてよ~!音楽のせいで会話がとても聞き取りにくいのがイヤだ。どうして声を張り上げて会話をしなければならないんだ。
「あ、インド映画音楽だね」なんて、楽しむ気分ではない。

往路に置き石に阻まれ後回しにしていたラルン・ゴンパへ戻ったときには午後四時を回っていた。
もう完全に行くつもりはないだろうと諦めていたが、ドライバーは急に張り切りだし、これまでに出したことのないスピードで(でも早くはない)、がんがん山道を上がって行く。

そして、我々の車の後方に一台のジープがピッタリとついていたのだが、速度が遅いこの車を追い抜きたくてしょうがないみたいなのに、何をこだわっているんだか一向に道を譲らない。タチの悪さ。
抜きつ抜かれつで走ること1時間。ようやくラルン・ゴンパに到着。いつもは車で待機しているドライバーもゴンパまで一緒に来て手を合わせており、要するに自分がお参りしたかったようである。
マナリのおばちゃん ここまで超低レベルのレースをしてきたジープは、チベット人のおばちゃん達がチャーターしたモノだった。 彼女たちはマナリからカラチャクラのために来たそうだ。マナリで外人向けレストランをやっているという。
正直なところ、我々のゴンパ巡りは信仰心というより、好奇心。それを知っているとは思うのだがチベット人は日本人にとても優しい。

知ったかぶりでマニ車を回しながら「オーマミベイメホーだっけ?」なんて言ってると「違うわよ!正しい発音はこうよ!」と教えてくれる。(「オームマニペエメフーム」=「ああ、蓮華の上の摩尼宝球よ、幸あれ」という意味のマントラ)

一通りお参りした後、お寺でインド式のチャイをご馳走になって、おまけにお茶請けにパレを分けてくれるおばちゃん。 なんだか最後にとても和んだ。

ラルン・ゴンパを出る頃になると、空は夕焼けから夕闇に変わりつつあった。
キーに向かって順調に走る道すがら、急にブレーキを踏むドライバー。目線の先にはかわいらしい女の子が二人。農作業帰りのヒッチハイクである。

実は今日一日、この通りにはヒッチハイクをしている人が結構いた。西洋人旅行者やおっさんのヒッチは完全に無視してたくせに、女の子を見た途端にぴたっと停車。あまりのわかりやすさに笑ってしまった。鼻の下のばしまくり。
彼女たちをハッチバックの補助席に乗せると、大声で彼女たちと会話を始める。オジサンが女の子に弱いのは世界共通ってとこか。

と、そんな感じで、キーのテント村に到着したのはとっぷりと日が暮れた頃。長~い1日だった。

なんだかんだ言ってこのドライバーはいいヤツだった。
ネアカだし、こっちの好きなようにさせてくれるし、いくら長い時間待たせてもイヤな顔ひとつしなかった。 表裏が全くなくて素直で人間らしかったな。車のかわいがり方が尋常じゃないのが苛ついたけども。
車のチャーターって雇ったドライバーの人柄で楽しさが結構変わりますよ。(むかつくドライバーに当たったこともあります。)

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